国際女性デー:危機に直面する女性たち——パプアニューギニア
2016年03月08日3月8日は国際女性デーです。
大小600の以上の島々に、800以上の異なる言語を話す人びとが暮らす国、パプアニューギニア。多様で豊かな文化を育んできたこの国には、一方で、深くつらい闇が広がっています。家庭内暴力や性暴力の発生率が世界的にみても非常に高いのです。被害者のほとんどは女性で、時には10歳に満たない女の子が狙われることも……。国境なき医師団(MSF)は、国の保健省などと連携し、危機に直面している女性たちをはじめ、すべての人びと医療・人道援助の立場から手を差し伸べ続けています。
-
© Jodi Bieber MSFが支援しているタリ病院から車で1時間半ほど走ると、ベナリア村が見えてくる。
出張して医療ニーズを探る「アウトリーチ活動」の対象地域の中で、拠点から最も遠い村の1つだ。
村民に病院で無償の医療提供を行っていることを伝え、来院をうながしてまわる。 -
© Jodi Bieber カラフルに塗装された小さな建物。
これがベナリア村のお墓だということを、村民が教えてくれた。
部族間の争いで亡くなった人のお墓を、こうして彩色するのだという。 -
© Jodi Bieber 失われる命の一方で、新たに生まれてくる命がある。
双子の女の子は、生まれてすぐにヘルニアと診断された。
タリ病院で手術を受けることが決まり、その順番を待っている。 -
© Jodi Bieber 手術を待つ双子の母親、まだとても若い。
彼女は友人の手を借りて、双子を連れて、徒歩で4時間かけてやってきた。
未舗装の悪路、高温多湿の気候、過酷な道のりだ。 -
© Jodi Bieber 首都ポートモレスビーでMSFが支援している病院で、生後8ヵ月の娘を抱く母親(25歳)。
彼女はある日、夫に空き瓶で殴られ、家を飛び出した。
治療を受けられるところを探し歩いてMSFのもとにたどりついた。 -
© Jodi Bieber そう、この国には深くつらい闇に覆われた部分がある。
激しい家庭内暴力、そして性暴力だ。
暴力被害者のほとんどは女性、10歳にも満たない女の子まで狙われる。 -
© Jodi Bieber 6歳の少女は母親に連れられてこの保護施設に入った。
近くに住む30歳の男が寝室に侵入し、彼女とまだ2歳の妹に性暴力をふるったのだ。
さらに男は警察に通報した一家を脅迫、一家は自宅から避難して7ヵ月も隠れて暮らすことに。
その隠れ場所にもいられなくなり、娘を施設に預けて、一家は自宅に戻るしかなかった。 -
© Jodi Bieber この国ではしばしば、犯罪者が被害者の部族や家族に豚や現金を支払うことで"一件落着"とされる。
婚姻の際の結納金のような仕組みが拡大解釈され、犯罪の決着にも適用されているのだ。
その結果、性犯罪者は事件後も、被害者のそばで生活できてしまう。 -
© Jodi Bieber やるせない思いをカウンセラーに打ち明ける。
なぜこのようなつらい出来事を繰り返し経験しなければならないのか。
心理ケアは彼女たちの苦しみを少しでも減らすために欠かせない取り組みだ。 -
© Jodi Bieber MSFが運営する外科病棟で順番を待つ女性たち。
2014年と2015年で、MSFが治療した家庭内暴力・性暴力の被害者のうち、94%が女性だった。
この国は残念ながら、女性にとって"非常に危険な国"とのイメージを拭い去れていない。 -
© Jodi Bieber 誰もが安心して眠り、目覚め、生活を送る権利を持っている。
適切な医療を受けられることも、その安心を支える重要な要素だ。
MSFは、危機に直面している女性たちにこれからも手を差し伸べ続けていく。