子どもを襲う重度の栄養失調「クワシオルコル」──援助削減で揺らぐナイジェリア北部の栄養危機
2026年10月21日
MSFが最大規模の栄養治療プログラムを展開するカツィナ州では、2026年1月から8月までに治療を受けた子どもの数は、2025年の同時期をわずかに下回った。しかし依然として極めて多く、地域の栄養危機は深刻な状況が続いている。
毎年、何千人もの子どもが命を落とすこの慢性的な危機を食い止めるには、ナイジェリアの連邦政府や州政府、国際的な資金拠出機関、そして人道援助団体による大規模かつ継続的な支援が不可欠だ。
むくみを伴う重度の栄養失調「クワシオルコル」
2026年1月から8月にかけて、MSFはカツィナ州にある4カ所の外来栄養治療センターで、8万7000人を超える急性栄養失調の子どもを治療した。
ナイジェリアでMSFの医療コーディネーターを務めるラファエル・カナンガ医師は言う。
「2025年の同じ期間に治療した9万5000人以上と比べると減少していますが、依然として極めて多く、2年前を上回っています」
さらに、栄養失調の重症化や合併症で入院した子どもは、約1万5500人に上った。2025年の同時期の約1万6500人を下回ったものの、その数はなお高い水準にある。
この地域では、重度の栄養失調の一種「クワシオルコル」の子どもが多くみられる。クワシオルコルは、皮膚の病変や全身のむくみなどを引き起こすが、その原因は十分に解明されていない。
MSFはカツィナ州の入院栄養治療センターにクワシオルコルの専門病棟を開設し、子どもたちの治療に当たっている。
クワシオルコルとは
重度の栄養失調の一種。著しくやせ細る「マラスムス」と異なり、足にむくみが生じるのが特徴で、顔や腕など全身に広がることもある。皮膚にやけどのような重い病変が現れる場合もある。発症の仕組みや地理的な分布など、詳しい原因については現在も十分に解明されていない。
でも今は、自分で座れるようになり、立たせてあげれば、そのまま立っていられます。歩こうとする姿も見られるようになり、回復していることを実感しています。
バディヤ・シャフィウさん 栄養失調で治療中の子どもの母親
治安改善と農業再開がもたらした変化
カツィナ州では2025年、治安状況の改善と収穫量の増加により、栄養危機はやや緩和された。
「治安悪化のため、ジビアやバツァリの地方行政区から避難した多くの人びとが、カツィナやマシ、マニなどで暮らしていました。しかし昨年以降、故郷に戻って農業を再開できるようになっています」と、MSFのパートナーシップ・コーディネーターを務めるジャン=クレマン・イシムウェは話す。
その結果、食料を手に入れやすくなり、MSFの治療施設を訪れる人も減っています。
ジャン=クレマン・イシムウェ MSFパートナーシップ・コーディネーター
広がる治療体制、立ちはだかる資金不足
2026年には、この地域で活動する人道援助団体が増え、カツィナ州政府も外来/入院栄養治療センターを増設。MSFも新設された治療センターで医療従事者への研修や支援を行い、医療体制の強化に協力した。
こうした支援により、栄養失調がピークを迎える時期を前に、入院を必要とする子どもの数が減少したと考えられる。
「カツィナ州は、栄養失調対策として、子どもの治療に欠かせない栄養治療食の調達に、従来の2倍となる10億ナイラ(約1億2000万円)を割り当てるなど、対策の強化を進めています」とイシムウェは話す。
「ユニセフも、『子どもの栄養基金(Child Nutrition Fund)』を通じて同額を拠出すると表明しています」
こうした公約が実現すれば、大きな前進です。この動きをカツィナ州全域、そしてナイジェリア北部へとさらに広げていくことが重要です。
ジャン=クレマン・イシムウェ MSFパートナーシップ・コーディネーター
ユニセフによると、世界で重度の急性栄養失調に陥っている子どものうち、治療を受けているのは半数にも満たない。適切な治療を受ければ、命を守り、発育への長期的な影響を防ぐことができるにもかかわらず、だ。
ナイジェリア栄養学会は最近、国内の栄養失調の状況に懸念を表明した。約200万人の子どもが重度の急性栄養失調に陥っている一方、治療を受けられているのは10人に2人程度にとどまるという。
MSFは今年1月から8月までに、ナイジェリア北部7州で展開する栄養治療プロジェクトで、入院施設では5万7999人、外来プログラムでは22万5778人の子どもを治療した。




