家族と別れ、愛する人の死を目撃…4人に1人が心の病に苦しむ今、わたしたちにできること
2018年10月23日暴力や自然災害を経験した人にとって、「生き延びる」ことは身体が健康である以上の意味がある。体のけがが治っても、目には見えない心の傷が残っているからだ。国境なき医師団(MSF)は、患者の心の傷を癒やすため心理ケアを行っている。専門家が患者の言葉に耳を傾け、衝撃的な過去にこれからの人生を左右されないよう、サポートしている。
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寄付をする※国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。
世界で4人に1人が心の病に
命の危険に脅かされた人は、激しい苦悩にさいなまれることがある。家族と離れ離れになったり、愛する誰かの死を目撃してしまったり、安全な場所を求めて長い間避難し続けている人も同じだ。特に、住み慣れた家を追われる経験は、既に精神疾患のある人に悪影響となる。治療やケアを受けられなくなって、症状がより重くなってしまう。
南スーダン・マラカルにある国連の民間人保護区域(PoC)は、暴力的な戦闘に巻き込まれた現地住民を保護するために設置されたが、生活環境は劣悪で、人びとは絶望や閉塞感を感じ、また仕事をする機会もほとんどない。そのため、心を病む人が後を断たない。2016年には保護区内で自殺する人や自殺未遂が増え、子どもたちにも同じ傾向が見られた。
心のケアが必要なのか気づかない
患者が心理ケアをためらう理由はたくさんある。そもそも心理ケアとは何なのか、どう役に立つのか、自分に必要なのかさえ分からない人が多い。MSFの心理療法士、デボラ・ドゥアルテはケニアのダダーブ難民キャンプに到着した人びとの様子を振り返る。「自分の身に起きたことが心に影響しているとわかっている人はいませんでした。助けなしにはどうにもならなくなって、そこではじめて症状に気づくのです」
患者に合ったさまざまな方法
こうした難しさを克服するため、MSFの心理ケアチームは臨機応変にケアのやり方を変えている。患者が自分の体験を言葉にし、感情を整理して気持ちに向き合えるよう、カウンセラーをトレーニングすることもあれば、心理療法士が個別の心理ケア・セッションを行うこともある。
独創的な方法で心理ケアの大切さを知ってもらう取り組みもしている。コンゴ民主共和国のムウェソには、多くの国内避難者が地元住民とともに暮らしており、ここでMSFは、心理ケア・カウンセラーが「演者」となって活動している。200人もの聴衆に、音楽、ダンスや劇を通じて地域の人びとの手助けをすることを伝えている。
地域を理解することが鍵
ケアに際しては、患者の住む地域社会がどう成り立っていて、どのようなサポート体制があるのか理解することが不可欠だ。MSFの心理ケアチームが新しい地域で活動するとき、まずは地域のリーダーを探すことから始める。リーダーはその地域の人びとに最も合ったやり方を教えてくれる。地域全体で復興を必要としている場合も多い。MSFは、地域社会、そしてそこに暮らす人びとが、地域のなかにすでにあるものを使って自らを立て直すための手助けをする。
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