命か利益か——国境なき医師団、HIV予防薬の販売をギリアド社に要請

2026年04月16日
国境なき医師団(MSF)スタッフから、HIV予防薬の説明を受けるマラウイのセックスワーカーの女性たち © Diego Menjibar
国境なき医師団(MSF)スタッフから、HIV予防薬の説明を受けるマラウイのセックスワーカーの女性たち © Diego Menjibar

国境なき医師団(MSF)は、米国の製薬企業ギリアド・サイエンシズに公開書簡を送付し、HIV感染予防において過去数十年で最も重要な進展の一つとされるHIV治療薬「レナカパビル」を、直ちにMSFに販売するよう求めた。

HIV予防の切り札と高まる緊急性

世界では毎年およそ130万人が新たにHIVに感染しており、長時間作用型の曝露前予防(PrEP)薬をはじめとする、高い予防効果を持つ手段へのアクセスを早急に拡大する必要性が高まっている。

MSFは、男性間で性的関係を持つ人びと、トランスジェンダーの人びと、セックスワーカーなど、とりわけ弱い立場にある人びとを中心にHIV予防活動を行い、紛争地や不安定な状況下においても援助を続けている。

HIV予防薬へのアクセス確保や、毎日の服薬順守を継続することは、多くの人びとにとって容易ではない。そのため、年2回の注射で済むレナカパビルのような長時間作用型の予防薬は、HIV感染リスクの高い人びとにとって、命を守る重要な手段となり得る。

MSFスタッフから、HIVの暴露前予防について説明を受けるモザンビークのセックスワーカーの女性 © Morgana Wingard/NAMUH
MSFスタッフから、HIVの暴露前予防について説明を受けるモザンビークのセックスワーカーの女性 © Morgana Wingard/NAMUH

アクセスを阻む壁、問われる企業の姿勢

ギリアド社は、レナカパビルの生産を需要に応じて拡大できると公言しているにもかかわらず、MSFがプログラムで使用するために、限定的な供給量の購入を求めた要請を拒否した。

現在までに、ギリアド社と「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(グローバルファンド)の合意において、レナカパビルの供給対象とされる18カ国のうち、実際に受け取った国はごく一部にとどまっており、世界では依然として何百万人もの人びとがHIV感染のリスクにさらされたままだ。

ギリアド社はMSFに対し、グローバルファンドを通じてレナカパビルを調達するよう指示している。しかし、グローバルファンドが確保している供給量は3年間で最大300万人分に過ぎず、世界的な需要には到底及ばない。

さらに、MSFが活動する国の中には、ギリアド社が設けた制限により、グローバルファンドを通じた供給の対象から除外されている国もある。

「人道援助団体が画期的な医療技術へのアクセスを妨げられることは、弱い立場にある人びとの命を危険にさらす行為です」と、MSF南部アフリカ医療ユニットの責任者を務めるトム・エルマンは話す。

ギリアド社はいま、人びとの命を守ることを優先するのか、支配権と利益の確保を優先するのかを問われています。

トム・エルマン MSF南部アフリカ医療ユニット責任者

「これは、1990年代に見られた政策の恐ろしい再現にほかなりません。当時、抗レトロウイルス薬は北半球の人びとには提供された一方で、世界の他の地域ではアクセスが制限され、その結果、HIV/エイズによって多くの命が失われました」

MSFはギリアド社に対し、レナカパビルをMSFに直接販売する意思があるのか、販売価格はいくらになるのか、そして、いつから供給を開始できるのかについて再検討するよう求め、緊急の追加協議を要請している。

なお、この書簡に対しギリアド社は、MSFがレナカパビルを入手できる唯一のルートは、グローバルファンドに割り当てられた供給量の上限を通じたものだと示唆し、依然としてMSFへの直接販売を拒否している。

MSFの診療所で処方されたHIVの薬を持ち歩き、毎日欠かさず服薬を続けるモザンビークの女性 © Martim Gray Pereira/MSF
MSFの診療所で処方されたHIVの薬を持ち歩き、毎日欠かさず服薬を続けるモザンビークの女性 © Martim Gray Pereira/MSF

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