援助活動の“チームの要”コーディネーターとは【第1回 プロジェクト・コーディネーター】

2021年03月04日
国境なき医師団のプロジェクト・コーディネーターとして活動する萩原健 2017年イエメンにて © MSF
国境なき医師団のプロジェクト・コーディネーターとして活動する萩原健 2017年イエメンにて © MSF

紛争地や災害被災地など医療を必要とする人たちのもとへ駆けつけ、援助活動を行う国境なき医師団(MSF)。現地のプロジェクトチームでは医師や看護師だけでなく、さまざまな職種のスタッフが各自重要な役割を担っていますが、その中でも援助活動を安全に、かつ円滑に行うために欠かせないのが、スタッフをまとめる「コーディネーター」の存在です。

コーディネーターには、プロジェクト全体の指揮を執る「プロジェクト・コーディネーター」や、活動を医療面から支える「医療コーディネーター」、物資の供給を統括する「ロジスティック・コーディネーター」など、いくつかの種類があります。そこでこれから3回にわたり、各コーディネーターの具体的な業務内容と、それぞれの業務に携わるスタッフの思いをご紹介。

初回はプロジェクト・コーディネーターにスポットをあて、その仕事内容に迫るとともに、アドミニストレーター、ロジスティシャン、プロジェクト・コーディネーター、活動責任者、緊急コーディネーターとして世界各地で20回以上の活動に参加してきた萩原健が、「プロジェクト・コーディネーターとしての最も重要な仕事」について語ります。
※この記事は国境なき医師団ニュースレター『ACT! Special』(2020年9月号)より再掲載しました。

MSFのコーディネーターとは?

安全で円滑な医療援助活動を継続できるよう、常に最善の方法を模索し決断するのがコーディネーターの仕事です。 

コーディネーターの職種は大きく分けて2種類。一つ目は、包括的な視点でプロジェクトの指揮を執る「活動責任者、プロジェクト・コーディネーター、緊急コーディネーター(※)」、そして二つ目は、専門分野の実行・管理を行う「医療コーディネーター、ロジスティック・コーディネーター、財務/人事コーディネーター」です。プロジェクトでは、互いにコミュニケーションをとりながら、連携して仕事を進めます。
※感染症の発生、自然災害、紛争の勃発などによる緊急の医療ニーズに対応。

プロジェクト・コーディネーターの主な仕事内容:

  • プロジェクトの責任者として、運営管理(計画・実施、評価など)、チームマネジメント、人事財務管理・セキュリティー管理を行う。目的を明確に定め、多国籍の医療・非医療スタッフをまとめる。
  • 現地の政府機関や有力者、他援助団体との連携や交渉、人道危機に陥っている人びとの代弁者となることも。
  • 患者やスタッフに危険が迫った場合は、一時撤退・完全撤退の決断を下す。

重要なのは「MSFが何者で、何をしようとしているのか」を知ってもらうこと

萩原 健:石油開発企業や<br> 食品会社での勤務を経て、2008年から<br> MSFの海外派遣スタッフとして<br> 20回以上の活動に参加。
萩原 健:石油開発企業や
食品会社での勤務を経て、2008年から
MSFの海外派遣スタッフとして
20回以上の活動に参加。
 私たちが医療援助を行うのは、紛争地や自然災害の被災地です。その多くは、食料や医療物資の調達が難しく、インフラはぜい弱で、移動手段も限られています。さらに状況が目まぐるしく変化する中で、現場の医療ニーズを適切に把握し、継続的な活動を実現する手段を確保して環境を整えるのがプロジェクト・コーディネーターの役割です。
 
しかし、活動地には独自の文化や風土、部族制に加え、市民法よりも慣習法が重要視されるといった事情もあり、医療を必要とする人びとが、必ずしもMSFを受け入れるとは限りません。命が助かると分かっていても、慣習と異なるなどの理由で治療を拒否する人もいます。どんなに崇高な理念や高い医療技術があっても、MSFが何者かということが明確に説明できて、現地の人びとに受け入れられない限り、具体的な活動はできないのです。
 
ですから現地の保健省や治安当局はもちろん、時には宗教指導者や武装勢力とも折衝・交渉を行います。特に現地コミュニティーに受け入れられることは重要です。MSFが活動を開始し、さまざまな障害を克服して継続的に遂行できるよう、プロジェクト・コーディネーターは努力を重ねています。
イエメンで後任のプロジェクト・コーディネーター(写真中央)と 🄫 MSF
イエメンで後任のプロジェクト・コーディネーター(写真中央)と 🄫 MSF

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