「受診前に警察へ」「72時間以内だけ」…コンゴ東部で性暴力被害者を追い詰める、武装勢力の“制限措置”
2026年11月05日
同州を事実上統治する武装勢力「国家再建戦線(FRN)」(※)が数カ月にわたり、受診に関する制限措置を課しているためだ。FRN指導部は10月初旬、この問題への対応を約束したが、現時点で是正措置は実行されていない。
国境なき医師団(MSF)は、こうした措置が被害者をさらなる危険にさらしていると警鐘を鳴らし、安全に、秘密を守られた環境で医療を受けられるよう制限の是正を求めている。
※旧コンゴ川同盟(AFC)/3月23日運動(M23)
従わなければ拘禁も──医療従事者への圧力
2026年に入ってから、北キブ州で保健医療を管轄する事実上の統治当局は、医療従事者や医療施設、人道援助団体を対象にさまざまな措置を導入・提案してきた。
これらの措置には、患者の秘密保持や医療倫理、被害者の保護、医療を受ける機会の確保などの観点から深刻な懸念がある。
例えば、外見で確認できる傷がある人だけを性暴力の被害者と認めるなど、性暴力の定義を狭め、被害者数を少なくするよう医療従事者に圧力をかけている。他にも、①医学的に不要な身体診察を求める②受診前に警察への届け出を義務付ける③被害から72時間以内に受診した人にしかケアを認めない──といった措置も含まれる。
これらの措置には、患者の秘密保持や医療倫理、被害者の保護、医療を受ける機会の確保などの観点から深刻な懸念がある。
例えば、外見で確認できる傷がある人だけを性暴力の被害者と認めるなど、性暴力の定義を狭め、被害者数を少なくするよう医療従事者に圧力をかけている。他にも、①医学的に不要な身体診察を求める②受診前に警察への届け出を義務付ける③被害から72時間以内に受診した人にしかケアを認めない──といった措置も含まれる。
その上、統治当局はMSFを含む援助団体や医療提供者に対し、治療に関係のない、不要な質問項目を含む書類を活動に用いるよう指示している。
内容は、被害者および生存者の氏名や住所、加害者とされる人物の詳細などを尋ねるもので、プライバシーを侵害し、被害者への偏見や差別にもつながりかねない。こうした情報の収集は患者の秘密保持を損ない、被害を受けた人びとをさらなる危険にさらすもので、国際的な医療倫理の基準にも反する。
さらに、患者、特に女性からは、人道援助団体が支援する診療所への受診を巡り、詰問されたり、脅されたりしたという声も寄せられている。
また、医療従事者や医療分野の連携団体はMSFに対し、新たな措置に従わなければ、業務停止や、場合によっては拘禁すると脅されたと話している。
こうした脅しによって、すでに一部の医療従事者は性暴力被害者に必要なケアを提供することをためらうようになり、恐怖から活動そのものをやめた例もある。その結果、元々限られていた受診の機会がさらに失われている。
消される受診記録、広がる恐怖
MSFは、こうした措置の影響をすでに目の当たりにしている。性暴力の被害を受けた人びとの受診件数が急減しているのだ。
北キブ州でMSFが支援する複数の診療所では、性暴力を生き延びた人びとの受診に関する記録が数十件削除され、公式に報告される件数が大幅に減った。中には被害の記録を一切やめた施設や、数カ月にわたってごくわずかな件数しか報告していない施設もある。
MSFが支援する、北キブ州の一部の医療施設のデータを確認したところ、2026年8月に性暴力被害に関するケアを求めて受診した人は、同年1月に比べて41%減少していた。
北キブ州でMSFが支援する複数の診療所では、性暴力を生き延びた人びとの受診に関する記録が数十件削除され、公式に報告される件数が大幅に減った。中には被害の記録を一切やめた施設や、数カ月にわたってごくわずかな件数しか報告していない施設もある。
MSFが支援する、北キブ州の一部の医療施設のデータを確認したところ、2026年8月に性暴力被害に関するケアを求めて受診した人は、同年1月に比べて41%減少していた。
同州のほかの支援施設でも、2025年には月に約80人の被害者および生存者にケアを提供していたのに対し、2026年には月にわずか9人となるなど大幅な減少が見られた。
「危機を見えにくくしても、暴力そのものはなくなりません」
こう話すのは、MSFのオペレーション・ディレクターを務めるアッケ・ブーレ。ブーレは、報告件数の減少は性暴力の減少を意味しておらず、むしろ被害を生き延びた人びとが安全な環境でケアを受けられなくなっていると指摘。実際、地域の人びとからは受診への恐怖が広がっているとの声が上がっている。
ブーレは続ける。
優先するべきなのは、受診を妨げる障壁を取り除き、被害者の保護と司法による救済を受ける機会を充実させ、性暴力が続く背景にある状況に対処することです。現在の制限措置では実現できず、さらに被害を生き延びた人びとを傷つけてしまいます。
MSFオペレーション・ディレクター アッケ・ブーレ
被害者の秘密を守り、必要なケアを
MSFは、指導部を含む事実上の統治当局と対話を続けてきた。当局はその過程で問題への対応を約束したものの、有害な制限措置を依然として続けている。
同時にMSFは、当局への届け出や法的手続きを、医療を受ける条件にしてはならないと強調する。加害者の責任を問うことは不可欠だが、届け出を受診の条件にすれば、被害を受けた人びとが緊急の治療をためらってさらなる危害につながる恐れもあるからだ。
同時にMSFは、当局への届け出や法的手続きを、医療を受ける条件にしてはならないと強調する。加害者の責任を問うことは不可欠だが、届け出を受診の条件にすれば、被害を受けた人びとが緊急の治療をためらってさらなる危害につながる恐れもあるからだ。
ブーレは、医療従事者がこれ以上の圧力を受けないよう、FRNが保健当局に明確な方針を示す必要があると訴える。また、医療活動の監督についても、秘密保持を徹底し、被害者や医療従事者を威圧したり、危害を加えたりしないよう要求している。
MSFはFRNに対し、性暴力を生き延びた人びとへの医療が守られ、秘密が保持され、適切なケアを受けられるよう直ちに行動することを求めます。
MSFオペレーション・ディレクター アッケ・ブーレ
コンゴ東部でMSFが続ける性暴力被害者へのケア
コンゴ東部では、性暴力が長年にわたる危機となっている。その背景には、数十年に及ぶ武力紛争、あらゆる紛争当事者による暴力、不安定な司法・保護の仕組み、性暴力を当たり前とする社会の風潮、有害なジェンダー規範がある。
MSFは現在、北キブ州、南キブ州、イトゥリ州の16のプロジェクトで医療を提供しており、多くの地域で、性暴力を受けた人びとに迅速なケアを提供する数少ない団体の1つだ。
2024年には、MSFが支援するコンゴ各地の医療施設で、性暴力の被害を受けた人びと約4万5000人がケアを受けた。2025年にはその数は5万3000人に増加した。
MSFは現在、北キブ州、南キブ州、イトゥリ州の16のプロジェクトで医療を提供しており、多くの地域で、性暴力を受けた人びとに迅速なケアを提供する数少ない団体の1つだ。
2024年には、MSFが支援するコンゴ各地の医療施設で、性暴力の被害を受けた人びと約4万5000人がケアを受けた。2025年にはその数は5万3000人に増加した。
2026年1~6月には、北キブ州だけで1万9400人を超える人びとを性暴力に関連して治療している。




