エボラ感染の4人に1人が5歳未満…高い死亡リスク、届かない治療──コンゴ・北キブ州
2026年10月22日
コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)北東部で続くエボラ病(エボラ出血熱)の流行で、子どもたちが深刻な影響を受けている。
子どもは大人より死亡リスクが高いうえ、今回の流行では患者に占める割合も大きい。国境なき医師団(MSF)の疫学研究所である「エピセンター」によると、同国・北キブ州ではエボラ感染が確認された人のおよそ4人に1人が5歳未満の子どもだ。
子どもは大人より死亡リスクが高いうえ、今回の流行では患者に占める割合も大きい。国境なき医師団(MSF)の疫学研究所である「エピセンター」によると、同国・北キブ州ではエボラ感染が確認された人のおよそ4人に1人が5歳未満の子どもだ。
MSFは、子どもたちが特に強い影響を受けていることを懸念し、診療と研究の両面で子ども特有のニーズをより重視するよう求めている。
幼い子どもほど高い死亡リスク
エボラはどの年齢層にとっても命に関わる病気だが、とりわけ幼い子どもは死亡するリスクが高い。
今回の流行では、北キブ州で確認された感染者のうち5歳未満の子どもが24%を占め、1歳未満の乳児だけでも13%に上る。北隣にあるイトゥリ州ではそれぞれ13%、6%で、北キブ州では幼い子どもの割合がとても大きいことがわかる。
また、北キブ州ブテンボのエボラ治療センターでは、子どもの致死率が特に高い。2026年6~9月にこの施設で治療した子ども30人は大半が5歳未満で、このうち24人がブンディブギョ・ウイルスによって死亡した。
地域で患者の病状が急速に悪化する一方、医療施設で専門的な治療を受けることも難しく、こうした高い致死率につながっている。
ブテンボでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるステファニー・ホフマンは、地域の基礎診療所では、感染が疑われる患者を見つけて安全に対応するために必要な専門知識や設備、感染予防・管理対策が十分でないと話す。
ホフマンによると、この夏、ブテンボの治療センターに入院した子どもの多くは、入院前の数日から数週間以内に、エボラとは別の病気で複数の医療施設に入院していた。一方、家族はエボラに感染していなかったという。
こうしたことから、子どもたちが医療施設の中で感染した可能性が非常に高いと考えています。
ブテンボのMSFプロジェクト・コーディネーター ステファニー・ホフマン
必要な医療を維持しながら感染を防ぐには、リスクの高い地域にある医療施設で感染予防・管理を強化し、防護具を確保するとともに、エボラ専門ではない医療施設で働くスタッフへの研修を充実させることが欠かせない。
親と離れて過ごす子どもたち
治療センターでは、家族と離れて過ごす子どもの精神的な負担を少しでも軽くしようと、親が入院中の子どもの姿を見ながら言葉を交わせるスペースを設けるなどの工夫をしている。
それでも、幼い子どもにとって治療センターへの入院は非常につらい経験だ。自分が置かれた状況を理解するには幼すぎたり、身の回りのことを自分ではできなかったりする子どももいる。
そこでMSFは、子どもたちに付き添うケア担当者を採用して研修を実施している。担当者は全身を防護具で覆い、MSFが支援する複数の治療センターで日々の世話をしながら子どもたちの不安を和らげている。
それでも、幼い子どもにとって治療センターへの入院は非常につらい経験だ。自分が置かれた状況を理解するには幼すぎたり、身の回りのことを自分ではできなかったりする子どももいる。
そこでMSFは、子どもたちに付き添うケア担当者を採用して研修を実施している。担当者は全身を防護具で覆い、MSFが支援する複数の治療センターで日々の世話をしながら子どもたちの不安を和らげている。
エボラから回復した人を含め、さまざまな背景を持つ人がこの役割を担っている。現在、ブテンボにあるキタトゥンバの治療センターでは、13人のケア担当者が子どもたちを支えている。
こうした取り組みだけで子どもたちのつらさをすべて解消できるわけではない。それでも、人との触れ合いを通じて、闘病する子どもたちの心を支える大切な役割を果たしている。
子ども向けの治療や研究が追いつかない
「診療から活動計画、研究まで、あらゆる取り組みの中心に子どもを据える必要があります」
こう訴えるのは、疫学者でMSFのオペレーション副責任者も務めるギギ・マナンガマ。現状の問題として、幼い患者の診療そのものが難しいことに加え、医療現場では子どもへの薬の投与量に関する指針が不足していると指摘する。試験段階の薬についても、子どもが服用しやすい形のものは十分に利用できていない。
今回の流行で、子どもたちは特に大きな影響を受けている。それにもかかわらず、新しい治療法や予防手段を利用する機会は限られている。
今回の流行で、子どもたちは特に大きな影響を受けている。それにもかかわらず、新しい治療法や予防手段を利用する機会は限られている。
これまでも、臨床研究では子どもが対象から外されたり、研究への参加が大幅に遅れたりすることが多かった。その結果、子どもの治療や予防に必要な科学的根拠が不足し、命を救える可能性のある医療を受ける機会も限られてきた。
マナンガマは、治療薬やワクチンについて、研究の当初から子どもへの使用を評価して速やかに利用できるようにすべきだと訴える。
マナンガマは、治療薬やワクチンについて、研究の当初から子どもへの使用を評価して速やかに利用できるようにすべきだと訴える。
子どもたちがエボラの治療や予防の進歩の恩恵を受けるために、成人のデータがそろうまで待たされる状況をこれ以上続けてはなりません。
疫学者/MSFオペレーション副責任者 ギギ・マナンガマ
子どもの命を守るために
MSFは各国当局、研究機関、製薬会社、国際的な資金拠出機関に対し、ブンディブギョ・ウイルスの研究に、子どもを優先的に組み入れるよう求めている。研究への参加や、ワクチンを含む新たな医療手段を公平に利用できる機会を保障することは、特に弱い立場にある子どもたちの防げる死を減らし、治療の成果を高めるために欠かせない。
エボラの流行が子どもに及ぼす影響は、感染だけにとどまらない。基本的な医療が滞ると、ワクチンで予防できる病気や栄養失調、子どもによく見られるほかの病気のリスクも急速に高まってしまう。
定期予防接種や栄養支援、身近な医療を受けられる体制を維持することも、エボラ対応の重要な柱として位置づける必要がある。
エボラの流行が子どもに及ぼす影響は、感染だけにとどまらない。基本的な医療が滞ると、ワクチンで予防できる病気や栄養失調、子どもによく見られるほかの病気のリスクも急速に高まってしまう。
定期予防接種や栄養支援、身近な医療を受けられる体制を維持することも、エボラ対応の重要な柱として位置づける必要がある。
感染予防に向けた薬とワクチンの現状
薬による予防
現在進められている臨床試験「EBO-PEP」では、感染リスクの高い接触があった後のエボラ感染を防ぐため、飲み薬の抗ウイルス薬「オベルデシビル」の有効性を検証している。効果が確認されれば、エボラ患者と接触した人を守るための有効な選択肢になる可能性がある。
今後、一部の子どもにも試験の対象が広がる見込みだ。ただし、体重20キログラム未満の子どもは、服用に適した形の薬がまだ用意されていないため、対象外となっている。
今後、一部の子どもにも試験の対象が広がる見込みだ。ただし、体重20キログラム未満の子どもは、服用に適した形の薬がまだ用意されていないため、対象外となっている。
代わりに、幼い子どもには10日間にわたって薬を静脈内に投与する方法が用いられている。しかし、流行下でこの方法を実施することは難しく、幼い患者や世話をする人にとっても大きな負担となる。
ワクチンによる予防
ブンディブギョ・ウイルスを対象に開発されたワクチンの臨床試験結果が出るまでには、まだ数カ月かかる見込みだ。一方、すぐに利用できるワクチンの選択肢として「ERVEBO」がある。
ERVEBOは安全性に関する知見が十分に蓄積されており、1歳以上の子どもへの使用が承認されている。コンゴの保健当局にも、過去のエボラ流行時にこのワクチンを使用してきた豊富な経験がある。
ブンディブギョ・ウイルスの予防を目的として開発されたものではないが、このウイルスに対しても一定の予防効果がある可能性を示す知見が出てきている。ただし、その効果がどの程度あるかはまだ明らかになっていない。
感染リスクの高い地域では、感染が確認された人と接触した人に、1歳以上の子どもも含めてワクチンを接種することが、重症化を防いで命を救うことにつながる可能性がある。
ERVEBOは安全性に関する知見が十分に蓄積されており、1歳以上の子どもへの使用が承認されている。コンゴの保健当局にも、過去のエボラ流行時にこのワクチンを使用してきた豊富な経験がある。
ブンディブギョ・ウイルスの予防を目的として開発されたものではないが、このウイルスに対しても一定の予防効果がある可能性を示す知見が出てきている。ただし、その効果がどの程度あるかはまだ明らかになっていない。
感染リスクの高い地域では、感染が確認された人と接触した人に、1歳以上の子どもも含めてワクチンを接種することが、重症化を防いで命を救うことにつながる可能性がある。




