拡大するエボラ病流行に挑む──国境なき医師団、コンゴで最前線の医療従事者2万人を対象にワクチン研究「BRAVO」を開始

2026年10月09日
国境なき医師団(MSF)が支援するコンゴ民主共和国のエボラ治療センターで、エボラ病流行の対応に当たる医療従事者=2026年8月16日 © Lucie Ringué/MSF
国境なき医師団(MSF)が支援するコンゴ民主共和国のエボラ治療センターで、エボラ病流行の対応に当たる医療従事者=2026年8月16日 © Lucie Ringué/MSF

ブンディブギョ・ウイルスによるエボラ病(エボラ出血熱)の流行がコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)で拡大を続けるなか、国境なき医師団(MSF)とMSFの疫学研究機関であるエピセンターは、ワクチン研究「BRAVO(※)」を開始した。

この研究では、エボラ病対応に従事する最前線の医療従事者らを一定期間追跡し、「ERVEBOワクチン」の有効性を評価する。コンゴ保健省主導の流行対応の一環として実施されるもので、ブンディブギョ・ウイルスを対象としたワクチンや治療法が利用できない現状において、その効果を検証することを目的としている。

  • ※BRAVO:フランス語の「Bundibugyo, Répondre Avec la Vaccination - On est ensemble」の頭文字を取った名称で、「ブンディブギョ・ウイルスにワクチンで対応する。私たちは共にある」という意味。流行に立ち向かう連帯の意思が込められている。

ブンディブギョ・ウイルスへの新たな対応

現在、大規模に供給可能な唯一のエボラ病ワクチンである「ERVEBO」は、安全性が十分に確認されており、コンゴでも広く使用されてきた。しかし、このワクチンはもともとザイール型のエボラ・ウイルスによるエボラ病を対象に開発・承認されたもので、現在の流行を引き起こしているブンディブギョ・ウイルスに対する効果は確認されていない。

こうした状況を踏まえ、コンゴ保健省、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)、コンゴ国立生物医学研究所(INRB)などと共同で実施する本研究では、ブンディブギョ・ウイルスに対するERVEBOワクチンの使用状況と有効性を記録・評価する。

「ERVEBOワクチンはブンディブギョ・ウイルスの予防を目的として開発されたものではありませんが、暫定的なデータによれば、このウイルスに対してある程度の効果が得られる可能性があります」と、疫学者でありMSFのオペレーション副責任者を務めるギギ・マナンガマ医師は言う。

「コンゴが現在直面しているような時間との闘いにおいては、利用できるあらゆる手段を活用しなければなりません」

たとえ限定的な予防効果であっても、重症化や死亡を減らせる可能性があります。しかし、こうした潜在的な効果は科学的に証明されなければなりません。そのために、「BRAVO」研究を行うのです。

ギギ・マナンガマ医師 疫学者/MSFオペレーション副責任者

コンゴ・ブニアで、トイレの消毒を行うスタッフら=2026年8月6日 © Julien Dewarichet/MSF
コンゴ・ブニアで、トイレの消毒を行うスタッフら=2026年8月6日 © Julien Dewarichet/MSF

最前線の医療従事者2万人を追跡

研究は9月19日、コンゴ北東部イトゥリ州ブニアにある世界保健機関(WHO)の医療従事者向け研修センターで開始された。実施期間は9~12カ月を予定しており、このうち3カ月は参加者のワクチン接種、その後少なくとも6カ月は彼らの追跡調査に充てられる。

対象となるのは、イトゥリ州および北キブ州の最前線で働く2万人の医療従事者だ。彼らは流行対応に欠かせない人材である一方で、ウイルスへの曝露リスクが特に高い。本研究では、現在の流行下においてERVEBOワクチンを使用し、その有効性を評価するための現実に即したデータの取得を目指す。

MSFが支援するコンゴ・ブニアのエボラ治療センターで、患者に対応する看護師=2026年7月23日 © Julien Dewarichet/MSF
MSFが支援するコンゴ・ブニアのエボラ治療センターで、患者に対応する看護師=2026年7月23日 © Julien Dewarichet/MSF

流行対応を強化するために

ブンディブギョ・ウイルスを対象としたワクチンは現在複数が開発中であり、今後数カ月以内に利用可能になる可能性がある。そのため、こうした研究を継続し、加速させていくことが重要だ。

一方、ERVEBOワクチンは安全性が確立されており、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、WHOなど主要機関の承認も受けていることから、ブンディブギョ・ウイルスに特化したワクチンが利用可能になるまでの暫定措置として活用されている。

BRAVO研究への参加やワクチン接種は、すべて本人の自由意思に基づいて行われる。また、ワクチンは追加的な予防策であり、効果が実証されている感染予防・管理対策に代わるものではない。最前線の医療従事者は引き続き防護具を着用し、安全なケア手順を順守するとともに、症状が現れた場合には速やかに報告する必要がある。

「このワクチンだけで現在の流行を終息させることはできません」とマナンガマ医師は強調する。

しかし、感染リスクが最も高い人びとを守るための追加的な予防策となり、他の重要な対策と併せて流行対応を強化する一助となる可能性があります。

ギギ・マナンガマ医師 疫学者/MSFオペレーション副責任者

コンゴ・ブニアで感染予防対策として防護服を着用するスタッフ=2026年8月6日 © Julien Dewarichet/MSF
コンゴ・ブニアで感染予防対策として防護服を着用するスタッフ=2026年8月6日 © Julien Dewarichet/MSF

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