コンゴ民主共和国:武装勢力による虐殺が発生 多くの患者が証言
2025年10月09日
2025年7月以降、激しい暴力が続いているコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)北キブ州の村ビンザで、国境なき医師団(MSF)が診察した複数の患者が、女性や子どもを含む民間人が虐殺されたと証言している。
全員が、加害者は武装した男たちだったと話しており、その中には反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」の関与を指摘する声もある。
大規模な虐殺は現在、一時的に沈静化したように見えるものの、人びとは依然として武装勢力による日常的な暴力にさらされている。
暮らしの中で起きた凄惨な暴力
畑仕事をしていたエスペランサさんの前に、突然、武装した男たちが現れた。
「彼らは男性を見つけると殺し、頭部を切断していました」 と彼女は語る。
「8人の男性が殺されるのを見ました」
女性と子どもたちは集められ、近くの川へと連れていかれた。銃声が響く中、命を落とした人の体が次々と水中に落ちていった。エスペランサさんは命を守るため、背中に我が子を背負ったまま川に飛び込んだ。
対岸にたどり着いたとき、我が子が頭を撃たれていることに気がついた。
「子どもをくくりつけていたショールをほどき、なきがらを川に流しました」
エスペランサさん 子どもを殺された女性
銃撃が収まると、エスペランサさんは虐殺の現場に戻り、残っていた2人の子どもたちも殺されているのを発見した。悲痛な叫びをあげた彼女の存在に、近くにいた武装した男が気づき、レイプしてそのまま逃げ去った。

明らかな国際人道法違反
2025年7月以降、さまざまな団体やメディアが北キブ州ルチュル地区での大量虐殺について報道している。
MSFがルチュル総合病院で受け入れたビンザ出身の患者たちも、7月にビルンガ国立公園の東側の畑で発生した虐殺や処刑について証言している。
目撃者らは、キセグル村近くで銃撃による遺体が発見されたと語っている。生存者全員が、虐殺の実行犯は武装した男たちだったと話しており、中にはM23の名前を挙げた人もいた。
MSFは正確な死者数を確認できていないが、7月と8月にかけてルチュル総合病院で124人の患者を治療した。彼らは意図的な負傷を負っており、その多くがビンザおよびバンボ保健区域から来た人びとだった。
「7月に発生した虐殺で銃撃を受けたと語る患者を治療しました。中には女性や子どもも含まれていました」とコンゴのMSFオペレーション・マネジャー、クリストファー・マンブラは言う。
「患者の一部は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を示しています」
ルチュル地区全域で、武装勢力による殺りくが今も続いており、これは国際人道法上、明白かつ容認できない違法行為です。
クリストファー・マンブラ コンゴのMSFオペレーション・マネジャー

阻まれる医療へのアクセス
MSFが外科治療などの医療支援を行っているルチュル総合病院では、2025年1月から8月にかけて月平均59人の暴力による被害者を治療した。これは前年同期比で15%の増加であり、MSFが2019年にこの地域でデータ収集を開始して以来、最も多い数字だ。
被害者のほとんどは民間人であり、その数は2025年7月と8月の全患者の83%を占めている。
現在、大規模な虐殺は収まったように見えるが、人びとは今もなお武装集団による暴力に苦しめられている。CMC、ワザレンド、FDLRなど他の武装勢力による虐待の報告も日々寄せられている。
「今でも毎日、多くの銃創患者が運ばれてきます」と現地の病院で働くMSFの外科医カリー・フェリックスは語る。
「衝突の巻き添えになった人もいれば、戦闘員もいます」
マリーさんの父と3人の兄弟は、8月に殺害された。彼らはビンザの畑で作業していたという。
とても怖いです。ここに平和はありません。理由もなく殺される可能性があるんです。
マリーさん 家族を殺された女性
キセグル村ではコレラ治療センターの運営を継続しているが、8月末までに1日当たりの患者数が約10人にまで減少した。アクセス制限が、その理由の一つだ。

迫り来る飢餓の危機
ビンザは肥沃な土地に囲まれた地域に位置しており、多くの人びとがビルンガ国立公園東側の農地で生計を立てている。一方で、この地域にはワザレンドなどの武装勢力が存在しており、M23はここ数カ月、これらの武装勢力に対する軍事作戦を続けている。
地元住民によると、この対立によって畑には腐敗した遺体が散乱し、多くの人びとが避難を余儀なくされているとともに、作物の収穫や作付けができず、食料危機への懸念が高まっている。
ジュディスさんは7月、トウモロコシを収穫している最中に足を撃たれた。
「大勢の人びとがその場で亡くなりました。しかし、埋葬できる人もいません」と彼女は言う。
殺されるのが怖くて畑には戻れません。食べものを探しに行くだけで殺されることだってあるんです。
ジュディスさん 武装勢力に足を撃たれた女性
ジャスティンさんは夫が調理用のバナナを探している最中に殺されたことを知らされた。そのとき、彼女は出産したばかりだった。
「今は子どもたちの面倒を見なければなりません」と彼女は語る。
殺害やレイプの脅威が常にあります。飢えでも人びとが亡くなっています。畑も誰も耕してはいません。
ジャスティンさん 夫を殺された女性
MSFは7月から8月にかけて、重度の栄養失調に陥った5歳未満の子ども400人以上を治療した。治安の悪化による大規模な住民の避難は、この問題をさらに深刻化させる恐れがある。

- ※住民の名前は仮名を使用。