親族による犯行、男性も被害に……中央アフリカで横行する性暴力

2021年05月13日掲載

一緒に暮らしていたおじから性暴力を受けた女性 © Adrienne Surprenant / Collectif ITEM/一緒に暮らしていたおじから性暴力を受けた女性 © Adrienne Surprenant / Collectif ITEM/

長期にわたり内戦が続く中央アフリカ共和国(以下、「中央アフリカ」)では、大勢の人びとが激しい暴力や人権侵害に繰り返しさらされている。特に性暴力は深刻さを増しており、2021年1月13日に首都バンギ郊外で戦闘が発生した数週間後には、性暴力の被害件数が急増したことが報告された。

数年前までは、性暴力の加害者は武装勢力の男性であるケースが大半を占めていたが、最近は友人、隣人、親戚といった身近な人物による犯行も多い。2020年に国境なき医師団(MSF)が診察した性暴力被害者のうち、56%が「犯行は顔見知りによるものだった」と話している。

MSFは同年8月、バンギのラクアンガ地区に性暴力を専門とするトンゴロ・サポート・センターを開設し、被害に遭った人びと体と心のケアを行っている。この国で横行する性暴力の実態を、2人の患者の証言とともに伝える。 

「死のうと思った」 家族の留守中の犯行

母を亡くし、父親とも離れておじ夫婦の家に身を寄せていた18歳のシャルロットさん(仮名)はある日、おばの留守中におじにレイプされた。被害を訴えたが、おばは彼女の話を信じず、警察にも取り合ってもらえなかった。

親族間で起きた性暴力の場合、それは家族にとって恥となる。責められるのは被害者の方であり、誰にも言わないよう口止めされる。

シャルロットさんも孤独と絶望に打ちのめされていたが、いとこの勧めによってMSFのトンゴロ・センターを受診した。そしていま彼女は、センターで処方された薬を服用し、心のケアも受けながら、平穏を取り戻しつつある。 

男性も性暴力の被害に

性暴力の被害者の大半は女性だが、男性が被害に遭うケースも少なくない。2020年は111人の男性がMSFで治療を受けた。

バンギ出身のセレスチンさん(仮名)もその一人だ。セレスチンさんはある晩、部屋を貸していた知人から性的暴行を受けた。「寝ていたら、あの男がどこからともなく現れたんです。殴られ、性行為を強いられました」 

性暴力という行為が被害者にもたらす目に見えない影響は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安感、うつなどの症状となって現れる。

特に被害者が男性だった場合、周囲からの圧力や偏見を恐れて病院を受診しない人が多いため、支援は困難だ。 

被害を受けてから3日以内に受診を

「被害者は、私たちのところに来る時点で既に心に傷を負っています。ですから感染症の予防など、体のケアがとても大切なのです」こう語るのは、医療アドバイザーのアクセル・フランコムだ。

性暴力を受けた場合、HIVなどの性感染症予防薬の投与や、B型肝炎、破傷風などの予防接種、また望まない妊娠を防ぐための処置などを3日以内に行わなければならない。しかし2020年にMSFが診察した患者のうち、性暴力を受けてから72時間以内に来院した人はわずか26%にとどまった。そのためMSFは、被害に遭った場合はできるだけ早く受診するよう、ラジオ放送を通じて、広く呼び掛けている。 

必要なのは包括的な支援

被害者が人生を取り戻すためには、心と体のケアに加え、法的・社会経済的な支援も不可欠だ。しかし現在中央アフリカでは、こうした分野で利用できるサービスはほとんどなく、被害者の多くは認識すらされていない。また、性暴力関連の罪には刑罰が科されないことや、刑事手続きは首都でしか行われていないことも問題だ。

MSFは、被害者が一カ所ですべてのサポートを受けられるようにするため、トンゴロ・センター内に法律、保護、教育、社会経済面の支援を専門とする国内外の組織を受け入れるスペースを設置した。今後はさまざまな組織との連携・協力を強化していく必要がある。

全ての性暴力被害者を治療し、適切な支援を行えるようになるまでの道のりは長い。 

MSFが運営するトンゴロ・センター 🄫 Adrienne Surprenant / Collectif ITEM/MSFが運営するトンゴロ・センター 🄫 Adrienne Surprenant / Collectif ITEM/

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