新型コロナウイルス:4倍も過度に高い価格 検査キットが途上国で供給不足

2020年08月05日掲載

GeneXpertで結核検査を行うパプアニューギニアの検査技師=2014年 © ARIS MESSINIS/MatternetGeneXpertで結核検査を行うパプアニューギニアの検査技師=2014年 © ARIS MESSINIS/Matternet

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、医療現場で迅速に感染を診断できる検査器具が、世界中で緊急に必要とされている。国境なき医師団(MSF)は、診断検査機器メーカーの米セフィエド社に新型コロナウイルス検査キット「Xpert Xpress SARS-COV2」を、どの国でも購入可能な価格で公平に配分するよう呼びかけた。この世界的大流行での利益追求は控え、検査をより広く行き渡らせるために、検査1回分およそ20米ドル(約2100円)という最貧国への販売価格を、5米ドル(約527円)まで引き下げることを同社に求めたものだ。MSFの研究では、この検査キットの価格は5米ドルでも利益を出せることが分かっている

製造コストに見合わない価格設定

「新型コロナウイルス感染症が疑われる症例への対処に、いま各国が苦闘しています。正確で迅速な診断検査は、感染した人に即時で対応し、大流行を抑え込むために不可欠です。メーカーが検査キットを迅速に手ごろな価格で世界に普及させれば、多くの命が救われることになります」。MSFアクセス・キャンペーン医療コーディネーターのグレッグ・エルダー医師はそう指摘する。
 
セフィエド社は145の途上国で、検査1回あたりの価格を19.80米ドル(約2087円)に設定。その中には、人びとが1日2米ドル(約210円)未満で暮らす最貧国も含まれる。同社は米政府の生物医学先端研究開発局から公的資金370万米ドル(約3億9016万円)を得て、この検査カートリッジ「Xpert Xpress SARS-CoV-2」を開発した。
 
またMSFなどの団体は以前、セフィエド社の類似製品である、結核用検査カートリッジの製造コストを調査した。そこで判明したのは、原材料費、製造費、間接費などの諸経費を合わせても、製品原価は3米ドル(約316円)程度となることだ。製造に必要な各種の権利使用料の支払い期間は終了しており、大量調達によって販売価格5米ドルでも利益が得られる。その分析調査では、細菌用とウイルス用の検査カートリッジの間には大きな違いがないことも示され、対象となる疾病によって検査キットの価格を大きく変える根拠がないことも明らかとなった。MSFはセフィエド社に、新型コロナウイルス感染症を含め、各疾病の検査用カートリッジの価格を5米ドル以下に引き下げるよう求めている。
 
「今は、市場を見て価格をできるかぎり高く設定するような手法を使うべき時ではありません。この重要な検査は、世界的な保健上の緊急事態への対策として、すぐにでも必要な人に5ドルで届くようにすべきです」。MSFアクセス・ キャンペーンHIV/エイズ・結核担当上級顧問のシャロナン・リンチはそう訴える。

検査をどの国でも普及させるために

コンゴのMSFエボラ治療センターで使用されている検査装置「GeneXpert」 © Carl Theunis/MSF コンゴのMSFエボラ治療センターで使用されている検査装置「GeneXpert」 © Carl Theunis/MSF

2020年3月に米食品医薬品局が緊急承認したセフィエド社の検査キットは、診療現場で1時間以内に新型コロナウイルス感染を検出できる。同社の検査装置「GeneXpert」とともに使用するカートリッジとして設計された。GeneXpertは既に世界中で結核などの感染症診断に用いられ、低・中所得国には現在、1万1000台あると推定される。
 
2020年3月、世界保健機関(WHO)は複数の協力機関と共に、低・中所得国が新型コロナウイルス感染症への医薬品や診断法を早急かつ公平に得られるよう後押しするため、「診断法コンソーシアム(Diagnostics Consortium)」を設立。このコンソーシアム(共同事業体)は、主要な診断検査メーカーであるアボット、セフィエド、ロシュ、サーモフィッシャーサイエンティフィックの各社から、まず4カ月(4~8月)分として一定量の検査キットを確保した。コンソーシアムによると、セフィエド社が供給したカートリッジ数は、同社の製造能力の3分の1に過ぎない。その結果、供給量は各国がコンソーシアムに寄せた発注量に対し、半分にも達していない。次の4カ月(9~12月)の供給量と価格を交渉するため、コンソーシアムとセフィエド社を含む各社は新たな協議を控えている。
 
シャロナン・リンチは続ける。「大流行が猛威を奮う中、豊かな国々はまず自国内で使うことを念頭に、新型コロナウイルス感染症に対応する医薬品を調達しようとし、他の国々より圧倒的な優位に立っています。MSFが深く憂慮しているのは、資源の限られた多くの国の人びとが、この重要な診断検査を受けられなくなるのではないかという点です」 
 
「セフィエド社が正しい方向に進んで、『診断法コンソーシアム』に検査キットを公正な量と手ごろな価格で提供することを保証し、同社との直接交渉などできず他の方法では置き去りにされかねない国々が助けられるか否か、見守らなければなりません。誰一人として、生まれた国や収入の少なさによって検査へのアクセスが拒否されてはならないのです」 

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