プレスリリース
生活者と弁護士の「遺贈」に対する意識の差が浮き彫りに──弁護士の遺贈に関する意識調査
2022年02月09日遺言によって遺産の一部または全てを相続人以外の者や団体に無償で譲る「遺贈」。自分の資産を託して社会貢献する新しい寄付の形としても注目され、NGOなどへの遺贈寄付も増加しています。2014年より、遺贈に関わる意識調査を実施してきた国境なき医師団日本(会長:久留宮 隆、事務局長:村田 慎二郎)は今回、遺贈を行う生活者の諸手続きをサポートする弁護士の意識に着目。全国の20~60代以上の男女179人の弁護士を対象に「弁護士の遺贈に関する意識調査」をインターネット調査し、集計結果を公開しました(調査期間:2021年11月11日~11月29日の19日間、調査協力:株式会社インテージ/Googleフォームを用いた個別集計)。調査結果からは、一般の生活者と弁護士の間には遺贈に対する意識に差があることが見えてきました。
・60歳以上の20.5%は「遺贈」に関心 一方、弁護士の半数以上が
「遺贈寄付」に関心を寄せる層は10%にも満たないと推測
・約7割の弁護士が「遺贈寄付」の提案に積極的ではない
・遺言書を用意している生活者はわずか3.4%
一方、弁護士の約8割は「有効な遺言書の用意」が必要と回答
「遺贈」とは?
遺贈とは、「遺言」によって遺産の一部または全てを相続人以外の者や団体に無償で譲ることをいいます。遺贈をするには遺言書が必要です。遺贈先として、親しい友人やお世話になった人だけでなく、NPO法人などの団体にも、遺産の一部または全部を寄付として継承させることができます。【遺言による新しい寄付の形】として注目されており、国境なき医師団への遺贈寄付も増加しています。遺贈寄付として託された遺志は、医療・人道援助活動を通して多くの命につながっています。
60歳以上の生活者と弁護士の「遺贈」に対する意識に差
60歳以上の男女の5人に1人(20.5%)は「遺贈」に関心。
一方、弁護士の半数以上が「遺贈寄付」に関心を寄せる層は10%にも満たないと推測
日本財団の調査によると※1、60歳以上の男女の5人に1人(20.5%)が「遺贈」に関心があると回答。一方、弁護士に全国の60歳以上の男女で「遺贈」に関心がある人の割合を推測してもらうと、その割合は10%にも満たないであろうと半数以上(52.5%)が回答。生活者と弁護士の間では、「遺贈」に対する意識の差が生まれていることが判明しました。
生活者と弁護士の遺贈寄付に対するスタンスの違いが明らかに
弁護士は生活者の多くが「近親者への遺産相続を希望する」ものと認識
約7割の弁護士が「遺贈寄付」の提案にまだ積極的ではない
これまで「遺贈寄付」の相談実績がある弁護士に対し、「遺贈寄付」に対する提案意向を伺うと、約7割(70.2%)の弁護士が積極的な提案意向はないと回答。弁護士は「遺贈寄付」の提案に対して慎重な姿勢であることが見受けられます。その理由を問うと、「依頼者の多くは、配偶者や子どもなど近親者への遺産相続を希望すると思っているため(60.4%)」が最も多くなりました。生活者が遺贈に抱く印象と、サポートする弁護士の意識にズレがあると考えられます。
生活者と弁護士で遺言書への意識に乖離
遺言書を用意している生活者はわずか3.4%にとどまる一方で
弁護士の約8割はトラブル回避のために「有効な遺言書の用意」が必要と回答
日本財団の調査※1によると、「遺言書」の準備を行っている人はわずか3.4%に留まる状況。一方、弁護士の約8割(80.4%)が、相続や遺贈寄付を実行する際のトラブルを避けるためには、 「有効な遺言書を用意しておくこと」と回答。生活者と弁護士の「遺言書」に対する意識には乖離がある状況がうかがえます。また、遺贈寄付先として推奨したい団体を弁護士に問うと、「依頼者の意思が反映できる団体(79.1%)」が最も多い結果となりました。
「国境なき医師団日本」としての今後の方針について
国境なき医師団では、遺贈寄付についての認知と理解を広げるために、かねてより広報活動や講演活動などを行ってまいりました。近年、遺贈についてのお問い合わせが大幅に増加しており、関心の高まりを感じています。今後は、弁護士の方々をはじめとする専門家の皆さまと連携しながら、さらなる情報提供や気軽にご相談いただける体制づくりを進めてまいります。(事務局長 村田慎二郎)
※1「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」(日本財団, 2021)