海外派遣スタッフ体験談
2度目の南スーダンでスタッフトレーニングに尽力
榊原 英朗
- ポジション
- 薬剤師
- 派遣国
- 南スーダン
- 活動地域
- ジュバ
- 派遣期間
- 2016年2月~2016年5月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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2014年に初めて海外派遣された南スーダンの活動に再びこの国の活動に参加する機会を得たこと、また2013年12月に起こった紛争の後、2年が経過しても状況があまり改善されていないこともあり、支援したいと思い参加しました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
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インターネットや英会話サークルなどで英語の勉強を続けつつ、元の職場(病院)で働いていました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?
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今回は主に首都のジュバから各地のプロジェクトをサポートする立場でしたが、2年前に南スーダンのマバンのプロジェクトで働いていたので、メールや電話でのやり取りでも、現地の状況を理解しやすかったと思います。
また、薬剤師チームと物資供給を担うサプライ・チームの業務統合が行われましたが、以前にも経験していたので、スムーズに進めることができました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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調剤担当スタッフの薬品管理をトレーニング
2013年12月の内戦勃発以降、南スーダンは、5歳以下の死亡率が1000人中135人など、健康指標で最も悪い国のひとつとなっていました。
このような状況の中で、MSFのチームは2つの地方プロジェクトを運営していました。アゴクのプロジェクトでは2次医療を提供する病院を運営しており、以前からこの地に住んでいる住民、国内避難民、なかでも特に女性と5歳以下の子どもを対象に、この地域の医療状況を向上する目的で活動していました。
産科、新生児科、栄養治療を含む入院病棟を運営し、手術にも対応していました。また、HIV/エイズと結核プログラムも実施していました。
アゴクから車で3時間ほどのマヨムのプロジェクトでは、他団体と共に一次医療を提供する中で、HIV/エイズ、結核プログラムやはしか、ポリオの予防接種を行っていました。
私の仕事内容としては、薬・医療物資の安定供給、薬の適正使用の推進、プロジェクトで働くスタッフのトレーニング、在庫管理や品質管理方法の向上、薬剤師チームとサプライ・チームの業務統合のほか、輸入許可の申請も行っていました。
現地プロジェクトに滞在し、現地スタッフの監督、指導、プロジェクトの現状把握、改善案の提案などをすることもありました。
今回は特にスタッフのサポートに尽力したと思います。1つは、プロジェクトで働いていた新人の外国人派遣スタッフ薬剤師のサポートです。彼は私の前任者との関係が良くなかったそうで、業務を十分に理解していないまま、自分の考えで仕事を進めつつありましたが、サポートによって全体業務の質の改善に努めました。
もう1つは、医療物資を管理する倉庫管理スタッフを現地で採用するにあたって、選抜試験から関わり、倉庫管理のマネジメントについて一からトレーニングしました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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ある日の食事、野菜とイモ、チャパティ
ジュバにいる時は、朝7時に起床して朝食をとり、8時のミーティングでセキュリティ状況を含めた各部署からの報告を確認します。
その後、車で倉庫に向かい、ジュネーブの運営本部やほかのセクションの薬剤師、プロジェクトにいる薬剤師や医療チームリーダーとメールや電話でやり取して、送付物資の調整や安全性情報の対応、ヨーロッパから送ってもらう物資のオーダーの調整を行っていました。
プロジェクトで使う医療物資のほとんどは飛行機で送っていたため、空輸に必要な梱包とそのリストの作成も業務の1つでした。治安の状況によって門限が変更されるので、倉庫でできることは先に済ませ、事務所兼ゲストハウスに戻ってからそれ以外の仕事をするなど、時間配分を考えながら仕事していました。
昼ごはんは倉庫の近くの食堂で、夜ご飯は自炊することが多かったですが、治安がいい時は外食に行きました。
休みの日はマーケットに買い物に行って、同僚とランチに行くこともありましたが、仕事のスイッチを完全に切りたいときは、一日中寝ることもありました。
- Q現地での住居環境について教えてください。
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かやぶき屋根のトゥクルに寝泊り
ジュバでは事務所と兼用の5階建てのゲストハウスで、各部屋にシャワー、トイレ、キッチンがありました。プロジェクトではかやぶき屋根のトゥクルやテントで寝泊まりしていました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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マヨムからアゴクへ移動の際、患者を搬送する車に同乗して移動することがよくあるのですが、エアコンもない車の車内にあるのは酸素と点滴だけで、日本の救急車のような装備はありません。
マヨムで、長くはもたないだろうという状況の子どもをアゴクへ搬送する車に同乗しましたが、結局、道中で亡くなってしまいました。MSFの活動によって助かる命もあり、また、助けきれない命もあることもわかっていますが、できることが限られすぎていて、無力さを感じた瞬間でした。
- Q今後の展望は?
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熱帯医学の勉強をして知識を深め、次のMSFの活動に臨みたいと思っています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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活動中は計画通りにいかないことも多々ありますが、それでも自分ができる努力を最大限にしておくことが大事だと思います。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2015年6月~2015年7月
- 派遣国:ネパール
- 活動地域:カトマンズ
- ポジション:薬剤師
- 派遣期間:2015年1月~2015年5月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:イスラマバード
- ポジション:薬剤師
- 派遣期間:2014年1月~2014年7月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:マバン
- ポジション:薬剤師