海外派遣スタッフ体験談
初の緊急援助でプロジェクト閉鎖に従事
榊原 英朗
- ポジション
- 薬剤師
- 派遣国
- ネパール
- 活動地域
- カトマンズ
- 派遣期間
- 2015年6月~2015年7月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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前回のパキスタンでの活動中にネパールの大地震が起こりました。ネパールは東日本大震災の時に日本を支援してくれたことを知っていたので、機会があれば、ネパールでの活動に参加したいと思っておりました。
パキスタンの活動終了後、MSF日本事務局に寄った際にその気持ちを伝えていましたら、後日、フィールド人事部よりネパール派遣の要請がありました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
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パキスタンから帰国後1ヵ月休養をとり、その後1ヵ月は元の職場(病院)で働いていました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?
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今回が初めての災害支援、そして初めての緊急援助活動でしたので、物事の展開の早さについていくのが大変でしたが、管理ソフトウエアの使い方や物品寄付の流れ等、基本はこれまで経験したMSFの活動と同じでした。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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山岳地帯のアルガトではテント病院を運営
写真は病院を撤収している様子ネパールの大地震後の復興援助です。MSFのチームは首都カトマンズに本部を置き、政府が運営している病院や、地域の基幹病院をサポートしました。
山岳地帯では土砂崩れで交通が遮断され、ほかのNGOが支援できず孤立していたため、MSFが手術もできる仮設のテント病院を運営していました。
また、ヘリコプターで山岳地帯を周り被害調査と救急医療を行う「アウトリーチ・チーム」も展開していましたが、私がネパールに入ったのは地震発生から2ヵ月が経った7月でしたので緊急段階はすでに終了しており、ほとんどのプロジェクトは閉鎖することが決まっていました。
私の役割はプロジェクトで使わなかった薬や医療物資や機材の整理でした。サポートしていた病院に寄付できるものは寄付し、これらの病院が使わないものは一旦カトマンズの倉庫に送り返し、MSFのほかのプロジェクトに寄付しました。
手術もできる仮設のテント病院を展開していた山岳地帯の町アルガトは、使用していた品目がひときわ多く複雑でしたので、私も現地へ向かいサポートしました。
複数のプロジェクトがほぼ同時に閉じる予定でしたので、それぞれのプロジェクトの品目リストを整理するのが複雑で大変でしたが、「プロジェクトを閉じる」という経験はなかなかできないので勉強になりました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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本部にいる時は朝8時にミーティングをし、その後、車で倉庫に向かい、物資を整理していました。倉庫にはインターネットがなかったので、プロジェクトの現場からメールで依頼された仕事は夕方オフィスに戻ってからしていました。
締め切りがある仕事が多かったので、夜中まで仕事することが多かったです。また、本部を離れて現場で仕事をしていた時も、撤収する日が決まっていたため、朝のミーティングの後は寄付等のリスト作りや、本部に持ち帰る物資の整理に忙しかったです。
- Q現地での住居環境について教えてください。
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事務所として使う建物は耐震強度が十分である必要があったことから、オフィスをホテルの一室に借り、宿泊も同じホテルでしたので、仕事の区切りが付きませんでした。
プロジェクト現場のアルガトでは、オフィス、診察室、手術室などはすべてテントでできていました。シャワーはホースの先に花の水やりの時に使用するハス口が付いていました。
昼間は湿度、気温共に高く、夜は肌寒いので、夜中にシャワーを浴びると冷たかったです。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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私よりも先に来ていたスタッフは目まぐるしく変わるスケジュールの中で運営に力を注いでいたので、急にプロジェクトの閉鎖が決まってモチベーションが下がっていきました。そ様子を目の当たりにし、緊急援助の難しさを感じました。
一方で、MSFが完全に撤退する際、サポートしていた1つの病院で現地のスタッフが小さいながら式典を行ってくれ、MSFの支援に感謝してくれただけでなく、一緒に働くことができ喜んでくれたことが印象的でした。
緊急援助活動でも、MSFの活動が一方的ではなく、お互いに良い関係を築きながら活動できていたことを実感しました。
また、この活動後1年以上が経ちますが、一緒に働いていた2人の現地スタッフがこの時の縁をきっかけに結婚したという報告を受けました。現地スタッフとこうした交流が続いている事も、活動で得られた財産です。
- Q今後の展望は?
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MSFが主催するトレーニングを受け、英語力をキープしつつ次の活動に臨みたいと思っています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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毎回、感じることですが、仕事上の事だけでなく、派遣先の文化や習慣など含め、知らないことの方が多くあり、逆に言えば毎回新しいことを学ぶことができる環境であるとも言えます。まずは、一歩踏み出してみて下さい。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2015年1月~2015年5月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:イスラマバード
- ポジション:薬剤師
- 派遣期間:2014年1月~2014年7月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:マバン
- ポジション:薬剤師