海外派遣スタッフ体験談

医療物資の効率的な使用をマネジメント

榊原 英朗

ポジション
薬剤師
派遣国
南スーダン
活動地域
マバン
派遣期間
2014年2月~2014年7月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

世界には、人間として当然受けられるはずの医療や教育が受けられず、人間らしい生活ができない国がまだまだたくさんあり、そのような国に生まれた人びとは、どれだけ努力しても自分のなりたいものになる機会すら与えられない現実があります。

その現実と自分の国の間にギャップを感じていたなか、職場の同僚からMSFの活動を聞き、感銘を受けました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

英会話教室、英会話サークル、インターネット等で英会話の練習をしていました。語学の勉強以外に、他団体で海外ボランティアに参加して、人道援助の実際の活動やその難しさ、日本との文化や生活様式の違い等を肌で感じ、派遣に備えました。

Q今までどのような仕事をしてきましたか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

今までは、病院薬剤師として仕事をしてきました。MSFの派遣先では、薬はすべて一般名で取り扱います。日本でも、ジェネリック医薬品が普及する中で一般名の処方箋を見ることが多かったので、この点では特に苦労はしませんでした。

派遣先では薬以外に医療器具等の管理にも携わります。日本の職場では実際に取り扱うことはなく、見て知っている、という程度でしたが、派遣前に少しでも知っていてよかったと思いました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
予防接種キャンペーンにむけ現地スタッフのトレーニングを行った 予防接種キャンペーンにむけ現地スタッフのトレーニングを行った

難民キャンプに住む約4万8000人の難民のために外来診療、入院診療、産婦人科ケア、栄養治療、心理ケアを供給するプログラムでした。

海外派遣スタッフの数は、治安状況によって増減しましたが、最大で約25人。現地スタッフは約150人いました。疾患としては下痢、マラリア、E型肝炎、栄養失調、肺炎などがありました。

MSFが運営する施設は、難民キャンプの1次医療センターと3つの診療所で、その他、保健省が運営する病院の外来部門を担当していました。

これらの施設で使う薬や医療器具等は、首都ジュバにあるMSFの倉庫から3ヵ月に1回送られてきます。私の仕事は、状況が頻繁に変化する中で、送られてきた医療物資を効率的、効果的に使うようマネジメントすることでした。

具体的には、期限切れの薬の管理、棚卸し、過剰在庫・不動在庫の管理、管理ソフトを用いた各部署からのデータ等の解析結果に基づく問題の提起、首都にあるMSFの倉庫への注文作成等の在庫管理、薬剤部内のミーティング、薬を保管する冷蔵庫の温度管理、新しく現地入りする海外派遣スタッフのための、薬と医療機器に関するブリーフィング等、多岐にわたります。

特に乾期は日中の気温が40度を超える厳しい環境なので、医療物資の品質を確保するために保管方法を考えたり、白アリ被害を減らす方法をロジスティシャンと共に考えたりしました。

薬剤管理を担うスタッフや薬局スタッフなどの現地スタッフは、多くが医療従事者としての免許を持っておらず、海外派遣薬剤師の重要な役割として、彼らに薬を安全に使ってもらうよう在庫管理のトレーニングをしたり、彼らに合わせた薬と医療材料の管理方法を提案したりもしていました。ワクチンや緊急用の食糧においては、ほかのNGO団体と互いに連携して確保に努めることもありました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
同僚とスラックスラインで気分転換 同僚とスラックスラインで気分転換

状況の変化が目まぐるしく、その都度、物事の優先順位が変わっていましたが、朝8時から夜7~8時くらいまで働いていました。また、土曜日は午前中のみ働くことになっていましたが、業務が忙しく、なかなか休むことができませんでした。

勤務外の時間は同僚たちとランニング、ヨガ、スラックライン(写真)、ガーデニング、映画、料理等を楽しんでいましたし、同僚とこのような時間を過ごしてから、残業に戻ることもありました。現地では、こうした気分転換が重要だと思います。

Q現地での住居環境についておしえてください。

MSFの活動敷地内に居住区域があり、テントか、土壁とわらぶき屋根でできたトゥクルかどちらかを選ぶことができ、私はトゥクルに住んでいました。テント、トゥクル内にはベッドと机と扇風機がありました。

シャワーは水シャワーですが、昼間の気温が高いので水も30度くらいになり、冷たくはなかったです。

皆が集まるダイニングにはWi-Fiもあり、メール、スカイプなどで友達や家族などと連絡はとれました。

食事は現地スタッフが作ってくれますが、気分転換したい時は自分たちでも料理していました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

産婦人科のテントでたまたま出産現場を見ることができた時、とても感動し、改めて命の価値はどこの国でも等しくあるべきだと思いました。

治安状況の変化に伴い、外出ができない場合もあり、ストレスを感じていましたが、私が活動を終え現地を去ったすぐ後に、さらに治安状況が悪化したことを聞き、改めて、国の状況が依然不安定であることを実感しました。

Q今後の展望は?

熱帯地域の疾病について更に勉強したいです。また、MSFが主催するトレーニングにも参加して、次の活動参加に備えたいと思います。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

活動中は一人ひとりが専門家として、お互い意見を交換し、困難を一つひとつ解決していきます。予想外のことや思うように物事が進まないことがよくありますが、やりがいのある仕事だと思います。
頑張ってください!

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