海外派遣スタッフ体験談
経験豊富な現地スタッフと協力して働く
榊原 英朗
- ポジション
- 薬剤師
- 派遣国
- パキスタン
- 活動地域
- イスラマバード
- 派遣期間
- 2015年2月~2015年4月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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前回の南スーダンの派遣活動で仕事や環境に慣れるのに時間がかかり、改善したかった事などが自分の派遣期間内に実行できなかったため。また、前回の経験を活かしてプログラムに貢献し、薬剤師としての自分の視野を広げたかったため、再び参加しようと思いました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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元々働いていた病院で業務に従事しつつ、MSF日本や他団体が主催するトレーニングに参加しました。語学力については英会話サークルに参加したり、インターネットの英会話レッスンを受けたり、TOEIC試験を受けたりと、できるだけ毎日、英語に触れるように心がけました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
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今回、パキスタンではしかの予防接種活動を行いましたが、その際、前回の南スーダンで既に経験済みだったため、全体の流れを考えながら業務ができました。現地スタッフに対してコールドチェーン(低温輸送システム)管理のトレーニングを実施した際も、前回の経験が役に立ちました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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イスラマバードの倉庫から医療物資を供給
私たちのチームは首都イスラマバードを拠点に、2つの地方プログラム(カラチとティムルガラ)を運営していました。パキスタンへ輸入した医薬品はいったんイスラマバードで検閲を受けねばならないため、MSFはイスラマバードに倉庫を持ち、そこから地方プログラムに対し医療物資の供給を行っていました。
パキスタンは薬の輸入に関して多くの制限があります。輸入が制限されているにも関わらず、どうしても必要な医薬品については医薬品規制局(DRA=Drug Regulatory Authority)に輸入の許可をもらわなければなりません。医薬品の検閲を通したり、輸入が制限されている医薬品の輸入の許可を取ったりすることも薬剤師の業務のひとつでした。
カラチではスラム地区の住人を対象とした病院を運営しており、一般診療のほか、C型肝炎のプログラムやはしかの予防接種活動も実施していました。アフガニスタンとの国境に近いティムルガラでは保健省の病院を支援しており、救急、産科、小児科の対応が主な活動でした。
私の仕事は、これらの地方プログラムの拠点を訪れ、現地の薬剤師や薬局マネジャーをサポート、指導し、薬品の安定供給と適正使用を確保することでした。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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宿舎内に設置されたジムでリフレッシュ
朝8時からミーティングに参加し、治安状況や、各部署の業務の進展状況をアップデートしました。その後、メールや電話にて各プログラムや本部からの報告や連絡を確認し、薬を保管している倉庫に行ったり、事務所で在庫管理の資料を作成したり、MSFが運営している病院を訪れて、薬剤部のスタッフとミーティングしていました。
特に物資供給を担当しているサプライ・チームは医療物資を保管している倉庫を管理し、各プログラムへの運送を担当していたため、彼らとは頻繁にミーティングを行いました。
自由時間は宿舎の中にあるジムで運動したり、同僚と買い物に行ったりしました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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宿舎の屋上から見える夕日
MSFが借り上げた一軒家を同僚たちとシェアしていました。各部屋にシャワー、トイレ、机がありWi-fiも使えたので、住環境はかなり快適でした。
しかし、セキュリティー・ルールは厳しく、人がたくさんいる繁華街へ行くことは禁止されていました。徒歩での移動は禁止されており、移動はすべて自動車で送迎され、買い物やレストランも店の前まで自動車で移動しなければならず、散歩やジョギングですら公園までわざわざ自動車で移動しなければならなかったので、そういったストレスはありましたが、このセキュリティー・ルールのおかげで安全に過ごせたのだと思います。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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経験豊富な現地スタッフとともに
MSFのパキスタンでの援助活動は1986年から始まりました。プログラムは状況によって新しく始まったり、終了したりしていますが、長年にわたり援助し続けています。このため、MSFで長年働いている経験豊富な現地スタッフもおり、彼らが未経験の事を始める時も、ポイントを教えるだけでできるようになるので、「仕事を一から教える」というよりは、「共に協力して働く」という感覚が強かったです。
また、パキスタンはイスラム教が主な宗教です。1日5回のお祈り、服装、禁酒など、日本の文化と大きく異なる部分はありますが、家族、友人や同僚の事を自分の事以上に気にかける姿勢は、どこか日本人と通じる部分があると感じ、仕事の話以外にも日本とパキスタンの文化などについて話し合い、学ぶことがたくさんありました。
- Q今後の展望は?
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7月からネパールへの派遣が決まったのでそれに向けての準備をします。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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MSFの援助活動は現地の困っている人びとのためにありますが、海外派遣者自身も活動から得るものがあり、参加して初めて気付くこともたくさんあります。大変なこともありますが、諦めずに一歩踏み出してみて下さい。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2014年2月~2014年7月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:マバン
- ポジション:薬剤師