海外派遣スタッフ体験談

患者さんの笑顔が何よりの喜びに

大滝 潤子

ポジション
手術室看護師
派遣国
南スーダン
活動地域
アウェイル
派遣期間
2013年12月~2014年3月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

初回派遣時から、MSFでの活動に強い生きがいを感じていました。また自身の知識や経験値を向上させ、さらにMSFの派遣を通して活動を継続したいと思っていました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

前回の派遣から帰国後、休養をとっていましたが、しばらくするとまた次の国に行って働きたいとうずうずし始めたので、MSFと連絡をとりつつ、今後の派遣で必要になりそうなフランス語の勉強を始めました。

派遣が思うように決まらなかった間はアルバイトでもしようかと考えましたが、とにかく次の派遣が来ると信じ、今後の展望を考えつつ3ヵ月ほど待っていました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

過去のMSFの活動で自分が思うように発言できなかった、また行動に移せなかった反省点を踏まえ、今回の派遣に臨みました。過去の反省点は常に頭の中にあったので、それを繰り返さないよう自分のなかで目標を据えて活動できたのが、前回より向上した点ではないかと思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
手術室で、現地の手術室スタッフと 手術室で、現地の手術室スタッフと

南スーダンで2013年末に発生した武力衝突により、緊急援助要請があり、私は外科チームの一員として南スーダン入りしました。

当初は首都のジュバで、どのように、またどこで外科活動ができるかなどのアセスメント要員として参加する予定でしたが、なにしろ緊急の状況で変化も多く、首都に着き次第、同国内の別の場所で活動するよう指示がありました。

翌日到着したアウェイルでは、MSFは5年前から産婦人科・小児科プログラムを開始しており、現地の保健省とMSFが1つの病院と敷地をシェアし、助け合いながら、かつ各々で活動を行っていました。

この国の緊急下の状況に対応するべく、紛争で傷ついた患者さんも受け入れられるように、以前からのプログラムを継続しつつ手術室のセットアップをするのが私の主な役割でした。

チームは、プログラム責任者、医療チームリーダー、ロジスティシャン、緊急要員として入っていた外科医、また数名の看護師という小さなチームで、役割を分担しながら活動していました。

幸いにも、私が活動していた2ヵ月の間に、紛争での被害者を受け入れるという状況にはなりませんでしたが、プログラムの要である産褥(さんじょく)期の方や婦人科系疾患の患者さんへの医療提供、また小児では主に外科的治療を必要とする火傷、膿瘍のケア、現地スタッフへのトレーニングや、現地スタッフの包括的指導をどのように行っていくべきかなど、現地のスーパーバイザー(責任者・監督者)への指導も行いました。また、手術室と外来、病棟とのコミュニケーションの向上にも努めました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
手術室スタッフへ清潔操作のトレーニングを行う筆者(左) 手術室スタッフへ清潔操作のトレーニングを行う筆者(左)

私は手術室勤務でしたので、午前は9時から症例対応が始まるのに備えて8時には出勤し、現地スタッフとのミーティング、調整、手術サポートやスタッフ指導などを行っていました。また午後は忙しい中でも時間が空けば、現地スタッフへのトレーニングを主に行っていました。

午後7時から8時には住居に帰りますが、夜間は緊急の症例に備えて常に待機で、呼び出されれば病院にかけつける、という生活をしていました。また、私がプログラムに参加した当初は、治安上、徒歩での外出ができませんでしたが、後半は出歩けるようになりましたので、週1回は休日をとるように心掛け、同僚とマーケットに行ったり、料理を作ったりして息抜きをしていました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

アフリカ様式のトゥクルというプライベート・ルームが与えられ、キッチン、シャワー、トイレは共同でした。野外に広い共用スペースもあり、同僚と気軽に談話できるとてもリラックスした空間で生活していました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
患者の子どもたち、その家族と 患者の子どもたち、その家族と

私は手術室マネジャーを担っていましたが、私を最後に、以降は手術部門を現地のスタッフに引き継ぐため、現地スーパーバイザーへ指導を行い、今後のトレーニング・スケジュールをたて、効率よく引き継ぎをしていくことが最終目標でした。

しかし、毎日の多忙なスケジュールの中での業務は、現地スタッフとのテンポが合わずに苦労した場面もありました。派遣期間の終了が近づいてきたときには、さすがに焦りも生じましたが、同僚の協力と現地スタッフの努力の甲斐もあり、無事に終えることができました。

また、特に印象に残っているのは、多忙な中でも微笑みを絶やさなかった外科チームの同僚です。現地の子どもたち(患者さん)やその母親たちとの心温まる交流も心に残りました。

Q今後の展望は?

現在は、長崎で熱帯医学のコースをとっていますので、今後は手術室勤務以外でも、その知識が還元され役立てられるようなプログラムであれば、積極的に参加したいと思っています。まだまだ、MSFと一緒に働きたい気持ちでいっぱいです。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
医療を必要とする人びとへの援助に、大きなやりがいを感じる 医療を必要とする人びとへの援助に、
大きなやりがいを感じる

少しでも海外医療援助に興味のある方、また国境なき医師団の参加に興味のある方、勇気をもってチャレンジして下さい。

もちろん、楽しいことばかりではありません。必要とされる地域での、医療を必要としている方たちへの援助には、現地の状況を理解しつつ、その過程でつらい思いもすると思います。しかし、患者さんの笑顔を見たとき、それが何よりの喜びに変わると、経験上心から感じています。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2013年8月~2013年10月
  • 派遣国:ヨルダン
  • プログラム地域:ラムサ
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2012年11月~2013年7月
  • 派遣国:イラク
  • プログラム地域:ナジャフ
  • ポジション:手術室看護師

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