海外派遣スタッフ体験談

道なき道を行き、現地の状況を知る

田村 美里

ポジション
医療チームリーダー
派遣国
コンゴ民主共和国
活動地域
シャブンダ
派遣期間
2013年3月~2014年1月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

援助を必要としている人がいるから、でしょうか。タイミングや、現地で必要なポストがあればいつでも、という感じです。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

前回の活動の疲れをとる、というのが一番です。特に精神的な疲れをとることは、モチベーションを保つためにとても重要だと思っています。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

さまざまな派遣経験を経たことで、どんな環境にでもすぐに適応できる、といった点でしょうか。自分としては特にすばらしいことをしているわけではなく、普通に活動しているつもりです。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
MSFは2つの町に拠点を置いて医療を提供した。 MSFは2つの町に拠点を置いて医療を提供した。

基礎医療と二次医療の提供を目的とした活動でした。

MSFはシャブンダとマチリという2つの町に拠点を置き、それぞれの町で現地の保健当局が運営する2つの病院と、地域7つの診療所をサポートしている巨大プログラムでした。

プログラムの規模に対してスタッフの数が少なく、海外派遣スタッフが9人(特にこの数が少なかったです)、現地スタッフは約80~90人でした。

2つの町のうち主要拠点となるシャブンダでは、大きな病院と2ヵ所の診療所をサポートし、アドミニストレーションとロジスティックや物資供給の業務を行っていました。

拠点地から拠点地へ、物資を移動するスタッフ。 拠点地から拠点地へ、物資を移動するスタッフ。

もうひとつのやや小さい拠点の町、マチリでは、小さな病院と5ヵ所の診療所のサポートを行っていましたが、マチリの活動専門のアドミニストレーションとロジスティックのチームがいました。

現地で多い主な症例といえばマラリアです。特に2013年はマラリアが大流行し、MSFの病院にも多くの患者がやってきました。

病院では、マラリアで小児科へ入院する子どもが例年の3倍に増え、また病院や診療所のマラリア外来患者も2~3倍に増えていました。マラリアの重症例の1つが貧血ですが、輸血の件数も劇的に増加していました。

私は、医療チームリーダーとして医療スタッフを取りまとめる役割を担いました。医療チームは、内科医と産婦人科医、私のほかに看護師がシャブンダとマチリに1人ずついました。MSFは直接診察を行うのではなく、現地医師のサポートをし、指導やトレーニングを担当しました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

シャブンダでは勤務時間は基本的には月~金曜の午前8~午後5時ですが、結局、毎日残業で土曜日も働き、労働条件は前回のブルンジ、前々回のコンゴ民主共和国での活動よりもきつかったです。

マチリでは主な活動が移動診療なので、朝が早く、朝6時半や7時出発は当たり前のことでした。その分、私としてはマチリでは残業は極力しないようにしていたのですが、シャブンダの勤務が上記のような感じなので、なかなかそれもままならず…。

毎週金曜日は午後7時には仕事をきりあげてほかのスタッフと出かけたりしました。日曜は何もせず寝るとか、本を読むとか、映画を観るとか、散歩などもしていました。人によってはランニングとかサッカー、料理をする人もいました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

トイレは家の中にはなく外にあり、もちろんボットン式です。足腰が鍛えられます。シャワーはもちろんないので、シャワー・スペースでバケツとコップを使って水浴び状態です。お湯を使いたい人は前もって沸かしておかなければいけないので、ちょっと面倒です。

電気が町に通っていないので、MSFがジェネレーターとバッテリーを用意し、最低限の明かりや携帯、コンピューターの充電などは問題なくできていました。

私が現地に到着した当時から2ヵ月間ぐらい、部屋の数が足りない!という問題がありましたが、その間は短期滞在のスタッフがシェアをしたり、一時は居間にベッドを置いて寝ていた人もいました!長期に活動するメンバーには、基本的には個室がありました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
陸路の移動は道なき道を行く。 陸路の移動は道なき道を行く。

治安の問題や、道路がない!などの理由で、これまで参加してきた活動では陸路の移動があまりなかったのですが、今回、同じような状況が考えられるコンゴ民主共和国という国にいながらも、陸路移動が多かったです。

調査・情報収集のため1週間のバイクの旅をした時はきつかったけれど、終わってみればいい思い出になりました。初めて行く土地で、まったく面識のない病院や診療所のスタッフから情報収集し、現地の一般的な医療状況を見て、ニーズの高さにちょっとびっくりもしました。

バイクで移動し、現地の医療ニーズを調査する。 バイクで移動し、現地の医療ニーズを調査する。

寝るところをその日に探し、丸太を2~3本通しただけの橋(?)を渡らなければならなかったり、1日中バイクの移動だったり(午前6時~午後7時、ずっと移動でお尻が痛くなりました)、食事に猿の肉が出てきたり…なかなかできない体験をさせてもらいました。

周りのスタッフにとても恵まれていたおかげで、バイクの旅は無事に終わりました。そして同時に、医療チームだけでは実行不可能な活動だったな、と実感しました。特にロジスティック・チームのサポートを強く感じました。

Q今後の展望は?

必要があれば、いつでもどこでも、活動に参加したいです。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
異文化のなかでチームと協力しあって働く。 異文化のなかでチームと協力しあって働く。

違う文化の国で、違う文化の人たちと一緒に働き、なおかつ生活するのですから、いろいろなことがあります。正直「ありえない!」と腹の立つこともあります。でも、楽しいこともあります。

MSFは普通の人の集まりです(ある意味、個性的な人は多いですが…)すばらしい人じゃないとできないことでは、全然ありません。普通の人が協力しあって活動しています。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2012年3月~2013年1月
  • 派遣国:ブルンジ
  • プログラム地域:ギテガ
  • ポジション:プログラム責任者
  • 派遣期間:2011年10月~2012年1月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:キンサシャ
  • ポジション:副医療コーディネーター
  • 派遣期間:2010年11月~2011年7月
  • 派遣国:ソマリア
  • プログラム地域:ソマリランド・ブラオ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2010年1月~2010年7月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ニャンガラ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2009年5月~2009年11月
  • 派遣国:中央アフリカ共和国
  • プログラム地域:バタンガフォ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2008年8月~2009年1月
  • 派遣国:スーダン
  • プログラム地域:カグロ
  • ポジション:助産師/看護師
  • 派遣期間:2007年8月~2008年6月
  • 派遣国:ニジェール
  • プログラム地域:ダコロ
  • ポジション:助産師/看護師
  • 派遣期間:2007年2月~2007年6月
  • 派遣国:チャド
  • プログラム地域:イリバ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2006年3月~2006年12月
  • 派遣国:コートジボワール
  • プログラム地域:ビヌイエ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2005年5月~2005年11月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ブニア
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2004年2月~2004年5月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ブニア
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2003年5月~2003年11月
  • 派遣国:ブルンジ
  • プログラム地域:マカンバ
  • ポジション:助産師

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