海外派遣スタッフ体験談

交渉業務の難しさも実感、難民キャンプの医療提供

松本 明子

ポジション
コーディネーター
派遣国
タンザニア
活動地域
キゴマ、ニャルグス、ンドゥタ
派遣期間
2016年4月~2016年6月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

緊急援助プロジェクトで、英語だけでなくフランス語を話す機会があるプロジェクトだったから。緊急援助なので、自分の都合のよいタイミング、ということでは考えていませんでした。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

イエメンでの活動を終えて1ヵ月後なので、とくに準備はしていません。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

はじめての医療コーディネーターのポジションでしたが、以前に副医療コーディネーターや病院マネジャー、医療チームリーダーなどのポジションを経験していたので、それが役にたちました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
難民キャンプで水を汲む子どもたち 難民キャンプで水を汲む子どもたち

タンザニアにある、ブルンジ人難民のための複数のキャンプでの医療活動です。ここでは、医療コーディネーターと医療チームリーダーの両方の業務をカバーしました。7週間だけの活動でした。

MSFで直接プロジェクトを運営している5つのオペレーション・センター(※)のうち、私は今回、スイス事務局のプロジェクトの活動でした。医療コーディネーターとしては、スイス事務局だけでなく、オランダ事務局が運営するプロジェクトの海外派遣スタッフの健康管理を担ったほか、スイス事務局が運営している2つのプロジェクトのサポート、コーディネーション機能をタンザニア最大の都市ダル・エス・サラームに移すための薬局管理、ロジスティック・コーディネーターや活動責任者との意見交換などです。

診療所にやってきた親子 診療所にやってきた親子

ニャルグス難民キャンプのプロジェクトは、ブルンジ人難民だけでなく、長期にわたるコンゴ難民との兼ね合い、ほかのNGO団体や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との兼ね合いなど、かなり政策戦略を交えての話し合いを行いました。

また、スイスの運営事務所との連携や意見交換、新しいプロジェクトを立ちあげるための準備や、緊急フェーズから通常フェーズへの移行期間であるため、運営予算に関しての提案と意見交換も行いました。

海外派遣スタッフは45人、現地スタッフはタンザニア人、ブルンジ難民、コンゴ難民など、500人ほどでした。

  • オペレーション・センターはフランス、オランダ、スイス、ベルギー、スペインの5ヵ国にあり、活動地での医療援助活動を運営している
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

夕方5時以降は安全上の規定で難民キャンプに入れないため、業務の時間が十分とれるよう、朝7時には難民キャンプに出発します。医療コーディネーターと医療チームリーダーという、コーディネーターのポジションを担っているため、ほとんどの時間が、コンピューターと携帯電話に向かっているか、またはミーティングのために移動していました。

キャンプから離れた場所にあるコーディネーション事務所にいるときは、事務所で過ごすか、ミーティングに出かけるか、でした。ただ、2つの難民キャンプを隔週移動していたため、事務所よりフィールド(難民キャンプ)にいる時間がほぼ90%と多かったと思います。

勤務外は、スラックスライン(綱渡り)をしたり、小さなマーケットでパイナップルやアボガドを買ったりもしました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

緊急援助プロジェクトのため、ホテルを貸し切っていました。コーディネーション・チームは、ほかのNGOと住居を共有する形で生活していました。ニャルグスでは地域に電気が通っていないため、発電機のみで電気を確保していました。夜11時以降は、電気なしです。インターネットもつながりが悪かったです。ンドゥタでは電気が通っていて、インターネットの環境もよかったです。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
診療所は難民、地元民の区別なく受け入れる 診療所は難民、地元民の区別なく受け入れる

スイスのプロジェクト運営本部との意見交換は、たやすくないと感じました。医療コーディネーターとしては、プロジェクトをサポートしたいのに、運営本部の考えと食い違うと説得するのにかなり時間と能力を使います。また、MSFはMSFのやり方があるため、ほかのNGOや国連への主張もしなくてはいけません。

難民を対象としたプロジェクトですが、MSFは難民以外にも搬送患者を受け入れています。MSFだからこそタンザニアの地元の患者に対しても何かできる、というのが印象に残りました。

3歳のタンザニア人の女の子が難病を患っていて、ダル・エス・サラームでないと治療できないという診断をMSFの病院で告げられました。MSFとしてどこまでできるのかを運営本部と話し合い、検査に対する費用(検査と移動費)をMSFがカバーすることになりました。今回の緊急援助プロジェクトではブルンジ人難民を対象にしていること、またガンなどの病気はMSFでは限りがあるため、検査のみサポートするということです。

がん治療であればタンザニア人は無料で治療を受けられますし、それ以外の病気はチャリティー団体の支援を受けられるチャンスがあるため、この女の子の両親が検査を受けるために8時間かけて移動するかどうかを決断しなくてはいけません。そのプロセスを、私の活動期間が終わりタンザニアを離れる直前まで実施して、次の医療コーディネーターが到着するまでの2週間、運営本部に引き継ぎをしました。

医療コーディネーターが通常はほとんどいないプロジェクトのため、各所に、医療コーディネーターがいて、カウンターパートとして話ができる、という主張をするのにかなり苦労しました。

Q今後の展望は?

フランス語圏の活動に参加することと緊急援助プロジェクトに参加し続けること。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

やりたいと思ったことは、チャンスがあればやったほうがいいです。自分のスタイルを変える必要はなく、合わせる必要もありません。援助の恩恵を受ける人びとのことを考えて活動するのみです。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2016年4月
  • 派遣国:日本
  • 活動地域:熊本
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2015年10月~2016年3月
  • 派遣国:イエメン
  • 活動地域:タイズ
  • ポジション:病院マネジャー
  • 派遣期間:2015年4月~2015年5月
  • 派遣国:ネパール
  • 活動地域:アルガト
  • ポジション:看護師/医療コーディネーター代理
  • 派遣期間:2014年10月~2015年3月
  • 派遣国:パプアニューギニア
  • 活動地域:湾岸州ケレマ
  • ポジション:プロジェクト・コーディネーター
  • 派遣期間:2013年11月~2014年5月
  • 派遣国:フィリピン
  • 活動地域:レイテ島
  • ポジション:看護師/プログラム責任者/副医療コーディネーター
  • 派遣期間:2013年9月~2013年10月
  • 派遣国:フィリピン
  • 活動地域:ミンダナオ島サンボアンガ
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2012年12月~2013年6月
  • 派遣国:南スーダン
  • 活動地域:上ナイル州マバン
  • ポジション:医療チームリーダー/看護師
  • 派遣期間:2012年8月~2012年9月
  • 派遣国:フィリピン
  • 活動地域:マニラ
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2011年11月~2012年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • 活動地域:ソコト州ゴロニョ
  • ポジション:栄養リサーチ・コーディネーター
  • 派遣期間:2011年1月~2011年9月
  • 派遣国:ウガンダ
  • 活動地域:カボング県
  • ポジション:フィールド・リサーチ・コーディネーター
  • 派遣期間:2010年2月~2010年10月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • 活動地域:ソコト州ゴロニョ
  • ポジション:看護師/医療物資在庫管理担当
  • 派遣期間:2009年5月~2009年10月
  • 派遣国:インド
  • 活動地域:ビハール州ビラウル
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2009年1月~2009年3月
  • 派遣国:南スーダン
  • 活動地域:西エクアトリア州ヤンビオ
  • ポジション:看護師

活動ニュースを選ぶ