新型コロナウイルス:イエメンの避難民キャンプ、一時中断していた移動診療を再開

2020年10月14日掲載

避難民キャンプで暮らす人びとの健康相談に応じるMSFの医療スタッフ © Tareq Farhan/MSF避難民キャンプで暮らす人びとの健康相談に応じるMSFの医療スタッフ © Tareq Farhan/MSF

9月下旬、イエメン北西部のハッジャ県アブス地区にあるフーディシュ避難民キャンプのもとへ、国境なき医師団(MSF)の移動診療が数カ月ぶりに戻ってきた。人びとが集まり始め、子どもたちは貯水容器を積んだ車に向かって走り出す。

イエメンでは5年に及ぶ内戦で国が荒廃し、住まいを追われた約15万人もの避難民がアブスへとやってきた。最低限の医療さえ受けられず、生活必需品や食料、飲み水の確保さえ難しいという過酷な環境で暮らす人びとのため、MSFは2015年から活動を開始し、避難民のニーズへの対応および保健医療施設への支援を実施している。

しかし今年に入り、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の影響で、移動診療チームが避難民キャンプに近づくことが困難に。わずかながら続いていた人道援助も途絶え、人びとはさらに厳しい生活を強いられていた。

移動診療チームによる医療を再開、しかし……

9月になり、MSFはアブス地区の避難民を対象に、移動診療チームによる医療援助を再開。フーディシュ、バニ・ムシュタ、アルマタインという3つのキャンプでは、5歳未満の幼い子どもと妊婦を中心に約300件の診療を実施し、またマラリアの検査や血糖値の測定なども行った。

一方、MSFが支援するアブス病院では、新型コロナウイルスが特に流行していた一時期に比べて来院する患者の数が増加したものの、コロナへの感染を恐れるあまり、受診が遅れて病状を悪化させてしまう人が多くいたという。

マラリアの検査を受ける女性。必要に応じて血糖値の測定や妊娠検査も行う © Nuha Haider/MSFマラリアの検査を受ける女性。必要に応じて血糖値の測定や妊娠検査も行う © Nuha Haider/MSF

受診の遅れによって病状が悪化

病気が重症化し、病院へと搬送される患者は栄養失調であることが少なくない。アブス病院から20キロほど離れたアスラム地区からやってきた生後9カ月の女の子アル・アヌードちゃんもそのひとりだ。父親は生活費を稼ぐため羊の世話をしなければならず、母親は妊娠中で移動が難しかったため、祖母に付き添われて受診した。

「最初は地元の小さな診療所に孫を連れて行きましたが、そこでは十分な治療を受けられず、アブス病院に移されることになりました。ひどい栄養失調と敗血症、そして肺炎の治療まで受けています。まだ入院中ですが、この6日の治療で、少しずつ良くなっています」

祖母は続ける。「ここまで来るのに3時間かかりました。移動には仕方なく個人タクシーを使いましたが、とてもお金がかるんです。バスに乗ろうにも、徒歩で山を越え、幹線道路まで出てからさらに待ち続けなければなりません。それでは、あの子の身体がもたなかったでしょう」

アブスでMSFプロジェクト・コーディネーターを務めるパウロ・ミラネシオは語る。「栄養失調は珍しいことではありませんが、新型コロナウイルスの流行が始まってからは重症化する傾向が高くなっています。特に子どもの患者は、親が病院に行くかどうかを決めかねている間に容体が悪化してしまうのです」

栄養失調に限らず、どのような病気でも重症化してからでは治療がより困難になる。MSFは病院に来ても大丈夫だということを周知し、医療を必要とする人が早めに受診することができるよう、今後も活動を続けていく。

移動診療を訪れた人たち。待ち時間もソーシャルディスタンスの確保に努める © Nuha Haider/MSF移動診療を訪れた人たち。待ち時間もソーシャルディスタンスの確保に努める © Nuha Haider/MSF

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