イエメン:爆撃に遭った病院の現状——MSF活動責任者の報告

2016年01月19日
爆撃で破壊されたシアラ病院 爆撃で破壊されたシアラ病院

イエメン北部のラゼーにあるシアラ病院が爆撃された事件で、亡くなった人は2人増えて計6人、となり、7人が今も治療を受けている。イエメンの紛争は10ヵ月にもわたっており、これまでに少なくとも130軒の病院・診療所が爆撃に遭っている。イエメンで国境なき医師団(MSF)の活動責任者を務めるフアン・プリエトに現地の状況とMSFの取り組みについて聞いた。

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爆撃で負傷した人びとの状況について教えてください。

被害者に適切な治療を手配することが、MSFの最優先課題でした。当初、負傷者は8人とみられており、重体の5人を、サアダ市内でMSFが支援している病院へ搬送しました。そのうち1人は専門治療が必要で、首都サヌアに搬送されています。サアダでは昨日、残念ながら1人が息を引き取りました。せめて他の患者が速やかに回復することを祈っています。

爆撃について新たなことはわかりましたか。

引き続き全容把握に努めている段階です。爆弾は病院の出入り口を直撃しました。ここは前回もこの病院に対して行われた攻撃によって破壊されていた場所でした。爆発時の衝撃で破片が飛び散り、人びとの命を奪い、重傷を負わせました。

病院での現状について教えてください。

住民は病院が標的になっていると感じ、できるだけ避けようとしています。運ばれてくるのは、急患か多数の負傷者だけです。

爆撃に遭ったあと、救急処置室、容体を安定させる措置、搬送体制はそれぞれ再開することができました。現在は母子保健・産科医療の再稼動に向けて努力しています。病院内ではスタッフ数を減らし、救急医療に集中しています。

ただ、シアラ病院は2015年、3回も爆弾の直撃を受けました。もはや危険な場所とみなされています。それでも、スタッフは不安を抱えつつも職場に復帰しています。国内の状況とラゼーのニーズを見て、医療を受けられなくて苦しんでいる人びとのために活動を続けようと、さらなる決意を固めています。

医療施設が攻撃されている状況下で、どのようなことが起きていますか。

これまでに少なくとも130軒の医療施設が、地対空ミサイルや空爆など紛争の直接的な影響を受けています。その結果、ラゼーでは、病院が混乱状態となって閉鎖に追い込まれたり、診療が中断したりしています。

現地にはどのようなニーズがみられますか。

この地域に暮らす約12万人は、なによりもまず保護を求めています。この辺りは山岳地帯で、住民は洞窟に避難し、そこで寝起きしています。日中に一時帰宅し、建物が残っているかどうかを確認している状況です。常に、殺されるかもしれないと恐怖を抱えて生活しているのです。

ただ、ラゼーは資源が豊富なこともあり、生活基盤が概ね整っています。その点では、イエメンの他地域とは状況が異なっています。他地域では食糧や水を得ることさえ難しく、子どもに食べさせる物さえ手に入らないため、栄養失調が脅威となっています。一方、ラゼーでは、栄養失調よりも紛争そのものが現実的な脅威です。

当面の目標はどのようなものでしょうか。

平時の状態を取り戻すことです。病院で活動するチームの増員、診療の質の向上、より多くの人が健康管理を受けられる体制作り、地域の患者や住民にとって身近であり続けることを目指しています。

同時に、今回の爆撃が起きた状況について明確に把握し、必要であれば責任の所在を明らかにし、スタッフの安全確保に努めます。

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