15歳で母になった少女。10代の妊娠率が極めて高いベネズエラで必要とされる医療とは

2020年08月20日
生後4カ月の息子を抱くベロニカさん(15歳) © Adriana Loureiro Fernandez/MSF
生後4カ月の息子を抱くベロニカさん(15歳) © Adriana Loureiro Fernandez/MSF

 ここはベネズエラ北部のアンソアテギ州。国境なき医師団(MSF)は、国の医療当局、そして近隣の学校を経営する団体であるフェイ・アレグリアと協力し、2018年11月からアミーゴス・パラ・ラ・サルードゥという診療所を運営している。

ベネズエラにおける政治・経済危機は、この国の医療体制に大打撃を与えた。多くの地域で、人びとが満足に医療を受けられない状況が続いているが、特に深刻な影響を受けているのが、若者や子どもたちだ。

10代の母親に手厚いサポートを

「ベネズエラでは10代の若者の妊娠率が極めて高く、近年ではその傾向がさらに顕著になっています。避妊具や薬などが手に入らないことや、お金がなくて購入できないことが主な理由です」そう語るのは、アミーゴス・パラ・ラ・サルードゥ診療所で医療コーディネーターを務めるマガリ・グティエレス。

診療所に通う妊婦のうち、3分の1近くが10代の若者であるという状況に対応すべく、MSFはこの年代への診療にひときわ力を入れている。

無償で医療や心のケアを提供する診療所には、大勢のティーンエイジャーが定期的に通院する。エルビドーニョ村近くの集落で、祖母と4カ月になる息子とともに暮らすベロニカ・アレハンドラさん(15歳)もその一人だ。 

MSFの診療所で息子の予防接種を受ける<br> © Adriana Loureiro Fernandez/MSF
MSFの診療所で息子の予防接種を受ける
© Adriana Loureiro Fernandez/MSF
「妊娠が分かったとき、家族は『母親になるには若すぎる』と言って喜んでくれませんでした。でも生まれてくる赤ちゃんのことを思うと、4年前に母が亡くなって以来、久しぶりに幸せな気持ちになれたんです。
 
妊娠してしばらくの間、病院には行きませんでした。エコー検査を受けることを考えると不安だったし、何よりうちにはお金がなかったから。
 
でも妊娠5カ月になった頃、近くに無料で治療を受けられる診療所が開院したと妹が教えてくれたので、初めて妊婦検診を受けたんです。エコー検査で赤ちゃんの様子も知ることができました。
 
この子が生まれてからも、病気にかかったときや、予防接種を受けるときには診療所に通っています。いつ、何の予防接種を受けなければならないかを書いた紙をもらったので、忘れないように冷蔵庫に貼ってあるんですよ。
 
家族計画サービスでは、普段からピルを飲んできちんと管理しておくことが大切だと教わりました。そうすれば、赤ちゃんが欲しいかどうかは自分で決められるから。
 
私を含め、ここに通う女性たちはみな、MSFの診療所にとても感謝しています。治療や相談が無料でなければ、到底通うことはできなかったと思います」

誰もが必須診療を受けられるように

アミーゴス・パラ・ラ・サルードゥ診療所で、MSFは性暴力の被害者を対象とした一次医療、産前産後ケア、医療、心のケアのほか、家族計画、栄養治療プログラム、予防接種、マラリア検査と治療、健康教育活動を担っている。

また、MSFはアンソアテギ州で、マラリア感染防止のための蚊帳の配布、媒介虫である蚊の駆除、給水処理などの活動も行っている。農村地域では、早期発見・治療のための戸別訪問も実施する。MSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるクレア・ダマルは語る。「どのような状況においても、必要不可欠な医療を受けられるようにしなければなりません。目指しているのは、健康づくりをできるだけ人びとにとって身近なものにすることです」 

農村部でマラリアの治療や予防接種を行うMSF健康教育チーム © MSF
農村部でマラリアの治療や予防接種を行うMSF健康教育チーム © MSF

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ