新型コロナウイルス:感染者数世界最多のアメリカ、高齢者施設への対応が課題に

2020年08月26日掲載

入居者が服用する薬を準備する介護スタッフ © Ali Lapetina/MSF入居者が服用する薬を準備する介護スタッフ © Ali Lapetina/MSF

新型コロナウイルス感染症の感染者、死亡者数ともに世界最多であるアメリカ。国境なき医師団(MSF)が活動したミシガン州では、介護施設に入居する高齢者の死亡率の高さが報告されており、2カ月間の活動期間中、施設入居者の7500人以上が感染、うち約2000人が命を落としている。

MSFは数十年にわたるさまざまな感染症対策の経験と、欧州および南米の介護施設支援で得た知見に基づき、5月末から7月末までの期間、州内50カ所以上の長期ケア施設で援助を行った。 

現場は大混乱。感染症に関する知識もないまま、施設は対応に追われる

「施設における感染拡大の引き金となったのは、現場での支援不足です。パンデミック(世界的大流行)発生当初、これらの施設にはウイルスから身を守る防護具はなく、また介護スタッフは感染予防の研修も受けないままに、自分たちだけで対応することを余儀なくされていました」こう語ったのは、ミシガン州でMSFの緊急対応コーディネーターを務めるヘザー・パガーノ。「情報が錯綜して混乱が高まっていたにも関わらず、現場への具体的なサポートは当初一切なかったそうです」

そこで、MSFの移動診療チームは、感染対策を改善するため現地に入り、活動にあたった。最も力を入れたのは、陽性が確定した患者、感染の可能性がある人、そして新しく入居してきた人、それぞれの居住空間を適切に分けることだ。

また、正しい手洗いの方法や個人用防護具の使用法も教え、こうした対策を徹底すれば、同じ空間内にいても感染を予防できることも伝えた。 

感染から身を守るため、防護具の着用方法を介護スタッフに伝える © Ali Lapetina/MSF感染から身を守るため、防護具の着用方法を介護スタッフに伝える © Ali Lapetina/MSF

不安・悲しみ・偏見に耐え——疲弊する介護スタッフ

MSFはまた、人手不足と過労で疲弊した介護スタッフのケアにも重点的に取り組んだ。施設の職員は感染への不安、同僚や入居者を失った悲しみ、そして世間から向けられる偏見に耐える日々が続いていたからだ。MSFの健康推進担当オフィサーは、常にスタッフの話に耳を傾け、実際に一緒に仕事をしながら「あなたがたは孤独ではない。私たちはみなさんをサポートするためにここにいる」と伝え、ストレスを和らげるよう努めた。

デトロイトの高齢者施設・アドバンテージ・ウェインに勤務する看護ディレクター、コニー・フラナガン氏は、自身の思いをこう語る。「周囲の人には、仕事には行かないほうがいいと言われました。でも、私たちを頼りにしていた100人ものお年寄りを放り出して、家に閉じこもることなどできません。もちろん恐怖心はありましたが、それでも仕事を続ける方法を考え出さなければなりませんでした」

「私たちは心を込めて入居者のケアにあたっています。ご家族と面会できない期間は、私たちが家族として支えます。ここで毎日12時間以上も過ごしているのは、誰に強制されたわけでもありません。自分自身がそうしたいと思っているからです」 

高齢者施設のスタッフに感染症対策の研修を行うMSF移動診療チーム © Ali Lapetina/MSF高齢者施設のスタッフに感染症対策の研修を行うMSF移動診療チーム © Ali Lapetina/MSF

人種間に存在する健康格差

 ニューヨーク・タイムズ紙がミシガン州と地域のデータから分析したところ、全国的に、黒人と中南米系の利用者が大半を占める介護施設では、新型コロナウイルスの発生率が倍になっていることがわかった。ミシガン州保健福祉局の発表によると、同州におけるアフリカ系アメリカ人の人口の割合は14%程度であるにもかかわらず、陽性者の3分の1、さらには死亡者の40%を占めているというのだ。

人種間の格差を改善するためには、感染リスクの高い人びとが、必要な情報を確実に受け取れるようにする必要がある。そこでMSFはSNSを活用し、中南米系のコミュニティに向けて、滞在資格に関係なく検査を受けられる場所を英語とスペイン語の両方で公開した。

MSFは7月いっぱいでミシガン州での活動を終えたが、今後はテキサス州の高齢者施設に対し、同様の援助を検討している。

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