新型コロナウイルス:無料のシャワーから携帯電話まで、米国の脆弱なコミュニティに支援を
2020年04月29日新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて、米国では貧困層の多いコミュニティを中心に、すべての人々が自分自身と家族を守ることができるようにするための緊急援助が求められている。
ホームレスや、住所不定の人びとなど、弱い立場にある市民は、ウイルスが流行する中で身の安全と健康状態を維持するのに必要なリソースを欠いている。彼らの多くは避難する場所を選ぶこともできなければ、衛生設備を利用することさえままならない。米国における新型コロナウイルスの感染症流行は、これらの人びとを健康上のさらなる危険にさらしている。
公共のトイレや施設が閉鎖されて
「ほとんどの州で、地元政府は人びとに対して、外出自粛し、人込みを避け、頻繁に手を洗うことで ウイルスから身を守るように呼びかけています」 と、国境なき医師団 ( MSF ) の米国における活動責任者であるキャリー・ティーチャー医師は言う。
「これは、米国で何百万人もいる住まいのない人びとには不可能です。公共のトイレや施設が閉鎖され、どこで手を洗ったりシャワーを浴びたりすればよいのでしょう?避難所や共同住宅に身を寄せる人たちは、どうやって自主隔離すればよいのですか?」
感染流行以来、MSFには、全米各地の市民団体、地方自治体、医療従事者から、スタッフと患者の身の安全を確保するためにはどうしたらよいかという問い合わせが何百件も寄せられている。
「米国では、各州政府が感染流行への対応を主導しており、地域間で公共サービスへのアクセスに大きな差が生じています」 と、米国のMSF新型コロナウイルス対策チームを率いるジャン・ストーウェルは述べる。
「MSFは、世界各地で感染症の流行に対応してきたこれまでの経験にもとづき、米国内の様々な組織と医療関係者が、それぞれの地域のニーズや利用可能なリソースに準じて公衆衛生の指針を適用させ、実施することを支援しています」
ホームレスの人たちが感染を防げるように
世界的流行の中心地であるニューヨーク市では、毎日5万人以上の人びとがホームレス用のシェルターで寝泊りしている。MSFは、複数の地元団体と協力して、これらのホームレスや住所不定の人たちを支援する施設での感染予防・管理 対策を実施中だ。
また、無償で食事を提供するスープキッチンや住宅支援施設などに80以上の手洗い場を設置した上で、1000台の携帯電話を、緊急時の連絡や遠隔診療などの緊急医療サービスを受けるのに必要な連絡手段を持たない、弱い立場にあるニューヨーク市民に配布している。さらに、MSFはマンハッタンに仮設のシャワートレーラーを設置し、無料でシャワーを提供中だ。
MSFはまた、プエルトリコ、フロリダ、南西部の先住民コミュニティなど、感染流行に対する支援が得にくい複数の地域において、医療ニーズを調査するチームを派遣し、アセスメントを実施している。