新型コロナウイルス:「ないなら作るしかない!」最貧国でのマスク調達、日本人スタッフが語るMSFの機動力

2020年09月26日掲載

コンテナで届いた物資を荷下ろし 医療援助活動にはさまざまな物資が不可欠だ © MSFコンテナで届いた物資を荷下ろし 医療援助活動にはさまざまな物資が不可欠だ © MSF

アフリカ中央部に位置するチャド。国連人間開発指数で、189カ国中最下位から2番目の187位に数えられる、世界最貧国の一つだ。子どもの栄養失調やマラリアなどさまざまな医療課題を抱えており、国境なき医師団(MSF)は各地で援助を提供している。その状況に、新型コロナウイルスの流行が追い打ちをかけている。MSF日本からチャドに派遣され、物資調達の面から医療援助を支えたスタッフの活動を伝える。 

物が足りない、飛行機が来ない

サプライマネジャーの小坂真理子 © MSFサプライマネジャーの小坂真理子 © MSF

小坂真理子(写真)は、2019年12月からサプライマネジャーとして、チャドで医療活動を支える物資調達を担ってきた。小坂がリーダーを務める物資調達チームは、フランス・ボルドーにあるMSFの倉庫から医薬品や医療機器などを輸入するほか、チャド国内で調達できる物資の購入、在庫の管理、さらには地方の活動地への物資の運搬も担う。

それらの活動が、新型コロナウイルスにより大きな打撃を受けた。飛行機による輸送が滞った上に、経済封鎖によって国内の物資購入も困難になりあらゆる物資が不足したのだ。 

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特に不足したのが、感染拡大予防に必須なマスクだった。MSFのフランスの倉庫には世界中から注文が殺到し、どの現場にも物資はすぐに届かなかい。チャドの国内を探しても、どこも品薄の状態だ。しかし待ち続けるわけにはいかない。MSFは、「それならここで作るしかない」と現地製造に挑んだ。

製造の発注先は、伝統的なアフリカの布で服を作る仕立屋だ。しかし当然、仕立屋はマスクを作ったことはない。何とか型紙は入手できたものの、洋服用の布地は厚手でマスクには適さなかった。「担当スタッフが交渉し、マスクに使えそうな綿の布地を確保して送ってもらいました」と小坂は振り返る。結果、数万枚のマスクを作ることができ、MSFのスタッフや患者に必要な量を揃えることができた。限られた条件の中で人びとのニーズに応えるMSFの機動力を実感したという。

マスクと同様に、フェイスシールドもプラスチックシートを加工して現地で作成した。これによるもう一つの成果がある。新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人が多い中、新しい雇用を生み出すことにつながったのだ。 

伝統的な柄の布で製造したマスク © MSF伝統的な柄の布で製造したマスク © MSF

あらゆる物資に影響が

新型コロナウイルスの流行は、新型コロナ以外の医療援助にも大きな影響を与えている。飛行機による輸送が止まり、はしかワクチンなど、命に関わる医療物資が届かなくなっているのだ。

「普段使っていた航空会社の貨物機が飛ばなくなり、これまでボルドーから1、2日で届いていた荷物が、乗継の関係で10日近くかかるようになってしまいました」と小坂。はしかなどのワクチンは厳格な温度管理のもと運搬する必要があり、正しい運搬をしないと使えなくなってしまうリスクがある。

「命を守る物資が、届かなかったりダメージを受けてしまったりしては困るので、必死で対応していました」

活動に不可欠なガソリンの調達にも大きな影響が出た。

「MSFでの活動には、車での移動が欠かせません。また、電気のない地方のプロジェクトでは、発電機を使うためにガソリンが必要です。しかしコロナの影響によって手に入らなくなる恐れがありました。

これまでは首都で購入したガソリンをタンクローリーで配送していましたが、契約していた業者から、国内移動の制限を理由に販売を断られてしまったのです。業者まで直接交渉に行くなどして、どうにか在庫が切れる前にプロジェクトに配送することができましたが、ガソリンの不足は活動の停止に等しいため、薄氷を踏む思いでした」 

ワクチンは徹底した温度管理のもとでの運搬が必要だ チャドではしかのワクチン接種を受ける4歳の子ども=2019年  © Juan Haroワクチンは徹底した温度管理のもとでの運搬が必要だ チャドではしかのワクチン接種を受ける4歳の子ども=2019年  © Juan Haro

一番困っている人のために

MSFが扱う物資の幅は広い。小坂は今回の活動中に、新型コロナウイルス感染患者のための大型の酸素発生器といった医療機器から、医薬品、発電機、ガソリン、車両部品、携帯電話、事務所の机、さらにはレインコートや長靴に至るまで、あらゆる物資を扱った。

「これらの物資はどれも、多くの方たちの寄付のおかげで調達することができています。私の父がMSFへの寄付者ということもあり、資金のありがたみを強く感じています。

今回、自分が医療行為に直接関わっていなくても、物資調達を通して医療活動をサポートできた実感があります。コロナの流行が始まった時、MSFは活動を止めるのではなく、一番困っている人たちのために何ができるのかを考え、それを実行に移しました。自分自身がMSFの一員として活動できることをとても嬉しく思います」

チャドにおける新型コロナウイルスの状況は少しずつ落ち着きを見せてきているものの、まだ先は読めない。また、新型コロナによる経済への影響により、アフリカ各国では今後さらに栄養失調の子どもが増えるとも危惧されており、MSFはチャドで栄養失調のプロジェクトも展開し多くの子どもたちを受け入れている。

物資の調達を通して医療を支えるために——。小坂はチャドでの8カ月にわたる活動を終え、すぐに次の派遣先である中央アフリカに向かった。 

現地で製造したマスクを身に着ける小坂(右)と同僚のスタッフ © MSF現地で製造したマスクを身に着ける小坂(右)と同僚のスタッフ © MSF

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