新型コロナウイルス:陽性率47%、物資不足で治療に深刻な影響が── シリア北東部の現状

2021年05月19日掲載

新型コロナウイルス感染症の流行第2波が広がるシリア北東部=2020年 © MSF新型コロナウイルス感染症の流行第2波が広がるシリア北東部=2020年 © MSF

新型コロナウイルス感染症の最初の患者が出てから1年、シリア北東部では流行の第2波が広がっている。4月26日時点で感染者は1万5000人余り、死者は640人とされているが、実際はその数をはるかに上回ると考えられている。この地域では人びとが検査や医療へアクセスできず、流行への対応も資金も不足しているためだ。

ハサカ県とラッカ県で国境なき医師団(MSF)が支援する新型コロナ専門の病院では、ここ1カ月で患者が急増。検査数が少ないにもかかわらず、PCR検査の陽性率は47%と非常に高い割合を示しており、実態の深刻さを物語っている。

PCR検査ツールの在庫がほぼ底を突く

「流行が始まって1年がたったいまでも、新型コロナの対応に必要な物資が不足しています」。そう危惧するのは、MSFの緊急医療マネジャー、クリスタル・バン・ルーウェンだ。「検査ツールをはじめ、重症患者の治療に必要な酸素、医療従事者用の個人用防護具でさえ、ごくわずかしか手に入りません」

トルコ国境近くの都市、カーミシュリーには、この地域で唯一新型コロナの検査を実施している施設があり、MSFは流行が始まって以来、4回にわたりPCR検査に必要なツールを寄贈してきた。しかし、シリア北東部では地域をまたいで人道支援物資を搬入する体制が整備されていないため、この施設は深刻な物資不足に陥っており、検査キットの在庫もほぼ底を突いている。

またハサカ県とラッカ県にある2カ所の新型コロナウイルス感染症治療センターも、資金援助と医療物資を受けられなくなったため、活動停止に追い込まれた。

コロナ患者の血圧を測る医療スタッフ シリア北西部でMSFが運営する治療施設にて=2020年 © OMAR HAJ KADOUR/MSFコロナ患者の血圧を測る医療スタッフ シリア北西部でMSFが運営する治療施設にて=2020年 © OMAR HAJ KADOUR/MSF

ワクチン供給の見通しはいまだ不明

ワクチンの供給に関しても、いまだ不透明な状況が続く。医療従事者の多くがまだワクチン接種を受けていないほか、人口500万人の地域に対して、地方当局が供給を約束したワクチンはわずか2万回分にとどまっており、届くかどうかも不明だという。

大規模なワクチン接種を実施する見通しが全く立っていない事態を、MSFは重く見ている。バン・ルーウェンは言う。「シリアでは地域によって、ワクチンなどの物資の配分にばらつきがあります。地域ごとに異なる勢力が支配している状況や物流体制の不備によって、北東部での人道支援活動が悪影響を受けているのです」

シリア北東部では、以前から医療や水へのアクセスが限られているため、第2波が与える影響は計り知れない。MSFが支援している新型コロナ専門の病院でも、医療体制が限界に達し、死亡率が上がり続けている。入院患者の70%以上が酸素治療を必要としているが、供給は全く追いついていない。

バン・ルーウェンは言う。「医療・人道団体による援助の大幅な拡充が必要です。また、資金拠出機関や援助国は、柔軟性をもって長期的な支援を続ける必要があります。シリアの新型コロナ収束の見通しは立っておらず、助かるはずの命が失われています。物資不足を防ぎ人びとの命を救うためには、長期的な対応策とワクチンの供給を進めていかなければなりません」

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