新型コロナウイルス:シリア避難民は自宅待機も自主隔離もできない
2020年04月21日2020年3月22日に最初の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が報告されたシリア。以来国内の症例数は、確定数10人、死者1人にとどまっているが、長年の紛争で荒廃した国土でウイルスが流行した場合は大惨事になりかねない。
紛争の後に一時停戦合意がなされ、大勢の人がテントで避難生活を送っているシリア北西部イドリブ県。現地で活動している国境なき医師団(MSF)のプロジェクト・コーディネーター、クリスチャン・レンデルに話を聞いた。
シリアの人道危機は続いている
シリア北西部の状態は非常に複雑です。わずか3週間前まで、この地では武力紛争が起きていたのですから。この人道上の緊急事態に対して、国境なき医師団(MSF)を含めたあらゆる人道援助団体が対応を迫られています。現在も、数十万人が食料や避難所を求めているのです。衛生管理の観点からトイレも必要となります。
避難民には自宅待機も自主隔離も困難
イドリブ県では、ウイルスから身を守り、感染拡大を遅らせるために、どのようなことを推奨しようとも、その実行は不可能です。どうすれば、自宅にとどまるよう人びとに言えるでしょうか。自宅がどこにあるというのですか。およそ90万もの人びとがキャンプ生活を強いられているのです。自宅待機など不可能です。自宅そのものがないのですから。
シリアの医療体制はすでに疲弊しきっている
イドリブ県で感染症が流行しても、できることは限られています。イタリアやスペインを見てください。新型コロナウイルスの感染流行によって、高度な公衆衛生体制が築かれた国ですら、医療崩壊が起こりつつあります。ましてや、新型コロナウイルスが流行する以前から、すでに苦境にあった現地の医療体制に何が期待できますか? 苦境という言葉では言い足りません。すでに疲弊し切って何の備えもない状態なのです。
MSFの取り組み
現在、MSFが最優先で取り組んでいるのは、病院へのサポートです。イドリブ県で新型コロナウイルスが流行しても、その感染者たちの救命医療に関して中心的役割を果たすのは医療機関だからです。それゆえ、MSFは、2〜3日をかけて、3つの支援先病院との共同活動を実施しました。まず、衛生委員会をサポートして、院内の衛生管理を改善しました。また、新たなトリアージ体制を導入して、新型コロナウイルス感染の疑いがある患者を特定しやすくしました。感染が確認された患者は、周りから隔離して観察下に置けるようにしたのです。
シリア避難民のために国際的な連帯を
いま求められているのは、実情に見合った対応規模の拡大です。みなが連帯して国際的な人道対応に当たる必要があります。それも、複数の分野にまたがる対応が必要です。
MSFは、新型コロナウイルスの感染流行に備えて、避難民キャンプにおける従来の活動において感染への予防を啓発している。活動の様子を動画で紹介する。