新型コロナウイルス:HIVと結核が流行するエスワティニに迫る新たな脅威
2020年05月19日 アフリカ南部に位置するエスワティニ王国(旧国名:スワジランド王国)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者数の人口比が世界で最も高い国だ。成人のおよそ3分の1がHIV陽性である。加えて、この国では結核も流行しており、結核患者の約70%がHIVにも感染している。
こうした状況下、エスワティニに新型コロナウイルスという新たな脅威が現れた。3月14日、同国において、初めての新型コロナウイルス感染者が確認された。それ以来、感染数は日々増加している。
新型コロナウイルスがHIV患者に対していかなる影響を与えかは明らかになっていない。分かっているのは、慢性疾患を抱えて免疫機能が低下している患者にとってはリスクが高い点だ。新型コロナウイルス感染症と同じく、結核もまた肺を冒す病であり、感染すると重症化し、合併症を悪化させる可能性がある。
国境なき医師団(MSF)は、2007年以来、エスワティニにおけるHIVと結核の二重まん延に対応している。現地で活動を率いる医師のベルンハルト・カーシュバーガーに話を聞いた。
- QHIVや結核の感染者は、新型コロナウイルスに感染するリスクも高いのか?
- QMSFでは、HIV患者や結核患者をどのように治療しているのか?
- QエスワティニにおいてHIVと結核の薬がなくなる恐れは?
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HIV患者にとっても、結核患者にとっても、薬の長期的な補充体制が必要です。さもなければ、治療が中断され、新型コロナウイルスの脅威にさらされやすくなります。エスワティニの保健当局と医療機関は、在庫切れの可能性を現在懸命に検証しているところです。最終的には、需要と供給のバランスをとり、そのギャップを確認することが重要です。MSFでは、これらのギャップを埋めるべく、多剤耐性結核などの日和見感染症に対する薬剤提供にあたっています。しかし、ロックダウン措置にともなって物資供給に対する国際的規制が続くと、海外からの医薬品供給に影響を及ぼす可能性があります。例えば、多くのジェネリック医薬品はインドから輸入されていますから。
- Q新型コロナウイルスがHIVや結核の流行に及ぼす影響は?
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いまはまだ新型コロナウイルス流行の初期段階です。それを論じるのは時期尚早だと思います。ただし、医療サービスや医療アクセスが弱体化することで、HIVや結核に代表される慢性疾患の発症率や死亡率が高まる可能性は無視できません。長期的には、HIVや結核の流行にも影響を及ぼすかもしれません。
エスワティニでは、HIV感染状況を抑えて、国際標準の目標であるいわゆる90-90-90(人口の90%以上が自らのHIV感染有無を知っており、HIV感染者の90%が治療を受けており、治療を受けている人びとの90%がウイルス量の抑制に成功している状況)を満たすまでの長い道のりがありました。これを達成に導いた医療戦略はこれからも維持されなければなりません。さもなければ、以前の事態に後退していくだけです。基本的な予防措置、検査体制、治療サービスを維持し、検査と医療を必要とする人びとのニーズを満たすことが重要です。
MSFがサポートする医療施設にてHIV治療を開始した4月の患者数は、前年同月比で64%(44人から16人へと)減少しました。月単位の数値としては、過去4年間で最小です。ロックダウン措置があったため、地域レベルの活動を縮小せざるを得ませんでした。それゆえ、4月に配布したHIV自己検査キットの数は、昨年の同月比で46%(298個から162個へと)減少しています。
こうした状況が、短期的にどのような影響をもたらすのかは分かりません。ただし、長期的には、深刻で憂慮すべき問題を発生させる可能性があります。
- Q目指すべき目標は?