新型コロナウイルス:ソマリアで豪雨が発生 水系感染症のリスクも

2020年05月28日掲載

新型コロナウイルス感染症の危機が広がる中、激しい豪雨が人びとを襲った。ここは、長年にわたり人道危機に直面しているソマリア。紛争や干ばつ、虫害、自然災害などにより、すでに数百万人が避難を強いられている。3月から発生した今回の豪雨で、さらに多くの人びとが住まいを失った。膨大な医療ニーズに対応する、国境なき医師団(MSF)の活動を伝える。 

栄養治療センターで患者の健康状態を確認する医療スタッフ © MSF栄養治療センターで患者の健康状態を確認する医療スタッフ © MSF

家も畑もなくなった……

ソマリアでは3月からは豪雨が複数の地域で鉄砲水を引き起こし、国連によるとこれまでに20万人余りが住居や農地を失った。水害の発生は、コレラなど水系感染症のリスクが高まることを意味する。MSFは、水害の被害を受けた南部の自治区ジュバランドのバルデラ県に必須医療物資を緊急輸送している。地域病院へ衛生キットを供給するほか、避難中の家族2500世帯への蚊帳と調理器具の配布も準備中だ。現地には、2019年後半に起きた洪水からまだ立ち直れていない人びとも多い。

「とても困難な状況に直面しています。新型コロナウイルスの感染者が各地で急増している一方、以前から続いている医療ニーズも膨大です。気候災害、子どもの栄養失調、慢性疾患……、そこに新型コロナウイルスの危機が加わりました。これら全てが、人道援助のひっ迫する中で起きているのです」ソマリア/ソマリランドでMSF代表を務めるガウタン・チャテルジーはそう指摘する。 

豪雨による水害が頻発するソマリア=2019年11月 © MSF豪雨による水害が頻発するソマリア=2019年11月 © MSF

感染を食い止めるために

ソマリアでは5月下旬時点で約1600人が新型コロナウイルスに感染。MSFは、これまで医療援助を展開していた場所では、医療スタッフを守るため、新たに衛生管理と予防策を導入。その一環で、感染制御・予防策、新型コロナウイルス感染症の鑑別、感染疑い例の選別について研修も行ってきた。

ジュバランドでも、最前線の保健医療スタッフへ赤外線体温計と衛生キットを提供し、地元当局による患者の優先順序付けと準備態勢の強化を図っている。ソマリランドの首都ハルゲイサでも、感染予防・制御の強化、救急処置室スタッフ・救急車運転手の研修などを行った。

個人防護具や必須医療物資の世界的な不足は、ソマリアとソマリランド、そして現地のMSFの活動にも影響している。MSFは医療施設のスタッフを保護し、患者の命を守るため、これらの供給難の解消に取り組んでいる。 

ソマリア中部ガルカヨの病院で医薬品を準備するスタッフ © MSFソマリア中部ガルカヨの病院で医薬品を準備するスタッフ © MSF

決して置き去りにしない

「最前線の保健医療従事者らを守り、この感染症への備えと予防について十分な研修をすることが必要です。彼らなくして、世界的大流行に、また、保健ニーズ全体に応じる術はありません。彼らを感染から保護し、患者さんを治療できるようにしなければならないのです」

MSFが懸念するのは、基礎疾患のある患者、高年齢層、キャンプや都市の過密地区のような不安定な環境で生活する困窮者といった高リスク集団だ。ソマリアとソマリランドには大勢の国内避難民、難民、移民がおり、保健医療、清潔な水、適切な衛生設備など最低限の公共サービスも受けられていない。

こうした制約のある環境で新型コロナウイルス感染症が集団発生すれば、ただでさえ脆弱でひっ迫する保健医療に重い負荷がかかる。それだけに、地域での周知拡大と、検査体制および感染者と接触した人の追跡体制の強化が鍵となる。

チャテルジーは訴える。「ソマリアでこれ以上感染が拡大したら、長期的に深刻な影響が出てしまいます。困窮したこの国を、決して置き去りにしてはなりません」 

産科病棟で妊婦の血圧を測定 新型コロナウイルスへの対応とともに既存の医療活動を継続している © MSF産科病棟で妊婦の血圧を測定 新型コロナウイルスへの対応とともに既存の医療活動を継続している © MSF