走り始めた救急車 「危険すぎる街」で待望の救急搬送が開始

2020年01月31日
MSFによる救急搬送サービス © Alejandra Sandoval/MSF
MSFによる救急搬送サービス © Alejandra Sandoval/MSF

家を出ることすら危険

殺人事件の発生率が最も高い国の一つである、中米・エルサルバドル。ギャングの勢力争いや治安部隊との衝突が頻発し、危険が広がっている。

首都サンサルバドル近郊のイロパンゴ市は、特に状況が深刻だ。190ある地区のうち約30の地区が、危険度が非常に高い「レッドゾーン」とされている。病院へ行くことはおろか、家を出ることすら難しいと言う住民も多い。医療者にとっても危険の大きい場所だ。日ごろから救急搬送の需要が非常に高いにも関わらず、医療物資も、救急ケアの専門人材も足りていない。

「危険すぎて自宅や近所を離れられない人も大勢います。救急医療を全く受けられない地域の住民は、自力で何とかするほかありません」エルサルバドルのMSF活動責任者ステファヌ・フーロンはそう話す。

この街に救急車を

救急患者を病院へ搬送する(エルサルバドル・ソヤパンゴ市)=2018年 © Alex Pena/MSF
救急患者を病院へ搬送する(エルサルバドル・ソヤパンゴ市)=2018年 © Alex Pena/MSF

そんなイロパンゴ市で、MSFは今年1月に救急搬送サービスを開始した。これからはMSFの救急車が、緊急医療を必要とする人たちのもとへ駆けつける。搬送された人びとは、必要な医療を無償で受けることができる。

MSFは2018年から、イロパンゴ市に近いソヤパンゴ市で救急患者のケアに携わってきた。2019年12月までに2000件を超える救急搬送要請に対応し、その分野は産婦人科、心臓科、心的外傷、精神保健など多岐にわたる。市内のいわゆる「レッドゾーン」の80%以上をMSFの救急車が担当しているが、安全にかかわる事例は報告されていない。

これらの経験をもとに、イロパンゴ市でついに走り始めた救急車。MSFの医師や看護師、救急車運転手らは、毎日24時間、年中無休でこの援助活動を続けていく。
 

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