紛争地で深刻化する栄養危機──内戦続くスーダン 今すぐ支援の拡大を
2025年05月13日
スーダンで続く内戦は、医療体制に壊滅的な打撃を与えただけでなく、食料安全保障にも深刻な影響を及ぼしている。数百万人が適切な食料を確保できず危機的な状況に置かれ、特に南ダルフール州などの紛争地では顕著だ。国内避難民の多くは食料を含む基本的な生活必需品さえ確保できていない。
中でも、5歳未満の子どもたち、そして妊娠・授乳中の女性は、この栄養危機の影響を最も受けているグループの一つだ。2024年、国境なき医師団(MSF)は、南ダルフール州の州都ニヤラとその周辺地域に住む5歳未満の子どもと妊娠・授乳中の女性7200人以上を、外来栄養プログラムに受け入れている。皆、重度の栄養失調に陥っていた。人びとが栄養価の高い食料を手に入れることは依然として難しく、女性や子どもたちは、命に関わる重度の急性栄養失調のリスクにさらされている。
人道支援が限られた中で
MSFは既に最も被害の大きい地域で緊急の栄養支援を開始していたが、支援を拡大し持続させるための大きな課題に直面している。

ニーズに応えるためさらなる支援が必要
2024年12月、MSFは栄養治療プログラムに登録している子どもたちや妊娠・授乳中の女性がいる家族に、食料の配布を開始した。経済状況が悪化の一途をたどる中で、食料不安の最も深刻な影響を受けている人びとに対し、一時的な支援を提供することが目的だ。

「子どものための栄養治療食が、空腹の親族たちにわたってしまうことを防ぐため、家族全員の食料を2か月分、提供しています」
南ダルフール州で食料配布を担当するMSFのプロジェクト・コーディネーター、ハンター・マクガバンはそう話す。
これにより、子どもは栄養治療を最後まで受けることができ、家族全体の栄養状態も改善されます。この取り組み自体は順調ですが、ニーズは依然として非常に大きいままです。
ハンター・マクガバン MSFのプロジェクト・コーディネーター

MSFは1世帯平均 5人の家族に対して、1日1人あたり2000キロカロリーの食料を2カ月間分提供している。これは、家族全員に必要な食料を提供し、栄養失調の子どもたちが健康的な体重に戻るための治療をサポートするものだ。しかし、想定外の事態にも直面している。
「食料を配布する中で、家族の平均人数が当初の想定よりもはるかに多いことがわかりました。1世帯に10人が暮らすケースもあります」と先ほどのマクガバンは語る。
これは食料不足の深刻さと、人びとが本当に求めるニーズに応えるためにはさらに多くの支援が必要であることを物語っています。
ハンター・マクガバン MSFのプロジェクト・コーディネーター
また、人びとは親族が食料支援を受けたと聞くと、その場所を目指し移動するという。これも現地の食料不足の深刻さを如実に示す一例となっている。

苦しみや死を防ぐために
また、雨期とハンガーギャップ(前年の収穫で蓄えた食料がなくなり、栄養失調に陥る人数や重症度がピークに達する時期)の時期も近づいている。この時期、南ダルフール州の人びとは食料の入手が最も困難になると同時に、人道援助物資がこの地域に届くことも非常に厳しくなる。栄養失調の治療や食料配布に必要な物資は、地域が援助から遮断される前に準備が必要だ。

現地の支援団体は食料配布を継続・拡大するための資金と支援を必要としている。南ダルフール州における、食料配布や入院・外来の栄養治療プログラムの拡大は困難を伴うものの、実現不可能なことではない。そして、支援の拡大は人びとの苦しみや死を防ぐことにつながるのだ。
食料安全保障の悪化と栄養失調の増加が、深刻さを極めている今。人道支援を拡大し、人びとが切実に必要としている支援を確実に受けられるよう、緊急の対応が必要だ。協調した取り組みが実現されない限り、危機はさらに深まり、無数の命が危険にさらされることになる。
