スーダン:ハルツームで当局が実質的手術禁止令ー多くの人命が危機に。直ちに撤回を

2023年11月17日

スーダン当局がハルツームで、対立する準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」支配地域の病院に救命手術用の医療物資を輸送することを禁じ、病院で手術を行うことが極めて難しくなっている。この措置は良心を欠き、女性や子どもを含む多くの人びとの命を危険にさらしており、国境なき医師団(MSF)は、直ちに撤回することを求める。

医療物資の輸送禁止措置は9月上旬から始まり、10月2日にスーダン当局からMSFに伝えられた。禁止の目的は、負傷した兵士が首都で救命治療を受けられないようにすることだ。 

これはスーダン軍とRSFが5月にサウジアラビア・ジッダで合意したジッダ宣言で順守を再確認した戦時国際法に反するだけでなく、市民から医療を奪うことになり、致命的な結果をもたらしかねない。 

MSFが手術を支援していたバシャール大学病院では、9月10日に起きた市場への爆撃で60人の負傷者を受け入れた。しかし今では手術ができなくなっている © MSF/Marie Burton
MSFが手術を支援していたバシャール大学病院では、9月10日に起きた市場への爆撃で60人の負傷者を受け入れた。しかし今では手術ができなくなっている © MSF/Marie Burton

多くの死を招きかねない非情な戦術

MSFのスーダン緊急事態担当責任者クレア・ニコレは「この禁止令は、今後数週間のうちにハルツームで何百人もの人々を死に至らしめる可能性が高い、非情な戦術です」と語る。

「トルコ病院で行っている手術の3分の2は帝王切開です。この手術がなければ、多くの女性と生まれたばかりの赤ちゃんは、死んでいたでしょう。帝王切開が必要な陣痛に苦しむ女性にとって、ハルツームで頼れる選択肢は、ほとんどありません。私たちが病院に手術用物資を持ち込むことを拒否され続ければ、やがて女性の選択肢は全くなくなってしまうでしょう」 

MSFは戦傷者を、医療上の必要性に基づいて治療している。戦闘に自ら加わっていようと、銃撃戦の巻き添えになろうと、救命治療を行うことを拒否するのは、医療倫理に反する。

市場が爆撃を受けた9月10日には、103人の死傷者が出た。43人が死亡し、女性や子どもを含む60人の負傷者がバシャール大学病院で治療を受けた。しかし、輸送禁止令のため、MSFは10月、同病院での手術を中止せざるを得なくなった。 

結果としてトルコ病院は現在、ハルツーム南部で完全に機能する手術室を持つ数少ない施設のひとつだ。11月12日と13日に発生した2件の大量殺傷事件を受けて、MSFはトルコ病院の緊急治療室で128人の負傷者を受け入れた。すでに手術を始めているが、まだ多くの患者が順番を待っている。病院に残る物資は1カ月分に満たない。

届かないトラック

MSFがさらに物資を運ぶことができなければ、トルコ病院の手術室も閉鎖せざるを得なくなる。救命手術を必要とする女性や子ども、男性が治療を受けられなくなるため、この紛争による死者がさらに増えることは間違いない。

事態の深刻さに拍車をかけているのは、この禁止措置が物資の輸送だけに影響しているわけではないことだ。 医療関係者を含む人道支援関係者もまた、移動許可を拒否されている。この問題について当局からMSFへの公式な連絡はないが、事実として10月上旬以降、スーダン人、外国人を問わず、医療スタッフで南ハルツームに向かう許可を得た人はいない。ジッダでの協議で、スーダン軍は救援物資を積んだトラック90台がハルツームに移動することを許可すると約束したにもかかわらず、今日に至るまでトラックは到着していない。MSFのトラックに対する移動許可も依然として出ないままだ。 

「ハルツームから200キロも離れていないワドメダニには、MSFの物資とスタッフが待機しています」とニコレは語る。 

「スーダン軍は、首都の住民に医療を提供することを積極的に妨害しています。スーダン政府の多くの部局、国際機関、スーダンの危機に関与している外交団は、この禁止について知らされていますが、まだ何もしていません。負傷した戦闘員を治療させず死においやるという非人道的な政策の副作用として、陣痛に苦しむ女性を放置し、何人かを死に至らしめるというこの冷酷な決定は、ぞっとするものであり、撤回されなければなりません」 

スーダンでのMSFの活動

 MSFは1979年からスーダンで活動している。現在、スーダンのハルツーム州とハルツーム市、ジャジーラ、白ナイル、青ナイル、ナイル川、ゲダレフ、西ダルフール、北ダルフール、中部ダルフール、南ダルフールの10州で活動している。

スーダンのMSFチームは、爆風による負傷や銃創など、戦闘で負傷した人びとの治療、感染性・非感染性疾患の治療、妊産婦や小児科のケア、国内避難民の人びとが集まる場所での移動診療の実施、水と衛生の支援、寄贈や保健省スタッフへの奨励金、訓練や後方支援による医療施設の支援などを行っている。MSFはまた、紛争開始前からの活動の一部も継続している。

MSFスーダンの緊急対応は、2023年に7600万ユーロの予算と、スーダン人スタッフ1145人、海外スタッフ57人のチームで運営されている。MSFはまた、保健省スタッフ約1358人に対する給与サポートも支出している。

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