「仕事を失い、夫にも見放された」——マラウイ女性の健康と人生を脅かす子宮頸がん

2020年07月28日掲載

子宮頸がんの治療を受けるため、MSFが運営するクイーン・エリザベス中央病院を訪れた女性 © Francesco Segoni/MSF子宮頸がんの治療を受けるため、MSFが運営するクイーン・エリザベス中央病院を訪れた女性 © Francesco Segoni/MSF

女性特有の病気である子宮頸がんは、ワクチンの接種や定期的な検査によって予防・治療が可能だ。しかしアフリカ南東部に位置するマラウイでは、予防接種の普及率の低さや医療機関の不足、そして貧困などの問題により、毎年患者の3分の2にあたる2300人余りが命を落としている。

国境なき医師団(MSF)は、この病気が特に多く報告されている南部の都市ブランタイヤで、2018年から子宮頸がんの治療プログラムを運営している。

仕事を失い、夫は去った

がんという病気は、ときに患者の人生を一変させる。子宮頸がんを発症したエネルティさん(51歳)も、そんな経験をした一人だ。

首都リロングウェ出身のエネルティさんは、木炭やプリペイドテレホンカード販売の仕事をしながら、家族と共に暮らしていた。病気を発症した当初、彼女は地元の病院を受診したが、処方された薬は効かず、慢性的な痛みとかゆみに苦しめられたという。

辛い症状のために仕事を辞めざるを得なくなった彼女に、追い打ちをかける出来事が起きた。夫が家を出て行ったのだ。「もうすぐ死ぬのだから、連れ添う意味なんてない」と。

彼女のような体験は、決して珍しいものではない。病気になった女性は妻として、母としての役割を果たせないとみなされ、家庭や地域内で孤立してしまう。 

経済的・心理的な負担も

マラウイ湖のほとりに位置する村、モンキーベイに住むマダロさん(56歳)は、痛みと性器出血が始まり、その後子宮頸がんと診断された。「化学療法を受けるためブランタイヤまで定期的な通院が必要になり、すぐにお金が底をついてしまいました。長男が貯金を崩して工面してくれましたが、私もまた地元の金融機関から借り入れをしなければならず、いつ返済できるか目途が立っていません」

金銭的な負担に加え、子宮頸がん患者を特に苦しめるのが、末期に起こりやすい陰部からの出血や臭いだ。この症状によって周囲から敬遠され、家族やコミュニティとの間に溝ができてしまうことも少なくない。

ブランタイヤでMSFの婦人科腫瘍学プログラムの責任者を務めるイエルン・ベインスベルハルは、「病気の治療もさることながら、患者の心理・社会面のケアが重要です」と強調する。

さまざまな困難は直面しつつも、マダロさんはMSFが運営する病棟に入院し、外科手術を無償で受けることができた。しかしこれは比較的幸運なケースであり、大半の女性たちはもはや手の施しようがないほど病状が進行して、やっとスクリーニングを受けるような状況に置かれている。 

MSFの医療機関を受診した女性。患部の出血や痛みのため、座ることもままならない © Francesco Segoni/MSFMSFの医療機関を受診した女性。患部の出血や痛みのため、座ることもままならない © Francesco Segoni/MSF

新型コロナウイルスが現地の医療に影を落とす

一方前述のエネルティさんは、まだ本格的な治療を受けられていない。マラウイでは放射線治療を利用できないためだ。彼女はMSFの援助を得て、ザンビアなど近隣諸国の病院へ転院を希望しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で保留となってしまった。

現在、彼女のような患者に対する国境を越えた放射線療法の計画は中断されている。また感染拡大リスクを最小限にするため、手術は緊急的なものに限られ、緩和ケア患者を対象にした訪問診療も取りやめとなった。

しかしエネルティさんは、希望を失わない。「放射線治療のキャンセル待ちをしているので、空きがでたらすぐ行くつもりです。あまり深刻に考えず、気楽に構えていますよ」と穏やかな笑顔で語った。

患者の自宅を訪問するMSF医療チーム。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、訪問医療は中断している © Francesco Segoni/MSF患者の自宅を訪問するMSF医療チーム。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、訪問医療は中断している © Francesco Segoni/MSF

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