新型コロナウイルス:感染対策か予防接種か—— はしかやコレラからも命を守るために

2020年05月01日掲載

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響で、子どもたちの命を守る予防接種に危機が迫っている。世界各地で、予防接種の活動が中止や延期に追い込まれているのだ。

しかし、予防接種は、はしかやコレラなどの病気から子どもの命を守るために不可欠だ。国境なき医師団(MSF)ワクチン接種顧問のバルバラ・サイッタが訴える。

中止に追い込まれる予防接種活動

看護師として、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)、南スーダン、イラク、バングラデシュなどの途上国で活動してきました。医療体制の脆弱なこうした国々の診療所に、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れというとてつもない負荷がかかっていることに、大きな不安を感じています。

さらに、途上国の予防接種の専門家として、それらの診療所で「起きていないこと」が気がかりです。今、新型コロナウイルスの影響で、世界各地で予防接種活動が延期や中止に追い込まれているのです。

はしかなどの病気から命を守るのに必要なワクチン。予防接種を受けられなかった子どもがたくさん犠牲になっています。コンゴやナイジェリアなど、はしかの流行が続いている国では、2018年に14万人以上の命が奪われ、その大半が5歳未満児でした。予防接種が中止されるということは、幼い命に甚大な被害が及ぶことを意味するのです。 

はしかにかかった2歳の娘を抱く父親(コンゴ)=2019年 © Alexis Huguet/MSFはしかにかかった2歳の娘を抱く父親(コンゴ)=2019年 © Alexis Huguet/MSF

二重の負担がのしかかる保健医療体制

アメリカ赤十字社、アメリカ疾病予防管理センター、国連児童基金(ユニセフ)、世界保健機関(WHO)などによるパートナーシップ「麻疹・風疹イニシアチブ」の発表では、新型コロナウイルス感染症のあおりで、37カ国で1億1700万人余りの子どもたちがはしかワクチンの接種を逸する恐れがあるといいます。

MSFの医療プログラムでは、自然災害や人道危機などの理由で、これまでにも予防接種活動が中止に追い込まれたことがあります。わずかな期間であっても予防接種が行われなくなると、はしかや髄膜炎などの病気のリスクが高まります。さらに集団発生が起きれば、乳幼児などの脆弱な集団を中心に、病気や死亡が拡大する恐れもあります。

世界では今、新型コロナウイルス感染症と、ワクチンで予防できるはずの病気の両方が、保健医療体制への「二重の負担」になりつつあるのです。 

これまでの努力をやめてはいけない

ワクチンは命を救います。研究結果が証明しているだけでなく、私自身がこの分野に11年間携わり、幾度となく目にしてきたからこそ断言します。

もちろん、どの国も厳格な新型コロナウイルス感染症対策を講じ、市民と保健医療従事者を守るための施策を行わなければなりません。それは必須です。しかしその一方で、ワクチン接種で予防可能な病気も同じくらい致命的であり、堅実で継続的な取り組みが求められます。新型コロナウイルス感染症に加え、はしかや髄膜炎、コレラなどが流行し、各国の対応が遅れれば、状況はいっそう悪くなるでしょう。

今年の世界予防接種週間(4月24~30日)のテーマは「#VaccinesWork for All(ワクチンは皆のためにある)」です。私たち皆に影響の及ぶ新型コロナウイルス感染症を目の前にしても、これまでの努力をやめてはいけません。すべての子どもたちに、命を救うワクチンが届くように。 

新型コロナウイルス感染症患者受け入れに関する研修をするMSFスタッフ(南スーダン) © Gabriele Francois Casini新型コロナウイルス感染症患者受け入れに関する研修をするMSFスタッフ(南スーダン) © Gabriele Francois Casini

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