新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応 

2020年03月18日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行について、3月11日、世界保健機関(WHO)は世界的な流行を意味するパンデミックを宣言した。3月17日現在、感染者数が最も多いのは2019年12月にこの病気が最初に報告された中国だが、流行の中心地は欧州に移動し、イタリアにおける感染者数が世界で2番目に多い。

国境なき医師団(MSF)は、イタリアの病院に医療援助を提供するほか、香港で保健教育などの活動を実施。また、医療体制が脆弱な国々での感染拡大を懸念し、カンボジアなどにおいて医療スタッフへの感染予防研修を行っている。 

ウイルスの感染予防法を伝えるMSFスタッフ(香港) © Shuk Lim Cheung/MSF
ウイルスの感染予防法を伝えるMSFスタッフ(香港) © Shuk Lim Cheung/MSF

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各地でのMSFの活動

現在の主な活動
■イタリア
流行の中心地であるロンバルディア州の4カ所の病院に、感染症専門家、麻酔科医、看護師、ロジスティシャンを派遣して医療援助を提供。患者のケアに加え、感染予防の活動を行っている。

■香港
感染リスクが高く、感染すると重症化しやすい人びとに対し、保健教育と心のケアを提供。

■カンボジア、パプアニューギニア
医療従事者向けに感染予防や感染者対応に関する研修を実施。

■イラン(世界で3番目に感染者数が多い)
患者のケアに関する協力を当局に申し出。


MSFは、世界各地の非常に困難な環境下で多くの患者の命を守っている。このような通常の医療援助活動を維持することがまず重要だと考えている。そのような中、入国制限によりスタッフの国家間の移動が難しくなっていること、また、医療用消耗品、特に医療スタッフ用保護具の世界的な不足が大きな課題となっている。

通常の医療援助活動でも、感染予防を中心に、新型コロナウイルスの流行への対策を進めている。今後感染者が出る可能性が高い場所では、感染予防策を導入し、患者のスクリーニングとトリアージ態勢を整備するほか、隔離区画の維持管理、保健教育を徹底していく必要がある。MSFは、WHOと各国保健省と連携し、感染者が増えた場合にどのような援助ができるか検討を重ねている。

カンボジアで医療スタッフを対象に行った研修 防護具の着用方法などを伝えた © MSF
カンボジアで医療スタッフを対象に行った研修 防護具の着用方法などを伝えた © MSF

関連記事:
「新型コロナウイルス 医療体制が脆弱な国々での流行に備える」(2020年03月06日掲載) 

難民キャンプや紛争地で暮らす人々のリスクが高まる

ギリシャやバングラデシュの難民キャンプや、イエメン、シリアといった紛争地で暮らす人びとなど、すでに危機的な条件下で暮らしている人びとへの新型コロナウイルスの影響を、MSFは懸念している。人びとは密集して不衛生な環境で暮らし、基本的な医療すら十分でない状況だ。

これらの地域では、新型コロナウイルスの流行防止策へのハードルは高く、発症した場合に治療を受けるのも難しいと考えられる。そのため、手洗いの徹底や、新型コロナウイルス感染症患者と濃厚接触した場合の自主隔離など、感染を広げないための手段を伝えることが重要だ。 

ギリシャ・モリアの難民キャンプで5人家族がひとつのテントで暮らす=2019年撮影 🄫 Anna Pantelia/MSF
ギリシャ・モリアの難民キャンプで5人家族がひとつのテントで暮らす=2019年撮影 🄫 Anna Pantelia/MSF

関連記事:
「新型コロナウイルスまん延危機——ギリシャの難民キャンプから早急に人びとの退避を」(2020年03月13日掲載) 

今求められるのは

医療従事者の安全確保は、あらゆる医療機関で最優先事項とみなすべきだ。大勢の患者によって機能が麻痺した病院や診療所では、保護具の供給不足や、医療従事者の感染によりスタッフが減る事態にも対処していく必要がある。

MSFは、新型コロナウイルス感染症への対応に緊急に必要な医療ツールが、必要とする人にとって利用しやすく、購入しやすく、入手できる状態になるよう求めている。政府、製薬会社、そして、治療薬や検査ツール、ワクチンを開発している研究機関は、下記のために必要な措置を講じる必要がある。

■医薬品の生産と手頃な価格での販売が、特許と独占によって妨げられないようにする。
■既存の医薬品を新型コロナウイルス感染症に転用する際は、これまでその医薬品を使ってきた患者が治療を続けられるようにする。
■感染防護と治療のための医療物資は、最前線の医療従事者を優先する。 
■必須医薬品の供給が脅かされるリスクがないか監視し、必要に応じて国際協調を通した 影響緩和策を調整できるよう、透明性と連携において改善を図り、エビデンスに基づいたアプローチを徹底する。 

これまでの情報
・新型コロナウイルス感染拡大への国境なき医師団の対応について(2020年2月14日)
・新型コロナウイルス感染拡大への国境なき医師団の対応について(2020年2月5日) 

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