国境なき医師団、HIV予防の画期的新薬の値下げを支持 流行終息に向け、より広範な普及戦略を訴え
2025年10月16日
これは、手頃な価格での医薬品の提供とアクセス拡大に向けた前向きな一歩だが、世界の新規HIV感染の約4分の1が発生している国々が対象外となっており、依然として多くの人びとが取り残されていることに懸念が残る。
国境なき医師団(MSF)はこの新たな合意を歓迎する一方で、世界的な計画においては、現在のライセンス契約から除外されている低・中所得国を含め、HIVの感染リスクが高い人びとを優先するよう求める。
またMSFは、現在の計画では依然として広範な普及には不十分であり、主要な支援者や各国政府がリスクの高い人びとを置き去りにすれば、流行の抑制に失敗する可能性があると警告している。
レナカパビルは、特にスティグマ(偏見)や犯罪化、服薬に関する制度的な障壁にさらされているコミュニティにとって、HIV感染予防に向けた画期的な新薬だ。しかし、現在のアクセス戦略では、世界的なニーズの10%未満しかカバーされていない。

支援の枠組みから取り残される人びと
しかし、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が発表したモデル試算によると、この限定的なアプローチでは、予防可能とされる380万件の新規HIV感染のうち、わずか5万件しか防げないと見込まれている。
「PEPFARが妊娠中および授乳中の人びとに重点を置くことで、セックスワーカー、男性間性交渉者、注射薬物使用者、トランスジェンダーなど、HIVの感染リスクが高い主要な人びとが後回しにされる懸念があります」と、MSF米国グローバルヘルスアドボカシーおよび政策責任者であるミヒル・マンカドは指摘する。
「これらのコミュニティこそが、長期作用型PrEP(LA-PrEP)の恩恵を最も受けるべき人びとです」
もし米国政府が本気で世界的なHIV感染対策に取り組むのであれば、妊娠・授乳中の女性と並んで、こうした主要層にもPEPFAR支援によるLA-PrEPへのアクセスを優先的に確保すべきです。
ミヒル・マンカド MSF米国グローバルヘルスアドボカシーおよび政策責任者

利益優先の戦略が薬へのアクセスを阻む
ギリアド・サイエンシズ社の現行戦略は、流行の抑制よりも企業利益を優先しており、対象外の地域に暮らす人びと(特に感染リスクの高い主要層)が、命を守る可能性のある治療法にアクセスできない状況を生み出している。
UNAIDSのモデル試算は、こうした主要層へのアクセスの重要性を強調しており、例えばフィリピンでは、主要層の58%(全人口の2%)にレナカパビルを提供することで、国内の新規HIV感染の45%を防ぐことができると示している。
それにもかかわらず、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ペルーなど、レナカパビルの臨床試験に参加したコミュニティを含むこれらの国々では、リスクの高い人びとが現行計画の対象外のまま取り残されている。
「不透明な価格設定、制限的なライセンス供与、そして不十分な国際目標という今の状況では、予防可能なHIV感染のリスクにさらされ続ける人びとがあまりにも多すぎます」とMSF南アフリカ地域メディカル・ユニットのHIV/結核上級顧問、アントニオ・フローレスは話す。
「私たちはギリアド・サイエンシズ社に対し、すべての低・中所得国にライセンス供与を拡大すること、価格設定の透明性を確保すること、そして、すべての人が命を守る医薬品にアクセスできるよう価格を引き下げることを強く求めます」
グローバルヘルスの関係者たちは、必要としているすべての人びとが持続的に医薬品にアクセスできるよう、資金を投入し、政治的意志を持って取り組むべきです。科学的根拠は明確であり、需要は差し迫っています。
アントニオ・フローレス MSF南アフリカ地域メディカル・ユニットHIV/結核上級顧問
