「食べ物も、水も、着るものも足りません」紛争下で人口が急増した避難民キャンプ 人びとの悲痛な訴え

2021年01月18日
ビンチ・イ・シンコ・ジューニョ避難民キャンプに設置されたMSFの診療所 🄫 MSF/Amanda Bergman
ビンチ・イ・シンコ・ジューニョ避難民キャンプに設置されたMSFの診療所 🄫 MSF/Amanda Bergman

「毎日毎日、家に帰る夢を見ています」。そう語るのは、モザンビークの北東部に位置するカーボ・デルガード州にあるビンチ・イ・シンコ・ジューニョ避難民キャンプで暮らすジョルジェさんだ。2020年9月24日、ジョルジェさんが住んでいた村・キッサンガは、反政府武装集団による襲撃を受けた。家や家財を焼かれ、全てを失った村の住民はいま、国内避難民となって避難民キャンプに身を寄せている。

2017年から3年以上に渡り、政府軍と武装集団による紛争が続くモザンビーク。カーボ・デルガード州では断続的な襲撃と治安の悪化により、これまでに50万人が住まいを失った。現在避難民キャンプでは、食料や水をはじめ、衣類やテントなど生活必需品も大幅に不足する事態に陥っている。過酷な状況に置かれた人びとの声を伝える。 

家族、家、財産……全てを失った

「武装勢力に襲われた日、私たちは村を離れるか、茂みに隠れるほかありませんでした。その日の夜に徒歩で出ていった人もいましたが、離ればなれになってしまった子どもを探している人もいました。私も3日間村に残り、家族を探し続けました」-ジョルジュさん

 
「ここに来る途中で、甥を失いました。キャンプに向かうために乗っていたボートが沈んで溺れてしまったんです」-モマデさん
 
「妹と甥を亡くしました。2人とも首をはねられたのです。必要であればどこにでも行きます。でも故郷にだけは、危険すぎて帰れません」-スフォさん
 
「政府の食料配給がないときは、空腹のまま寝ています。衣類も調理器具も、雨を防ぐテントさえもありません」-ファティマさん
 
「生活のすべてを支援に頼っています。お金を稼ぐ手段もありません。農業や炭の販売などで生計を立てていましたが、全て失ってしまいました」-ソニアさん

急増する避難民キャンプの人口と高まる感染症のリスク

何年にもわたり激化する暴力と苦難に直面し、人びとには絶望感、疲労感が蓄積している。避難民キャンプでは10人家族が1つのテントの中、敷物もない土の上で折り重なるようにして眠るなど環境は劣悪で、食料や飲み水、衣類や毛布といった必需品も慢性的に不足している。

さらに懸念されるのは、基礎的な医療サービスも受けられない中、間もなく雨期を迎えることだ。人口が急増したキャンプ内ではマラリア、コレラ、はしか、新型コロナウイルスなどの感染症がまん延する恐れがあり、健康状態の悪化が懸念される。また多くの避難民は、家族や最愛の人を失うなどの経験をしており、心理的なサポートを必要としている人も少なくない。

こうした状況を受け、国境なき医師団(MSF)は2020年10月より、ビンチ・イ・シンコ・ジューニョ避難民キャンプで基礎的な医療サービスの提供、および水と衛生に関する援助を開始し、2020年12月からは心のケアも行っている。
またカーボ・デルガード州内の他の地域においても、移動診療の運営、上水道の復旧、トイレや深井戸の建設と改修などに取り組んでいるものの、毎週数百人、時には数千人もの人びとが避難民となる現状に、さらなる対応が必要とされている。

キャンプ内の居住区域。雨漏りを防ぐビニールシートがかけられていない小屋も多い 🄫 MSF/Amanda Bergman
キャンプ内の居住区域。雨漏りを防ぐビニールシートがかけられていない小屋も多い 🄫 MSF/Amanda Bergman

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