新型コロナウイルス:「安全地帯」はどこ? 難民キャンプで感染から身を守るには

2020年06月03日掲載

キャンプの患者の元を訪問するMSFの看護師 © Diego Ibarra Sánchezキャンプの患者の元を訪問するMSFの看護師 © Diego Ibarra Sánchez

「毎日新型コロナウイルスのニュースを見ては、気が滅入っています。市中感染が広がり、感染者も死者も増えています。身を守るすべもないのに、一体どうすればよいのでしょうか」 レバノンのパレスチナ難民キャンプに暮らすフセインさん(60歳)は嘆く。

多くの人びとが密集して暮らす難民キャンプ。そこには、持病があるなど感染リスクが高い人も少なくない。ここで国境なき医師団(MSF)が行っているのが、家からの「外出禁止」プログラムだ。

感染リスクの高い人びとを守る

パレスチナ難民のフセインさんが妻のアイーダさん(53歳)と暮らすのは、ベイルート市南部に位置するブルジバラジネ難民キャンプ。アイーダさんは糖尿病を患っており、定期的に国境なき医師団(MSF)の訪問ケアを受けている。新型コロナウイルスに対し、非常に脆弱な状態にあると言える。そこで夫妻はこの度、感染拡大にあたりMSFが導入した、「外出禁止」のプログラムに参加することを決めた。

外出禁止プログラムは、まず「グリーンゾーン」、つまり安全地帯を決めることから始まる。ウイルスに感染しやすい状態の人は、ここに留まることで感染から身を守ることができる。この安全地帯は、家の中でも、自宅とは別の場所でも構わない。外出禁止の間は、親族や近所の人たちとの接触を最低限に留めることを勧めている。

新型コロナウイルスに感染した際に重症化しやすい人びとを守ることがこのプログラムの目的だ。MSFは、高齢者や、慢性疾患を抱えて生きる人びと、免疫力の弱い人びとの元に通って、この活動に取り組んでいる。

「この密集したキャンプで現実的な対策を考えると、『外出禁止』が最も有効な手段なのです」とMSFの看護師マルタ・ミアゼクは話す。

「『外出禁止』という言葉を使うたびに、『怖い』という反応が返ってきます。物理的な壁を作り出すことだと思われるからです。でも、私たちは患者さんに、外出禁止は必ずしも遠くへ行くことを禁じたり、家族・友人との連絡をすべて断ったりするものではないと説明します。そうと分かると、皆さん安心してくれます。相手の立場に立って考え、患者さんにそのメリットを納得してもらえるようにしています」

MSFの看護師の訪問を受けるパレスチナ難民のアイーダさん 糖尿病を患っている © Diego Ibarra SánchezMSFの看護師の訪問を受けるパレスチナ難民のアイーダさん 糖尿病を患っている © Diego Ibarra Sánchez

ここが我が家の「安全地帯」

マリアムさん(90歳)は糖尿病と高血圧を患っている。マリアムさんもMSFの活動に参加している。キャンプ内の小さな家に5人の家族と一緒に住んでいるので、「安全地帯」探しに、通常より少し手間取った。結局、家族の同意を得て、床に敷いてあるマットレスの中から一つを安全地帯に選んだ。マリアムさんはここ数日、ほとんどの時間をそこに座って過ごしている。

「ここなら安全です。義理の娘は私の身の回りのことをしてくれて、ここをきれいにして消毒もしてくれています」とマリアムは話す。

「感染を防ぐためには、こまめに掃除することが大切だと分かったんです。だから、定期的に物の表面やドアノブ、床を掃除しています。それから、マットレスの周りの表面には特に注意しているんです」と義理の娘のイスラーは話す。マリアムからは安全な距離を空けて座っている。

90歳になるマリアムさん 持病があり、感染した際のリスクが高い © Diego Ibarra Sánchez90歳になるマリアムさん 持病があり、感染した際のリスクが高い © Diego Ibarra Sánchez

心のケアにもつながる

MSFは、外出禁止について家族に教えるだけでなく、衛生用品キットも配布している。「常に水を使えることと、洗剤や清掃用具は外出禁止の成功に欠かせません」とMSFの健康教育担当スタッフを務めるダヤナ・タバラは話す。同僚である看護師のハラと一緒に、ダヤナは患者と親族に自衛策と予防法を教えている。

ブルジバラジネ難民キャンプのチームは、パイロット・プロジェクト参加に合意した世帯を定期的に訪問している。看護師は、患者の慢性疾患に関連した通常の健康診断を実施する。健康教育担当スタッフは、家族の健康状態を確かめ、推奨された措置を続けられるように図る。

2人の訪問は、参加世帯の心の健康にも貴重な効果をもたらした。外出禁止を行うと、他人に会えなくなるので、MSFスタッフは家族以外で会う数少ない相手の一人となる。

MSFは、ベッカー県中部に位置するバール・エリアス町でも同様の活動を実施。感染リスクの高い人びとを守るための活動が続いている。

難民キャンプでの訪問ケアにあたるMSFの看護師とヘルスプロモーター © Diego Ibarra Sánchez難民キャンプでの訪問ケアにあたるMSFの看護師とヘルスプロモーター © Diego Ibarra Sánchez

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