「あなたのためにここにいる」痛みと不安に震える子どもたちを支える~イラクからの手紙

2019年06月04日掲載

モスルで活動中の佐藤看護師。外来診療に来たサリムくんと © MSFモスルで活動中の佐藤看護師。外来診療に来たサリムくんと © MSF

佐藤真史 国境なき医師団(MSF)手術室マネジャー/イラク・モスルより

ご無沙汰しています。お元気ですか?今、私は手術室マネジャーとして6ヵ月モスルに派遣されています。戦闘で多くの病院が破壊されてしまったため、国境なき医師団(MSF)の病院に多くの患者さんが運ばれてきます。病院には、戦闘に巻き込まれてけがをしたり、交通事故にあったりした子どもたちもたくさんいます。
 

手術室のドアに飾ったスタッフの紹介。「あなたのために私たちはここにいます!」と患者さんにメッセージを添えている
© MSF手術室のドアに飾ったスタッフの紹介。「あなたのために私たちはここにいます!」と患者さんにメッセージを添えている
© MSF

5月に出たMSF日本の記事に出ていた子どもたちは、みんな知っています。多くの子が、最初は痛みと不安で震えています。どうしたら少しでも不安が軽減できるのか、いつも考えています。現地スタッフに教えてもらったアラビア語を使って笑顔で語りかけたり、同じ年代の子を持つ手術室スタッフには、自分の子と同じように声がけしてあげてほしいとお願いしたり。手術室スタッフはみんなよく心得ていて、本当に優しそうな声がけをしてくれます。 

治療中のサリムくん © Elisa Fourt/MSF治療中のサリムくん © Elisa Fourt/MSF

 記事にも出ていたサリムくんは、強く印象に残っています。交通事故で運ばれてきたときは、両足ともにひどい状態で、やせこけて、痛みに打ち震えていました。外科医は、できるだけ足を切断しないようにと努力したのですが、それも実らず、右足は膝下から切断せざるを得なくなりました。手術室の外では、いつもお父さんが心配そうに、手術が終わるのを待っていました。

術後、これで大丈夫だろうということになりましたが、数日後に再確認したところ傷口がひどくなってしまっていて、再度の手術が必要ということになりました。それがわかったのが木曜日。通常この病院では金曜と土曜に手術室を閉めているのですが、外科医から「日曜日まで待てない」と判断され、休日の土曜日に手術をすることになりました。多くの現地スタッフが、休みの日でも喜んで出勤してくれました。

その日、サリムくんの足を膝上から切断する手術を実施しました。みんなの努力の成果もあり、その後は病状が良くなり、順調に回復していきました。顔もどんどん丸くなって、見るからに栄養状態も改善していることがわかりました。車いすで動いているのを見かけて挨拶すると、笑顔で手を振ってくれて、本当に嬉しく感じました。その後、無事に退院が決まり、私は手術室スタッフにすぐにその報告をして、みんなで喜びあいました。

退院後も時々、サリムくんは外来に来ていて、声をかけると元気そうに返事をしてくれます。先日は、仕事中に病院でばったりサリムくんに会いました。手術後の経過が順調で、ちょうど私の最後の出勤日となる日に、創外固定の器械を外す手術が決まり、無事に器械が外れたそうです。とっても嬉しい最新ニュースです。

もうすぐ、私のミッションも任期が終わります。私の後に着任するのも日本人のスタッフですが、患者さん中心の、まとまりのある手術室が今後とも継続できるように、バトンタッチしたいと考えています。 

手術室マネジャー 佐藤真史

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