イエメン:タイズ市での戦闘が激化——MSF、1週間で負傷者400人を治療

2016年03月18日

イエメンのタイズ市で戦闘が激化し、国境なき医師団(MSF)が支援している複数の病院の救急処置室では、2016年3月9日から16日までの1週間で合計400人以上の負傷者を受け入れた。その多くが民間人だ。人口が密集する市街地で戦闘が繰り広げられ、民間人に壊滅的な影響を及ぼしている。

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市民を巻き込む無差別攻撃の実態

イエメンでMSFの活動責任者を務めるウィル・ターナーは「患者の負傷原因は主に空爆、爆発、砲撃、銃撃、狙撃、そして最近は地雷です。市民は1年前に戦闘が始まってから苦しめられ続けていますが、昨今の戦闘の激化で、武力衝突に巻き込まれる危険がさらに増しています」と指摘する。

MSFはこれまでにも、紛争の各陣営に民間人保護と医療施設の尊重を繰り返し呼び掛けてきた。ターナーのもとには、患者やスタッフから胸の痛む体験談が寄せられている。ある高齢男性は、4人の子どもたちとつつましい生活を送っていた。その自宅に砲弾が命中し、爆発した。子どもの1人は身体のまひが一生残ると懸念されている。また、ほかの3人の子どもも負傷した。

また、3人の子どもをもつある母親は、水を調達しようと外出しているときに銃撃を受け、命を奪われた。一家6人が就寝に空爆があり、住居が破壊されて全員亡くなったケースも報告されている。ターナーは「ここで挙げた事例は、タイズ市民が日ごろ向き合っている現実の一端に過ぎません」と話す。

タイズ各地でさまざまな勢力による病院への破壊・加害行為が報告されており、市民が緊急医療を利用することがさらに難しくなっている。

MSFは、民間人および医療スタッフ・施設を保護し、全ての傷病者の医療施設利用と医療・人道援助物資の搬入を妨げることのないよう 、紛争の全当事者に改めて求める。

MSFは公平かつ中立の医療・人道援助団体として、イエメン国内で25軒以上の病院を運営または支援し、宗教、民族、政治・軍事的帰属の別なく人びとに医療を提供している。2015年3月以降、合計3万1000人の戦闘被害者がに治療を提供した。

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