新型コロナウイルス感染症:スペインでの対応活動 緊急人道援助の視点が欠かせない
2020年04月01日 国境なき医師団(MSF)は、マドリード市内にあるアルカラ大学およびアストゥリアス公大学病院と連携して、大学センター分館内に診療拠点を設置した。緊急診療の混雑緩和を図り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)軽症者の治療に当たるためのものである。
レガネス市では、同市市役所およびセベロ・オチョア病院と連携して、ベッド数120床の診療拠点をカルロス・サストレ病棟内に設置した。
流行制御には緊急人道援助の視点が欠かせない
MSFは、これまで蓄積してきた専門知識と経験を生かして、スペイン社会と医療当局を支援することで、COVID-19の影響抑制を図っていく。
「COVID-19流行を制御していくには、緊急人道援助の視点が必要です。従来の常識に囚われない解決策を模索して、症例数増大に対応していく。そうしなければ、死者も感染者も減らせません」と、MSFスペイン会長ダビド・ノゲラは話す。
MSFは、保健省を含めた医療当局への支援と助言を通じて、仮設診療拠点のプロトタイプを開発し、診療体制の拡充につなげる。マドリード、カタルーニャ、ビトリアにも同様の拠点を設けるため、MSFは用地選定の支援にもあたる。
セベロ・オチョア病院(在レガネス市)とアストゥリアス公大学病院(在マドリード市アルカラ・デ・エナレス)をサポートする2つの診療拠点には、200床余りのベッド数がある。マドリードでMSFのCOVID-19対応コーディネーターを務めるパウラ・ファリアスによれば、これらの拠点が医療機関を支援して軽度の症状の人びとを引き受けることで、病院側は、救急部門の混雑が緩和され、COVID-19の最重症例の治療に専念できる。入院が必要な患者はICUに移ることになる。
レガネス市のカルロス・サストレ分館にあるセベロ・オチョア病院の診療拠点は、地元議会と病院との連携の下に設置された。病床数は120。アルカラ・デ・エナレス診療拠点は、MSF、アストゥリアス公大学病院、アルカラ大学が共同して運営している。分館はアルカラ大学の敷地にある。病床数は82。
両拠点で勤務する医療スタッフは、上記の病院から派遣されることになる。拠点の運営も、これらの病院が担い、自治体・保健省・地元社会が病院支援に当たる。患者のケア拠点が稼働すれば、MSFは各拠点にロジスティック支援とモニタリング担当チームを派遣する。
ファリスは説明する。「両方の拠点に研修担当を配置し、医療危機時における病院の症例管理について、医療スタッフに教えていきます。防護服使用に関してもあらゆることを教えていきます。診療拠点が完全稼働したら、連絡調整は病院の手に移ります」
バルセロナにおいても診療拠点の開設へ
カタルーニャ州では、MSFはカト・サルートゥ(カタルーニャの医療当局)とバルセロナ市議会を含む地域・地方レベルの医療当局への支援と助言を実施している。
バルセロナでは、MSFは、市内病院(デルマル病院とヴァル・デブロン病院を含む)を拡張するために、バルセロナ・ヘルス・コンソーシアムに助言と支援をおこなっている。MSFは、各院の分館内に設置予定の外部診療拠点の開設に向けて戦略的支援に当たっている。これらの拠点でCOVID-19患者の治療を引き受けることができれば、デルマル病院とヴァル・デブロン病院の集中治療室は、最重症例に集中できる。
MSFは、介護施設の役員会にも、(1)症例管理、(2)リスクアセスメント、(3) 衛生・防護策導入による施設内感染経路遮断、などについて助言している。
ノゲラは語る。「施設訪問チームが緊急課題を特定しています。目指しているのは、援助に関するモデル、ツール、プロトコルを策定して、全州民がウェブポータルで利用できるようにすることです」
「目標は3つあります。第1に、COVID-19対応の連絡調整プラットホームを支援することです。公衆衛生上の危機に対応した経験を活かして実施します。第2に、病院・診療所の混雑を緩和することです。最重症例の治療に注力できる態勢を整えます。第3に、COVID-19に最も感染しやすいとみられる高齢者の保護策を強化することです」