拡大するはしか流行 MSFが子どもたちへの予防接種で対応

2019年07月01日掲載

予防接種を受ける子ども ©MSF 予防接種を受ける子ども ©MSF

4月下旬、雨期の到来を告げる嵐が中央アフリカ北部バカガ州に迫っていた。バカガ州は、チャドおよびスーダンと国境を接する州。首都バンギまで700km余りの場所に位置する。国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーター、ロヘル・グティエレスは、はしかが集団発生したワンダ・ジャレ村に向かっていた。

「村では毎週日曜に市場が立つので、この機会にできるだけ多くの子どもにワクチン接種をしようと思いました」

バカガ州では、ワンダ・ジャレをはじめとする3村で、はしかが集団発生した。国境なき医師団(MSF)は4月22日~5月13日、はしかの治療と予防に対応した。「緊急対応チームが現地入りした時点で、ティリングルー、ンディファ、ワンダ・ジャレの3村ではしかが集団発生していました。人口1万人のワンダ・ジャレ村では、200人を超える子どもの患者を登録・治療しています。おそらくそこが集団発生の中心だったのでしょう」と話すのは、チームの医療コーディネーター、ステファノ・ペロッティだ。国内の他の州と異なり、バカガには業務を維持している保健医療施設が複数ある。

「他の場所とは違い、この州の問題は治安の乱れではなく、定期的な予防接種が行われていないことにあります」 

ワクチンを1400回投与

集団予防接種を待つ人びと © MSF集団予防接種を待つ人びと © MSF

ワンダ・ジャレでの集団予防接種初日、チームはある建物の中庭にビニールシートで即席の隔離施設を設置した。この活動を通じて、62人の子どもが入院した。チームの物資調達担当であるガエタン・ゴ・マンダコッシは、はしかに加え「百日せきの治療も6例ありました。地域の診療所で予防接種が進んでいない証拠」だと警鐘を鳴らす。緊急対応チームは4日間で、生後半年から5歳までの子ども880人にはしかワクチンを接種したほか、ジフテリア・破傷風・百日せき・ヘモフィルスインフルエンザ菌 b 型(Hib)感染症・B型肝炎を予防するための5種混合ワクチンを1400回投与した。

MSFはさらに、地元民に提供される保健医療の質向上のため、州内の保健省管轄施設7カ所を薬の寄贈と職員の研修で支援している。ここで、マラリア、はしか、下痢、呼吸器感染症などごく一般的な病気を治療するための薬と器具を寄贈し、保健医療講習会を開いた。緊急対応チームは今後も、中央アフリカ共和国全域を対象に、新たな病気の流行を警戒しながら、緊急事態に対応していく。

コンゴでもはしか流行

MSFの看護師から予防接種を受ける子ども © Pablo Garrigos/MSFMSFの看護師から予防接種を受ける子ども © Pablo Garrigos/MSF

コンゴ民主共和国でも6月7日(現地時間)、国のはしかの流行宣言が出された。国境なき医師団(MSF)は、1人でも多くの子どもにワクチンを接種し、感染患者を治療できるよう、国内外の全関係機関に大規模な支援を求めている。

今回のはしか流行は、2011年から2012年に起きた深刻な流行以来、最も致命的なものになりそうだ。実際、1500例よりも多いはしかによる関連死が公式に記録された(2019年5月現在)。既に、過去10年で最も深刻だった2012年の年間死亡数の75%に迫っている。「MSFは保健省との協力のもと、はしかの症例報告のあった場合は速やかにワクチンを接種するとともに、患者を治療し、感染の連鎖を断つべく全力を挙げています。ただ、ここ何カ月かの間に講じられた対策に加えて、さらに多くの人員・資源、組織が必要です。ワクチンと医薬品の確実な供給も欠かせません」と、MSF医療コーディネーターのラシェル・セギンは指摘する。

MSFは2019年初めから、オー・ロマミ、オー・ウエレ、イトゥリ、ルアラバ、カサイ、中央カサイ、北キブ、南キブ、タンガニーカ、ツォポの国内10州で、保健省所属の地元チームとともに、はしかの流行に対応。今回の流行の広がりを受け、感染力の高いはしかの拡大を抑えるため、感染制御策の強化と、チームの派遣エリアを広げている。

5月に緊急援助活動に乗り出したカサイ州カムウェシャ保健区域でも多くの患者が犠牲となった。現地住民のアルベルティーヌさんは、「はしかで村に大変な被害が出ました。どの家庭でも亡くなった人がいます。多い人では、4人も子どもを亡くした世帯もありました」。

予防接種が唯一の対策

はしかにかかった3人の子を連れてMSFの病院に来た母親(右)© Pablo Garrigos/MSFはしかにかかった3人の子を連れてMSFの病院に来た母親(右)© Pablo Garrigos/MSF

はしかに感染するのは主に子どもだ。コンゴでは、繰り返す流行の原因として、低い予防接種率、ワクチンの供給不全または枯渇、弱体化した疫学監視体制、コールドチェーン(低温輸送システム)を揺るがす輸送手段の不足、一部地域の保健医療を麻痺させる武力紛争と避難、患者の保健医療施設利用を抑制・妨害する経済的・地理的障壁——などを挙げている。

「はしかは繰り返し流行しているので、国内の安定したワクチン供給網の維持は不可欠です。今年の後半には、予防接種拡大のための複数の対策が計画されていますが、当面は小児予防接種と感染患者の無償の治療によって、感染の影響を抑え、1人でも多くの命を救うことが急務となります。各保健区域の流行に対応するには、柔軟な対策も必要です」と、MSF活動責任者のウスマン・ムーサ医師は訴える。はしかは非常に感染力の強いウイルス性疾患で、特定の治療法はない。予防接種が唯一の対策だ。MSFはコンゴで、2019年に入って36万1079人の子どもにワクチンを接種し、1万4785人の患者を診療している。 

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