誰もいなくなった村 新型コロナウイルス流行下のコロンビアで暴力が再燃

2020年11月11日掲載

暴力の激化で人びとは何度も避難を強いられている=2020年2月 © MSF/Luis Angel Argote暴力の激化で人びとは何度も避難を強いられている=2020年2月 © MSF/Luis Angel Argote

 10月下旬に新型コロナウイルスの感染者数が100万人を超えた南米・コロンビア。世界で9番目に多い感染者数となっている(世界保健機関調べ)。この国でいま、武装勢力による暴力が激化。多くの人びとが避難を強いられ、心の健康に深刻な影響を及ぼしている。

暴力の日々が再び

コロンビアでは半世紀にわたる内戦を経て、2016年に政府とコロンビア革命軍(FARC)との間で和平合意が結ばれた。しかし、翌2017年後半にはコロンビア国内にある複数の地域で暴力が再燃。今年に入り、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃は一時落ち着きを見せたものの、この数カ月で再び状況が悪化している。武力紛争が続いた50年の中で最も被害の大きかった年に近い状況だ。

特に深刻なのが、東部のノルテ・デ・サンタンデール県と西部のナリーニョ県だ。人びとはさまざまな武装勢力間の抗争に巻き込まれて殺害や脅迫の恐怖にさらされ、心と体の健康に深刻な影響を及ぼしている。

ナリーニョ県では、太平洋岸の要衝の地であるマグイ・パヤン市の支配権を巡って武装勢力間の衝突が起き、住民は、今年に入って7回も避難を余儀なくされた。国境なき医師団(MSF)が10月初旬にパティア川付近の地域を訪問したところ、市内のサンルイス村は無人と化し、すべての住民が他の町や村に避難していることが分かった。

また、7月にはトトゥミト=カルボネラス村で8人が殺害された後、約800人が3つの学校に避難した。避難民には、コロンビア人だけでなく、ベネズエラから移動してきた人びとや、先住民のワユー族なども含まれる。MSFは、こうした人びとが避難生活を送った18日間、救急医療、基礎的な医療、心のケアを行い、帰還後も心の健康状態を見るために戸別訪問を行った。
 

暴力の再燃が人びとの心の健康に影響を及ぼしている=2020年2月 © MSF/Luis Angel Argote暴力の再燃が人びとの心の健康に影響を及ぼしている=2020年2月 © MSF/Luis Angel Argote

ストレスと恐怖の中で悪化する心の健康

避難を強いられたり、ある地域に閉じ込められたりすると、体の健康は環境に大きく左右されると現地のMSFチームは報告している。清潔な飲み水の不足や衛生状態の悪さは、胃腸障害や皮膚病につながることが多い。さらに、MSFの患者のほとんどは、長期にわたって診療を受けられなかったと話している。糖尿病や高血圧など慢性疾患の患者や、心に不調がある人にとって、適切な治療をすぐに受けられないことは深刻だ。

さらに、暴力が人びとの心の健康に大きな影響を与えている。対立が繰り返され、絶えず危機感にさらされているため、安心することができない。その結果、強いストレスや恐怖を覚え、うつ病に陥る人が後を絶たない。紛争が続き、治安は不安定で、日常生活を再開することもできない。

コロンビアでMSFの活動責任者を務めるスティーブ・ヒデはこう話す。「先行き不透明な状況が続く限り、人びとは負の感情に苦しめられるでしょう。ここでは医療従事者も医療機関も足りず、必要な人が救急治療や基礎的な医療、心のケアを受けられないでいます。紛争が激化すればするほど、この状況の解決は難しくなる一方です」 

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で暴力が悪化するコロンビアにおいて、MSFは心のケアや救急医療をはじめとした援助を提供していく。

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