WHO が緊急事態宣言を出した「エムポックス」──ワクチンの供給拡大が急務
2024年08月20日
WHO は、エムポックスへの対応に必要な資金を提供するよう資金拠出機関や援助国に訴えており、MSF はこれを強く支持する。包括的かつ協調的な対応が求められ、そこには疫学サーベイランス、検査の能力向上、地域住民の意識向上と参画、治療・ワクチン・診断へのアクセスの保証など、流行対応に必要なあらゆる要素が含まれる。
そのすべての要素が必要だが、特に以下の行動により、既存のワクチンへのアクセスと使用を大幅に改善することができる。
2種類のワクチンをWHO「緊急使用リスト」に加える
WHOは、WHOが認証する国の薬事承認当局によってすでに承認されている2種類のエムポックスワクチンを「緊急使用リスト(EUL:Emergency Use Listing)」に加える手続きを早める必要がある。EULに載ることで、エムポックスワクチンの増産を促進し、途上国へのワクチン供給を支援する国際機関、Gaviワクチンアライアンスやユニセフが、これらのワクチンを調達して供給できるようになる。
ワクチンを大量備蓄している国は寄付を
アフリカCDCのカセヤ事務局長は、この感染症に対応するために、少なくとも1000万回分のエムポックスワクチンが必要になると推計している。MVA-BNワクチン*を大量に備蓄し、活発な流行が発生していない国々は、エムポックスの影響を受けているアフリカの国々へ配分できるよう、できるだけ多くのワクチンを寄付するべきである。
- ※*MVA-BNワクチンは、米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)が承認した唯一のエムポックスワクチン。
ワクチン使用の補償について法的制度の用意を
すべての関係者は、この流行下で子どもや若者にMVA-BNワクチンを使用した場合の補償について、無過失補償基金などの法的制度を用意すべきである。MVA-BNワクチンは小児への使用が認可されていないが、2022年のエムポックス流行時に米国疾病対策センターによって推奨された。また、WHOの予防接種に関する戦略的諮問委員会(SAGE)によって、エムポックスに感染するリスクの高い子どもたちへの使用が推奨された。
ワクチン価格の見直しを
MVA-BNワクチンの現在の価格は、エムポックスが流行しつつあるほとんどの低・中所得国には高価すぎるものである。製造元のババリアン・ノルディック社は価格を見直し、アフリカの新興ワクチンメーカーとの提携を早急に進め、タイムリーに完全な技術移転を行うことで、アフリカで流行する病気を予防するワクチンを将来的にアフリカ大陸でも製造できるようにしなければならない。
今すぐワクチンを届けるために
ワクチンを必要とする成人にも子どもにも今すぐ届けるために、必要なあらゆる手段を早急に講じる必要があります。
医師 ジャスティン・B・エヨング
コンゴにおけるエムポックスに関する動きとMSFの活動
2023年7月
MSFは赤道州ボロンバで、エムポックスに対応する活動を開始した。
2023年7月
WHOがエムポックス流行に関して、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。2023年に、約1万4626人のエムポックス感染疑い例と654人の死亡が報告された。
2024年5月
MSFは赤道州のインゲンデ保健区域でエムポックスに対応する活動を行う。
2024年6月
MSFは南キブ州のウビラ保健区域と南ウバンギ州のブジャラ保健区域でエムポックスに対応する活動を開始。
2024年7月
MSFは赤道州のビコロで活動を開始。また、北キブ州のゴマ周辺の避難民キャンプでの活動に、エムポックスの疫学サーベイランスと予防対策を導入した。
2024年1月から8月初旬まで
1万4000人以上の感染疑い例と、511人近くの死亡例が報告されている。コンゴの26州のうち23州にエムポックスの感染が広がっている。
2024年8月
エムポックスの流行について、アフリカ疾病対策センター(アフリカCDC)が「アフリカ大陸の安全保障に関わる公衆衛生上の緊急事態」と宣言。世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。