再び激化する戦闘──コンゴ民主共和国 暴力に巻き込まれる市民、人道援助活動も困難に
2024年06月12日
コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)では、今年に入ってから反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」を含む複数の武装勢力とコンゴ軍との戦闘が激化しており、市民が再び暴力に巻き込まれている。北キブ州ゴマで国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターを務めるマリー・ブランが状況を報告する。
治安の悪化は、北キブ州の州都ゴマ周辺ですでに避難している人びとに、どのような影響を及ぼしていますか?
過去2年間、私たちは北キブ州、そして最近では南キブ州において、戦闘から逃れた人びとが何度も移動を余儀なくされる状況を目の当たりにしてきました。多くの避難民は、北キブの州都ゴマの郊外にある簡易的なキャンプに避難しています。
ここ数週間で、ゴマは次第にいくつかの前線に囲まれるようになり、60万人から100万人の避難民が、もともと暮らす200万人の住民と一緒に押し込められるような状況になっています。人口密度の高いキャンプとその周辺に武装勢力が集中し、軍事拠点が避難民に近接するようになり、暴力のレベルが全般的に高まっています。
市民はさまざまな武装勢力間の戦闘に巻き込まれています。その中で、負傷し、命を落とし、犯罪──特に性暴力の被害に遭っています。

また、人びとが置かれた危険な状態は、極めて不安定な生活条件によってさらに深刻化しています。避難民は人口密度の高いキャンプで、水や衛生サービスを十分に利用できない劣悪な衛生環境の中、でこぼこの地面にビニールシートで作ったシェルターで暮らしています。飲み水や食料を手に入れることも非常に難しい状況です。
激化する暴力は、市民にどのような影響を及ぼしていますか?
MSFが確認した中でも、ゴマ周辺のキャンプでの激しい砲撃により、2024年2月以降、23人の死者と52人の負傷者が報告されています。国連によると、複数の国内避難民の居住地に影響を与えた砲撃で、5月3日の朝だけでも、少なくとも18人の民間人(そのほとんどが女性と子ども)が死亡し、32人が負傷しました。
MSFは今年に入ってから、昼夜を問わず、キャンプ内での銃撃戦や手榴弾の爆発を目撃しています。MSFが活動するキャンプやその周辺では、24件の砲撃事件が発生し、MSFは、キエシェロ病院で、赤十字国際委員会(ICRC)から搬送された101人の命に別状がない負傷者(その70%は民間人)を受け入れました。
また、MSFは患者が治安上のリスクを恐れ、治療を受けるのを遅らせていることも懸念しています。

このような状況下で、MSFはどのように活動を続けているのですか?
北キブと南キブで、MSFのチームは不安定な情勢の中で活動しています。移動や人道援助の提供は困難で、私たちが支援する診療所へのアクセスも不確かなものになっています。この危機に対するMSFの対応は、医療・人道的なものであるにもかかわらず、MSFのスタッフは武装勢力による脅迫行為を免れることはできませんでした。
また、主に北キブのゴマと、南キブのミノバ周辺のキャンプ付近での衝突のため、MSFは何度か活動を中断しています。南キブからゴマへと続く道路は現在封鎖されており、物資はキブ湖からボートで運ぶか、バイクで未舗装の道路や荒地を走るしかありません。また、戦闘が激化している郊外にも、ゴマからの物資は届きません。
MSFが支援するマシシとムウェソの総合病院がある北キブのマシシ郡では、医療チームが年初から数十人の戦傷者を受け入れていますが、数カ月にわたって交通アクセスは困難を極め、危険な状態が続いています。このため、人道援助活動が妨げられ、人びとは重要な人道援助を受けられなくなっています。
MSFはすべての紛争当事者に、紛争時における国際人道法の尊重と、民間人、医療施設、患者、医療スタッフを保護することを求めます。
