医療、食料、水…全てが足りない──コンゴで政府と武装勢力が再び衝突 数万人に緊急援助を

2022年11月24日
キャンプの生活環境は厳しく、適切な避難所の整備が急務だ Ⓒ Moses Sawasawa
キャンプの生活環境は厳しく、適切な避難所の整備が急務だ Ⓒ Moses Sawasawa

「わずか数日の間に、何千人もの人びとが雨の中、森で集めたユーカリの枝や葉で仮住まいを作っていく姿を見ました。ここでは、医療、住居、食料、水、トイレなど、全てが不足しています。医療・人道援助の緊急対応を開始し、人びとの健康を守る必要があります」
 
そう話すのは、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)で国境なき医師団(MSF)の医療コーディネーターを務めるマリア・マシャコ医師だ。
 
いま、コンゴでは数万人の人びとが、北キブ州の州都ゴマから北10キロにあるカニャルチニャとその周辺地域の非公式キャンプに避難している。ルチュル郡で反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」とコンゴ軍の間で新たな戦闘が起きたためだ。

ゴマとルチュルを結ぶ道に位置するカニャルチニャは、既にここ数カ月間の戦闘により避難した数千人の人びとや、昨年5月の火山噴火の影響を受けた人びとを受け入れていた。避難民の生活環境は以前から悪かったが、新たに人びとが押し寄せたことで、さらなる改善が求められている。

戦闘の不安から逃れても……

州当局によると11月3日の時点で、今回の大規模な避難により、ゴマ市郊外では少なくとも7万4000人が援助を必要としている。ただ、この数日間でどれだけ多くの人びとがキャンプに到着したかを正確に把握することは難しい。

「2週間前まで誰もいなかった場所が、いまは人が入りきらないほどになっていることもあります。現場で見る限り、カニャルチニャの人口は、週末の間に3倍になったようです」と、マシャコ医師は説明する。新たに到着した人びとは、住めそうな場所に仮住まいを作り、暮らしている。学校も例外ではなく、学生と避難民がその場しのぎで同居している状態だ。

5月から学校の教室で生活している女性。赤ちゃんは10月にMSFが支援するカニャルチニャ診療所で生まれたが、生活が困難で食べるのもままならず、母乳をあげることも難しい Ⓒ Moses Sawasawa
5月から学校の教室で生活している女性。赤ちゃんは10月にMSFが支援するカニャルチニャ診療所で生まれたが、生活が困難で食べるのもままならず、母乳をあげることも難しい Ⓒ Moses Sawasawa

「カニャルチニャまで、15時間以上歩きました。いま、私たちはムガラの学校の裏で、近所の人たちと一緒に、何も持たずに暮らしています」と、ルガリ郡の戦闘から逃れてきたジャン=クロードさんは話す。

新しい隣人のジュスティンもキブンバから家族と共に最近この場所に到着したが、現在の状況を悲しげに語った。「不安から逃げてきたのに、やっと見つけた場所でも苦境に立たされています」

医療も水も足りない

MSFが支援するカニャルチニャ診療所では、10月には1日平均80件だった診療件数が、現在では250件にまで激増した。こうした医療ニーズの高まりに対応するため、MSFは診療所の医療チームの能力を高め、24時間体制で患者を受け入れ続けられるよう、支援を強化していく予定だ。

MSFは、今年7月から同診療所を支援。避難民や火山噴火で避難した人びと、地域の全ての住民に、無償で質の高い医療を提供している。呼吸器感染症や下痢、皮膚感染症の患者が多く、7月以降は1万件以上の診療が行われ、その3分の2以上を避難民が占めていた。

また、人道援助機関や団体の不在が深刻な中、MSFはムニギとカニャルチニャの保健区域の多くの場所で、避難民に水を供給している。

MSFは1万5000リットルの水が入った給水車を1日に3回手配し、人びとに水を供給している Ⓒ Moses Sawasawa
MSFは1万5000リットルの水が入った給水車を1日に3回手配し、人びとに水を供給している Ⓒ Moses Sawasawa

キャンプは混雑しており、衛生状態も悪いため、コレラなどの水を介して感染する病気が広まりやすくなっています。
10月末からは飲料水の配給量を2倍に増やしました。現在、10カ所以上の拠点で、1日20万リットルの水を届けています。
それでも、ニーズの大きさには追い付けていないのが現状です

MSFの医療コーディネーター マリア・マシャコ医師

一刻も早く人びとに避難所を

ここ数週間は、雨が激しくなってきているため、避難民の住環境はさらに不安定なものになっている。呼吸器感染症やマラリアなどの病気になる恐れが現実になりつつあるのだ。そのため、適切な避難所の整備が最優先だ。また、食料不足も心配の種になっている。畑に行けず、収入源もないため、多くの家庭が食べるものを人道援助に頼っている状態だ。

激しい雨の影響でキャンプ内の衛生状態は悪化している Ⓒ Moses Sawasawa
激しい雨の影響でキャンプ内の衛生状態は悪化している Ⓒ Moses Sawasawa

さらに、避難民、特に女性は暴力のリスクにもさらされている。「カニャルチニャで活動を開始して以来、私たちは120人近い性暴力の被害者を治療してきました。その8割以上は避難民です。被害者の大半は、食べ物や暖をとるための薪を探しているときに道路で襲われたと話しています」とマシャコ医師は語り、こう続けた。「今の時点では、保護関連の団体も含めた他の人道援助機関や団体がここで活動を開始し、困難な状況に置かれた人びとを助けに来ることが何よりも重要です」

2022年3月末から断続的に起きているコンゴ軍と「3月23日運動(M23)」の武力衝突によって、少なくとも18万6000人が避難を余儀なくされた。いま、その数字にさらに数万人が加わり、人道危機は一層深刻になっている。

高熱を出した娘を連れて、カニャルチニャ診療所を訪れた女性。MSFはここで無償の診療と適切な治療を提供している Ⓒ Moses Sawasawa
高熱を出した娘を連れて、カニャルチニャ診療所を訪れた女性。MSFはここで無償の診療と適切な治療を提供している Ⓒ Moses Sawasawa

MSFの緊急援助活動

ニーラゴンゴ郡に加え、MSFはルチュル、ビンザ、キビルジ、ルチュル領内のバンボでも活動を展開。地域の住民に不可欠な医療援助を続ける一方、新たな避難者のニーズに応える最善の方法を検討している。

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ