感染力は新型コロナの10倍近く コンゴ、はしかの再流行で子どもたちの命が危機に

2021年04月12日掲載

はしかを患うコンゴの子ども 呼吸困難や皮膚の発疹の症状が出ており、総合病院へ移送される © Franck Ngonga/MSFはしかを患うコンゴの子ども 呼吸困難や皮膚の発疹の症状が出ており、総合病院へ移送される © Franck Ngonga/MSF

感染力が高いウイルス性疾患の「はしか」。有効なワクチンが存在するにも関わらず、いまだ世界では乳幼児の主な死因の一つであり続けている。特に深刻なのが、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)だ。今年に入ってから1万3000件以上の感染が確認されている。コロナ禍の陰ではしかの流行が広がるコンゴから報告する。 

2年で約8000人の子どもが死亡

2018年から2020年にかけて、コンゴは史上最悪のはしかの流行に見舞われた。わずか2年で46万人余りの子どもがこの病気にかかり、8000人近くが死亡。その4分の3は5歳未満だった。

当時、MSFはコンゴの26州のうち22州に緊急対応チームを配置。9万人の患者を治療し、230万人余りの子どもに予防接種を行った。コンゴ当局も数百万人の子どもたちに補助的な予防接種を実施し患者数は大幅に減少したものの、感染の連鎖を断ち切るには至らなかった。しかし、2020年8月、保健大臣は流行の終息を宣言した。

そしていま、再びはしかが流行している。「昨年末以降、複数の州、特に北ウバンギ州と南ウバンギ州で、はしかの患者が新たに増え始めています」とコンゴでMSFの緊急対応チームのコーディネーターを務めるアンソニー・ケルゴシアンは話す。「感染拡大に歯止めをかけて一人でも多くの命を救うために、急遽、移動対応チームを派遣しました」

昨年12月、南ウバンギのボゴセ=ヌベア保健区域にMSFのチームが入ったところ、膨大なニーズがあることが判明した。数週間の間に、MSFは5000人近いはしか患者を治療。その大多数は子どもであった。さらに、約7万人の子どもたちに予防接種を実施し、感染拡大の食い止めを図った。

はしかの子どもの治療にあたるMSFの医師 © Franck Ngonga/MSFはしかの子どもの治療にあたるMSFの医師 © Franck Ngonga/MSF

保健所のバイクは1台だけ

その後チームが向かった北ウバンギ州のボソボロ保健区域でも、状況は深刻だった。「2月中旬にボソボロに着いて以来、MSFは診療所8カ所と総合病院で、患者のケアにあたるスタッフをサポートしています」と、ボソボロでMSFのプロジェクトを率いるファースティン・イグルは説明する。

MSFは、重症患者を中心にはしか患者の容体管理を現地スタッフに教えてきた。病院はすぐに満床になったため、ベッドの数を増やし、はしかやそれに伴う栄養失調が悪化した子どもたちを治療できるようもにした。

また、MSFはこの孤立した保健区域で6万6000人の子どもの集団予防接種を開始。さらに、早い段階で新たなはしか流行を発見できるよう、はしかの発生状況について調査・集計・監視を行う疾病サーベイランスの研修を現地の医療従事者へ行った。

しかし、地元の保健当局には人も物資も足りていない。イグルはこう嘆く。「地元の保健所にはバイクが1台しかない上に壊れているのです。これでどうやって予防接種の指揮をとり、森や川を越えないと行けないような場所へワクチンを届けるのでしょう」  

ボソボロではしかの活動地へ向かうMSFの緊急チーム © Franck Ngonga/MSFボソボロではしかの活動地へ向かうMSFの緊急チーム © Franck Ngonga/MSF

感染力の強いはしか

はしかは、咳やくしゃみにより、飛沫感染と接触感染だけでなく空気感染でも広がる。「はしかは世界で最も感染力の強い病気で、新型コロナウイルス感染症の10倍近くに達するほどです」とケルゴシアンは話す。

子どもがはしかにかかると、重い合併症を引き起こすことがある。はしかは、これまでにさらされた病原体に関する体内の免疫記憶を消し去るため、子どもの健康と命はその後何年間も危険にさらされる。その一方で、安価で85%の効果があるワクチンが存在し、接種を受けた人を何十年も守ることもできる。

「コンゴでこの命取りの病に打ち勝つには、二つの対策が必要です。まず、子ども1人につき2回接種を行い、ワクチン接種率を95%に引き上げること。そして、へき地の人びとなど、弱い立場に置かれ従来のセーフティーネットからこぼれ落ちてしまう人びとへの接種を定期的に行うことです。しかし、実現にはまだ時間がかかりそうです」

コンゴでは出生率が非常に高いため、その分この病気にかかる子どもも多い。設備の整っていない医療施設では、質の高い医療を徹底することはできない。また、気候や地形、治安面の問題から、医療従事者が現地入りすることができない地域もある。

体制の改善を待つだけでは命を救うことはできない。「MSFのチームは、北ウバンギ州、南ウバンギ州、バ・ウエレ州、マニエマ州に派遣されていますが、患者さんのケアや地元の医療チームを支援する最中に、ふと孤独を感じることがあります」とアンソニーは話す。「いまのペースで症例数が増えるとすれば、緊急対応を拡充しないと追いつけないのですから」

はしかから一人でも多くの命を守るため、MSFは長期的な視点に立ち、感染拡大を食い止める緊急対応を行っていく。 

治療を受け、はしかから回復してきた子ども © Franck Ngonga/MSF治療を受け、はしかから回復してきた子ども © Franck Ngonga/MSF

関連情報