新型コロナウイルス感染症:「葬祭業に関わる人びとも予防対策が必要」 MSFがスイスで活動開始

2020年04月02日
マスク姿で歩く地元住民 © Nora Teylouni/MSF
マスク姿で歩く地元住民 © Nora Teylouni/MSF

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大を受け、国境なき医師団(MSF)は、スイスのジュネーブでも活動を開始した。福祉団体とスイス医療当局と連携している。

「流行によって、医療従事者への負荷が高まっていることを踏まえ、ここ数日間、医療団体とジュネーブの地元福祉団体との間で集中的に協議しました」と説明するのは、スイスでMSFの活動責任者を務めるパトリック・ヴィーラントだ。「私たちは、スイスの市民社会や公共サービスとのパートナーシップを通じて、MSFの専門性を生かした感染症のまん延防止策を共有することを提案しました。スイスの市民社会と公共事業とパートナーシップを結び、実現していこうと考えています。さらに、派遣した2人の専門医が、既にジュネーブ大学病院を拠点に、コレラ、エボラ、デング熱などの他の感染症流行対応時の経験を共有しています」と説明する。感染した患者の管理方法と、院内での医療チームの編成方法に焦点を当てて共有する。 

弱い立場にある1300世帯を支援

受け取る人との社会的距離を十分に取りながら、衛生用品などを配布するMSFスタッフ(左)<br>  © Nora Teylouni/MSF<br>
受け取る人との社会的距離を十分に取りながら、衛生用品などを配布するMSFスタッフ(左)
© Nora Teylouni/MSF

ジュネーブ市では、社会の隅に追いやられた人びとやホームレス、移民、保護者のいない未成年者を支援する福祉団体と市の行政サービスを対象に、ロジスティック・サポートを行う予定だ。こうした人びとの受け入れ体制と清潔な住宅環境を整備し、新型コロナウイルスの感染予防水準を満たす社会的距離が確保できるよう努める。またMSFは、シェルターなどの避難所で、勤務しているソーシャルワーカーとボランティアのためにロジスティック面の援助も計画している。現在予定されている、救援物資と食料品引換券配布の間も保護策を徹底。約1300世帯が対象となる。

MSFは、ジュネーブ大学病院の救急診療に移動診療チームを派遣。新型コロナウイルスに特化した対応の強化につなげる。ジュネーブ大学病院の地域連携策の一環として、新型コロナウイルスの陽性反応があるものの、入院基準は満たしていない人に対しては、自宅での経過診察を行う。複雑な症例を発見した場合は、MSFチームが病院に照会する。 

葬祭業に関わる人びとも感染予防対策が必要

© Nora Teylouni/MSF
© Nora Teylouni/MSF

新型コロナウイルスに関連して亡くなった方のご遺体の扱いについては、感染予防のため通常とは異なる手順を必要とする。親近者や友人に苦しみをもたらすが、葬祭業従事者、医療従事者、警察官は、複雑な対策を講じなくてはならない。そこでMSFは、ジュネーブ市と連携して現行の手順を精査。共同で一般と民間の葬儀会社向けに勧告を出していく。

オペレーション・センター・ジュネーブ会長のレべカ・パパドポウロウは「MSFは緊急人道援助団体として、世界各地で最も感染リスクが高い人びとへの医療援助を優先して担っていきます。現地の医療体制が脆弱な場合も視野に入れています。現在、スイスの医療体制が厳しい状況にあることを受け、MSFは40年以上にわたって事務局の一つを受け入れてくれたスイスと、支えてくれたスイスの人びとを助けたいと考えています」と話す。

MSFはまた、人びとの出入国制限と、人や物資の移動の制限によって、活動継続に支障を来たしかねないため、世界各地の医療活動を維持するためにも活動している。レべカ・パパドポウロウは、「感染症の流行への対応はMSFの中核の活動です。現在、MSFはその活動のすべてが影響を受け、新たな課題を突きつけられている一方で、連携、共感、創造性が求められています。封じ込め・隔離策を講じながら、社会的な絆、働き方、人道援助活動の継続、家族・友人・同僚を守る方法について再考しなければいけません。今後の活動方針は、団結あるのみです」としめくくった。 

新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応 最新情報はこちら。 

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