新型コロナウイルス:酸素が足りない……窒息死する例も ブラジル・アマゾン川流域で支援を強化

2021年02月01日掲載

アマゾン川流域の新型コロナウイルス患者 より高度な治療が必要になり、救急車で州都へ搬送する © Diego Baravelli アマゾン川流域の新型コロナウイルス患者 より高度な治療が必要になり、救急車で州都へ搬送する © Diego Baravelli 

新型コロナウイルスの感染者数が世界で3番目に多いブラジル。死者数は世界2番目に上る(2021年1月31日時点・世界保健機関)。特に、熱帯雨林が広がる北西部アマゾナス州で感染者数が多く、医療機関の受け入れ能力が限界に達している。国境なき医師団(MSF)は、スタッフを増員するなど、現地での支援活動を強化している。 

ひっ迫する都市の医療体制

アマゾナス州の州都マナウス市。ここには市内の新型コロナウイルス感染症患者のみならず、アマゾン川流域の各地から患者が運ばれてくる。医療機関はこれまでに猛スピードで新型コロナ用の病床を増やしてきたが、それを上回る勢いで新規の患者が増え続けている。

この深刻な状況に追い打ちをかけているのが、酸素不足だ。いま市内で供給できている酸素は、必要な量の3分の1にも届かない。このため、人工呼吸器が使えず、窒息状態に陥って亡くなった人もいると報じられている。 

MSFは、州都マナウスから船で数日かけてアマゾン川をさかのぼり、川の流域に暮らす人びとに医療援助を提供している。重症の患者はマナウス市内に搬送する必要があるが、いまは搬送先が足りていない。

船で活動現場に向かうMSFの医師ら © Diego Baravelli船で活動現場に向かうMSFの医師ら © Diego Baravelli

地方からの搬送が困難に

流域の町であるテフェは、MSFが活動する地の一つだ。ここでは、新型コロナウイルスの患者のうち酸素治療を必要とする人が急増している。 今年1月第1週では患者の3分の1が酸素治療を必要としていたが、第3週には3分の2まで増えた。入院する時点で、すでに重症に陥っている患者も多い。

「重症の患者や危篤状態の患者は、より設備の整った病院に搬送しなければ治療ができません。しかし州都のマナウスでこれ以上の患者を受け入れられなくなり、1月第3週にはテフェからマナウスまで航空搬送できた患者は一人もいませんでした。都市の病院で治療を受ければ生きられたかもしれない患者さんが、3人亡くなりました。搬送できなかったからです」とブラジルでMSFの活動責任者を務めるピエール・ファン・ヘデジェムは無念な思いを語る。

テフェ近辺には酸素ボンベの充填に必要な酸素発生装置がないため、マナウス市にボンベを送って酸素を充填する必要がある。MSFは2020年末にテフェの地域病院に50本の新しいボンベを提供したが、いまはマナウス市で充填できない状況が続く。「このペースで入院患者が続けば、テフェには数日分の酸素しか残らなくなってしまいます」とファン・ヘデジェムは懸念する。 

テフェの病院の新型コロナウイルス病棟 © Diego Baravelliテフェの病院の新型コロナウイルス病棟 © Diego Baravelli

検査体制の向上にも協力

MSFは、新型コロナウイルス検査の改善にも取り組んでいる。ブラジルで圧倒的多数を占める抗体検査の代わりに、新型コロナウイルスの感染状態をすぐに確認できる抗原検査を推進している。

抗体検査では、検査時点で新型コロナウイルスに感染しているかは分からず、過去に感染したことがあるかどうかを明らかにするにとどまる。抗原検査では、検査を受けた人が現時点で感染しているのかを明らかにできる。

MSFはまた、アマゾン川流域の検査室にある検査機器でPCR検査が行えるよう、必要な物品を提供した。「これで、いままでのようにマナウス市に検体を送る必要がなくなりました。検査結果は約1時間で確認できます」と、テフェでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるイレーネ・ウェルタス・マルティンは話す。

また、新型コロナウイルスに関する情報を住民に発信する健康教育にも取り組んでいる。自分と周囲の人を守る方法をよく知ってもらうことは、感染拡大を予防するための柱だ。十分な医療を受けるためには数日かけて川を下って行かなければならないこの地域では、予防への取り組みが大きな意味を持つ。

アマゾナス州の医療体制への支援を強化するため、MSFは1月下旬に新たなスタッフを投入した。ブラジルではアマゾナス州のほか、サンパウロなどでも新型コロナウイルス感染症に関する活動を行っている。 

新型コロナウイルス感染症の入院患者の状況について話し合うスタッフ  © Diego Baravelli新型コロナウイルス感染症の入院患者の状況について話し合うスタッフ  © Diego Baravelli

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