海上に放置されたロヒンギャ難民たち──暴力と飢餓に覆われた現場からの証言

2020年05月08日掲載

英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick

2020年4月。約500人の飢えた人びとを乗せたボートが、2カ月間にわたって海の上で放置されていた。彼らの多くはロヒンギャの難民だった。

彼らをボートに乗せたのは密入国ブローカーである。ブローカーは、難民たちをマレーシア沿岸で降ろそうとしたが失敗したため、バングラデシュ方面へ引き返した。その途中でボートと難民たちを遺棄したのである。難民たちは食料も水もなく漂流し続け、少なくとも50人が船上で死亡した。生き延びた人たちも、重度の栄養失調、脱水症状、精神的疲労などの状況にあった。
 
バングラデシュ沿岸警備隊は、3日間にわたって救出活動を展開した。保護された人たちは、コックスバザール近くの一時滞在センターで、14日間の検疫を受けている。国境なき医師団(MSF)は現地に医療チームを派遣して、彼らの健康状態を調べた上で、緊急医療と心のケアにあたっている。報告によれば、さらに3隻のボートがまだ海上にあるという。
 
現地で対応にあたっているMSFスタッフと、暴力と飢餓からの生存を果たしたロヒンギャ難民の少女。彼ら2人に話を聞いた。

ハナディ・カタージの証言(MSFの看護師・医療チームリーダー)

保護された人たちは、4台のトラックで一時滞在センターに到着しました。そのほとんどが12歳から20歳。独身の若者です。自力では立つことも歩くこともできませんでした。トラックから降りてきた姿は痩せこけており、かろうじて生きている感じでした。

みな重度の栄養失調と脱水症状で、沈みきった表情をしていました。恐怖に満ちた目つきをしている人もいました。あの表情は、私の脳裏から離れることはないでしょう。

とにかく、私たちは重傷者から順に対応していきました。まずは、栄養失調による重い合併症を抱えていた5人を病院まで搬送しました。また、衰弱して倒れ込んだ人びとがいましたので容体の安定化に努め、他の人びとには水と食料を提供しました。そのほかにも、細かな問診を行い、医療上のニーズを調べ、心の健康状態を尋ね、カウンセリングを実施しました。

女性や子どもよりも、男性の方が深刻な栄養失調や脱水症状に陥っていました。重傷者も多く、傷が治っていない男性たちもいました。おそらく栄養失調が原因でしょう。多くの人が船員に殴られたと話しています。

多くの人がストレスを感じ、トラウマを抱え、恐怖と不安を抱えていました。

かなり長い間、海上で漂流していたのですから、無理もありません。海上では約100人が死亡し、遺体が海に投げ捨てられたそうです。家族を失って悲しんでいる人もいれば、親を失った子どももいました。

ある少年はコートにくるまっていました。大切なものなのでしょう。しっかりと手入れがされていました。そして、大切なコートを身につけて新たな人生に向かおうとした彼の身に、最悪の出来事が襲いかかったわけです。

大勢の人びとが、家族の安否を確かめようと、気が気でない様子でMSFの病院にやってきました。入院している家族と再会したのを見たときは、とても嬉しかったです。

英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick

ロヒンギャ難民のアミナさん(14歳)の証言

私たちは海で漂流していました。

男性たちはボートの底に押し込まれていました。船底はとても暑かったのですが、脱出しようとすると殴られて海に投げ込まれました。

女性たちは船上に座らされていました。ベールを被ろうとして殴られた人もいました。ずっと膝を抱えて座らされていたため、脚のむくみとしびれがひどくなり、それが原因で死んでしまった人も多かったです。

ひどく暑かったのに、食べ物も水もありませんでした。毎日、口にできるのは、手のひら一杯のひよこ豆とカップ1杯の水だけです。毎日、3〜4人が亡くなりました。なかには、海水を飲んで命を落とす人びともいました。

大勢の人びとが亡くなりました。酸欠で亡くなった男性がかなりの割合を占めています。男性たちは暴力をふるわれ、極度の栄養失調に陥り、骨と皮だけの状態になりました。

ボートの乗組員にこう言われました。「お前らはどこへ行っても難民どまりだ。ミャンマーでも難民、バングラデシュでも難民、マレーシアでも難民、船の上でも難民。どこへ行こうと待っているのは死だ」 

※仮名を使用しています。

英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick英国の画家兼映像作家リチャード・スワブリック (@rikkileaks)が描いたロヒンギャ難民のイラスト © Richard Swabrick

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